最終更新: 2023年5月4日

ニューヨークはロングアイランド出身のバロック・ポップバンド、The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)。

4枚目のアルバムとなる『Everything Harmony』をリリースする。

今作で耳をひくのはアコースティックギターの音色とヴォーカル、コーラスの調和だ。

繊細に鳴らされる、あるいは発せられるすべて音の要素は有機的に絡み合い心を打つ。

“Oh, wouldn’t it be nice?'(ああ、素敵じゃないか)

そんなものはないとわかっていても、この美しさだけは普遍で不変だと信じてみたくなる。

今回はメンバーのブライアン・ダダリオに新作『Everything Harmony』について、メールインタビューを行った。

The Lemon Twigsとは

THE LEMON TWIGS_CORNER OF MY EYE_photo
The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)は、ニューヨーク州ロングアイランド出身のロックバンドで、ブライアンとマイケルのダダリオ兄弟を中心に結成された。

ブライアンとマイケルは、音楽一家に育ち、父親はミュージシャン、母親は音楽教師ということもあり、彼らの音楽は70年代のロックやグラムロック、ミュージカル、そしてクラシックポップに影響を受けている。

ダダリオ兄弟は若い頃から音楽を演奏し、2014年にThe Lemon Twigsを結成した。

兄のブライアンはリードボーカルとギターを担当し、弟のマイケルはドラム、バッキングボーカル、様々な楽器を演奏している。

The Lemon Twigsは、2016年に名門4ADからFoxygenのジョナサン・ラドーがプロデュースしたデビューアルバム『Do Hollywood』のリリースで破格の注目を集める。

アルバムはキャッチーなメロディ、複雑なアレンジ、そして演劇的な雰囲気が称賛された。また、ダダリオ兄弟の奇抜なファッションにも注目が集まった。

続いて、2018年には、チンパンジーが人間の学校に通うロックオペラ『Go to School』をリリース。

アルバムには、トッド・ラングレンやBig Starのジョディ・スティーブンスなどがゲスト出演している。

2020年、The Lemon Twigsは、クラシックロックに影響を受けたサードアルバム『Songs for the General Public』をリリースした。

The Lemon Twigsの概要

アーティスト名 The Lemon Twigs (ザ・レモン・ツイッグス)
結成 2014年
出身 ニューヨーク州ロングアイランド
レーベル 4AD, Winspear,Captured Tracks
バンドメンバー ブライアン・ダダリオ, マイケル・ダダリオ

The Lemon Twigs – Any Time Of Day (Official Video)

The Lemon Twigsについて

The Lemon Twigs_photo
アーティスト:ブライアン・ダダリオ インタビュアー:滝田 優樹 翻訳:H.M

バンド名の由来

-まずはあなたたちについて、お聞かせください。“The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)”という名前の由来は何ですか?
ブライアン:小さい頃の僕たちは自分たちの曲を書いて録音しながら、コピーバンドで演奏していたんだ。ジョナサン・ラドと仕事を始めたことで、僕たちの曲がより多くのリスナーに届く可能性があるとわかったんだ。でも僕たちはそれまでずっと真剣に音楽を作ってきたし、僕らが自身の音を見つけるまでに色々な音楽を経験したんだよ。The Lemon Twigsは、僕とマイケルが高校の友人のダニー・アヤラ、メーガン・ゼアンコウスキと一緒にオリジナル曲を演奏したときに始まったんだ。僕とマイケルは少しの間一緒に曲を作っていて、最初はふざけてグループを“The Lemon Twigs”と呼んでいたんだ。その後僕たちはFoxygenの(ジョナサン)ラドと友達になって、彼らがニュー・ヨークで演奏したとき、僕たちにオープニングアクトを務めてくれないかと尋ねてくれたんだ。そして僕たちは“The D’Addario Brothers”ではなく、“The Lemon Twigs”という名前で活動することにしたんだよ。

音楽活動を始めたきっかけ

-あなたたちは高校生の時に結成されたということですが、本格的に音楽活動をはじめたきっかけを教えてください。また当時はどんな音楽をやっていたんですか?
小さい頃の僕たちは自分たちの曲を書いて録音しながら、コピーバンドで演奏していたんだ。ジョナサン・ラドと仕事を始めたことで、僕たちの曲がより多くのリスナーに届く可能性があるとわかったんだ。でも僕たちはそれまでずっと真剣に音楽を作ってきたし、僕ら自身の音を見つけるまでに色々な音楽を経験したんだよ。

影響を受けたアルバム

-あなたたちの音楽要素として、バロックポップ。主にThe BeatlesやThe Beach Boys、トッド・ラングレンなどを引き合いに語られることも多いと思います。The Lemon Twigsの音楽に影響を与えたアルバム3枚について教えてください。また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかについても教えてください。
(レナード・コーエンの)『Songs Of Leonard Cohen』はより良い歌詞を書く参考になったね。(The Beach Boysの)『Pet Sounds』はベースのアレンジを作るのに役立ったし、(サイモン&ガーファンクルの)『Bridge Over Troubled Water』は録音を良いものにする助けになったんだ。

ファッションとヴィジュアル

-特にブライアンとマイケルはアルバムのジャケットやライブパフォーマンスでもファッションと髪形、メイクなどヴィジュアルの部分もとてもクールだと思うんです。何かロールモデルはあるんですか?こちらも影響を受けたものがあれば教えてください。
グラム・パーソンズはずっとかっこよくて、僕たちのヒーローなんだ。(Flamin’ Grooviesの)シリル・ジョーダンやボブ・ディランも今だにかっこいいと思うよ。

子役としての経験

-また、あなたたちは子役としてミュージカルやドラマ、ハリウッド映画にも出演していましたよね。そういった経験も音楽面、ライヴ・パフォーマンスにも影響しているのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。
それもあって僕たちは緊張感や観客の前でのパフォーマンスに慣れているんだ!

出身地ロングアイランドについて

-出身のロングアイランドはどんなところですか?ワイナリーやフィッシングスポットがあったり、アウトドアも楽しめそうなところだなと思ったのですが。
そういう場所もあるよ。でも僕たちは地元をあまり面白いと思えなかったんだ。住んでいる人たちはみんなIKEAやショッピングモールに行くっていう。ボウリングをしたり、マクドナルドでハンバーガーを食べたりするんだ。

来日公演について

-日本には 2017 年にフジロックに出演して、2018年にはツアーを。そして 2019年には サマー・ソニックに出演していますが、日本でのパフォーマンスはいかがでしたか?日本にはあなたたちのファンも多いだ。何か日本に対する印象などあれば教えてください。
僕は日本が大好きだ。日本のオーディエンスはライブを大切にしていて、公演の後にはいつも本当に素晴らしいファンアートが届くんだよ!

The Lemon Twigs – Corner Of My Eye (Official Video)

Everything Harmony

The Lemon Twigs『Everything Harmony』

アルバムタイトルの由来

-ここからは最新アルバムについて教えてください。『Everything Harmony』というタイトルは楽曲を表した直接的なものになっていますが、なぜこのタイトルにしたのですか?コンセプトなどあれば教えてください。
“Everything Harmony”という言葉が曲と合っているように思えたんだ。自分自身や周囲の世界と戦っている人々、そんな対立がこのアルバムの曲の中には多くあると思う。でも完璧な一体感と喜びの瞬間もあるんだ。おそらく一方がなければもう一方もないんじゃないかな!

セルフプロデュースについて

-『Do Hollywood』と『Songs for the General Public』はFoxygenのジョナサン・ラドがプロデュースしていましたが、今作はあなたたち自身がすべてレコーディングとプロデュース、エンジニアリングを行ったそうですね。すべて自分たちで行った感想はどうですか?またすべてセルフで行うに至った経緯を教えてください。
とても自然なこととしてそうなったんだ。『Songs for the General Public』の大部分も僕たち自身で取り組んでいて、ラドは作業に片を付けるのを手伝ってくれたんだ。自分たちだけで作業を行うのは、お互いにアイデアの説明をする必要がないから開放的だったんだ。僕たちは長い時間を共に過ごしてきたから、言わなくても伝わることが多いんだよ。

進化を感じさせる曲

-前作はサイケポップやパワーポップの要素が打ち出された作品で、今作はそこにインディーポップの要素も表出されたエキサイティングな作品だと感じました。特に「In My Head」や「Ghost Run Free」のギターが爽やかな音色で個人的なフェイバリットソングです。The Lemon Twigsとして進化を感じさせる曲を1曲挙げるとしたらどれですか? 
「Born To Be Lonely」だね。主にストリングスとボーカルの処理がそうなんだ。僕たちの最も野心的なプロダクションの1つだと思う。

The Lemon Twigs – In My Head (Official Video)

Weyes Bloodとのコラボ

-昨年はWeyes Bloodのアルバムに参加されたり、トッド・ラングレン、ティム・ハイデッカーらの作品にも参加されてましたね。やはりそこでの経験も今作に影響しているのでしょうか?
Weyes BloodのアルバムをEast Westで制作したことで、アコースティック・エコーチェンバー(※)を備えたスタジオで制作したいと思うようになったんだ。サンフランシスコのHyde Street Studiosはとても印象的な音で、それがあそこを選んだ理由なんだよ。

アコースティック・フォークのメロディー

-インタビュー用にいただいた資料には“サイモン&ガーファンクル、アーサー・ラッセル、Moondogにインスパイアを受けたアコースティック・フォークのメロディー”とありました。確かにメロディーがとても美しくて、まさにお二人のボーカルやコーラスとのハーモニーが印象的でした。今回特にアコースティック・フォークのメロディーを美しく聴かせるのに意識していた点はなんですか?
僕たちはボーカルの混ぜ方を非常に意識していたんだ。自然で感情的な雰囲気を維持しながら、僕らの求める高い基準を上回ることが重要だったんだ!

聴いて欲しい人

-『Everything Harmony』をどのような人に聴いて欲しいと思いますか?
もちろん、全ての人に!

日本のリスナーへのメッセージ

-私たちを含めてThe Lemon Twigsの来日を楽しみにしている日本のリスナーにメッセージを頂けますか?
僕たちは日本で演奏するのが大好きだから、日本に戻るのがとても楽しみなんだ!

※アコースティック・エコーチェンバーは、音楽のための残響効果を作るために使用される空洞の箱のこと。エコーチェンバーの一端には、スピーカーがあり、誰かが歌ったり楽器を演奏したりする録音を再生する。

The Lemon Twigsアルバムリリース

The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)はこれまでに4枚のアルバム(『Do Hollywood』、『Go to School』、『Songs for the General Public』、『Everything Harmony』)をリリースしている。

4thアルバム『Everything Harmony』

The Lemon Twigs『Everything Harmony』
発売日: 2023年5月5日
フォーマット:Mp3
収録曲:
1.When Winter Comes Around
2.In My Head
3.Corner Of My Eye
4.Any Time Of Day
5.What You Were Doing
6.I Don’t Belong To Me
7.Every Day Is The Worst Day Of My Life
8.What Happens To A Heart
9.Still It’s Not Enough
10.Born To Be Lonely
11.Ghost Run Free
12.Everything Harmony
13.New To Me
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3rdアルバム『Songs for the General Public』

Songs for the General Public
発売日: 2020年8月21日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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2ndアルバム『Go to School』

Go to School
発売日: 2018年8月24日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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1stアルバム『Do Hollywood』

Do Hollywood
発売日: 2016年10月14日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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The Lemon Twigsバンドプロフィール

The Lemon Twigs_photo2

“天才的な才能を持つデュオは、2016年にデビューLP『Do Hollywood』でThe Lemon Twigsとしてデビュー。ロックのあらゆる時代から掘り起こしたメロディで、Elton John、Questlove (The Roots)、Jack Antonoffといったファンを瞬く間に獲得した。2018年には野心的な大作『Go To School』をリリース。大胆なコンセプトを中心に壮大な音の壁を構築し、バンドとしての評価を確固たるものにした。続く2020年の『Songs For The General Public』は、NPR、Vice、Teen Vogue、Stereogum等から高い評価を獲得した。最近では、2022年の『And in the Darkness, Hearts Aglow』を含むWeyes Bloodのアルバム2枚に加え、クラシック・ロックのヒーロー、Todd Rundgrenの最新作『Space Force』や、Tim Heideckerのプロジェクト『Fear of Death』にも参加した。”

引用元:The Lemon Twigsプロフィール(Big Nothing)

The Lemon Twigs代表曲(Youtube)

  • The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス) – As Long As We’re Together
  • The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス) – I Wanna Prove to You
  • The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス) – The One (Official Video)

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    レビュー記事

  • The Lemon Twigsのダダリオ兄弟が天才である理由とは?
  • 10代でデビューアルバムを作り上げた、ザ・レモン・ツイッグスとは何者か?
  • リリース記事

  • 『Songs For The General Public』リリース
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  • その他

  • 4AD社長が語る、40年続いたレーベル運営の極意とは?
  • バロックポップ

ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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Twitter:@takita_funky