最終更新: 2024年3月17日

日本にルーツを持つ、Dirty Hit所属のLAのシンガーソングライターWallice(ワリス)。

そんな彼女にインタビューをするにあたり質問を考えているなか、自分自身、日本に住んでいながら日本についてや自分のルーツに無関心であることに気づかされた。

Wallice は昨年末に自身のルーツである日本への想いを歌ったシングル「Japan」をリリースした。日本の文化が自身のアイデンティティに大きな影響を与えたことに起因して作られた楽曲だ。

対外的なものを通して内面化することにはメリットとデメリットがあるが、さまざまな意見やものの見え方を知ることは悪くないだろう。

恥ずかしながら、このインタビューそしてWalliceの楽曲をきっかけに筆者は自身のルーツに興味をもった。

最近ではThe 1975のツアーにも帯同し、Reading Festivalへの出演も控えるWallice。日系アーティストとして、欧米のみならず世界に羽ばたきつつある。

そんなWalliceに新作EP『Mr Big Shot』についてや、彼女から見た日本について話を聞いた。

Wallice インタビュー

Wallice PRESS SHOT(Credit Le3ay)
クレジット:Le3a
アーティスト:Wallice(ワリス) インタビュアー:滝田 優樹 翻訳:H.M

日本とのルーツについて

-昨年「Japan」をリリースして、日本語バージョンの「日本」も届けてくれましたね。日本のメディアなので、まずはそこからお聞きしたいのですが、あなたは日本にルーツを持つシンガーで、あなたのお父さんは東京で生まれ育ち、27歳まで東京で過ごし、母は90年代に数年間東京に住んでいたそうですね。あなたの両親の生い立ちとその上であなたと日本の関係について知りたいです。
Wallice:私の父親は東京で生まれ育ち、1990年にアメリカに移住したんだ。母親は1988年から1991年まで主に大阪に住んでいて、モデルとして生活していてね。私はロサンゼルスで生まれたんだけど、主に白人の母親に育てられたんだ。でも、母親が日本に住んでいたから、日本の文化について学び、感謝するように育てられてね。10代になるまであまり日本には行かなかったけど、日本が大好きなんだよね。いつも日本に行く口実を探してるし、とても気に入ってるよ。

「Japan」について

-この「Japan」を制作するうえで日本について、そしてあなたのルーツについて、探るところからはじまったと思います。なぜ、あなたのルーツについて知ろうと思ったのか、そのきっかけとルーツを探って気付いたことやルーツを知った後と前の日本に対する思いの変化を教えてください。また、「Japan」をリリースしたことでリスナーのリアクションはいかがでしたか?
「Japan」の反響はすごかったよ。これはユーモアが入ってない初めての曲だと言ってもいいくらいで、私の語りが多くの人に共感してもらえたんだ。ミックスとして生まれると、どちらの文化にもなじめない気がするという独特な体験があるよね。

私は幼少期、父とあまり近くにいなくて、週末や夏に2週間ほど会う程度だったんだ。東京に住んでる父の家族には会えなかった。父と継母、そして異母兄弟は、彼らの家で日本語を話してて、私は「イギリス人だよ。」って感じだった。私が日本の文化に親しんだ主な方法は、食べ物を通してだと思う。母も継母も、私に日本のお弁当を作ってくれたり、日本料理のレシピを教えてくれたりしたんだ。今でも、私が作るほとんどは日本食で、食料品は日本市場で買ってるよ。

Wallice(ワリス) – Japan

ロサンゼルスでの暮らしと音楽活動について

ロサンゼルス(pexels-rdne-stock-project-8783142)
クレジット:Pexels

-インスタグラムではビーチやドライブ、犬との楽しむ様子をアップしていますね。あなたが生まれ育った、そして今も活動の拠点とするロサンゼルスでの暮らしについて、教えてください。日本から見たロサンゼルスはエンターテインメントに富んだ街です。幼少時代はどのような音楽、カルチャーに触れていたのでしょうか? また、ニューヨークのニュー・スクールに通い、ジャズ・パフォーマンスと声楽を専攻していたようですが、音楽活動を始めるきっかけを教えてください。
私はLAに住むのが大好きなんだ。そこで育ったことにとても感謝してるし、ラッキーだと思ってるよ。LAでは、公共交通機関がほとんどないから、みんな車を持ってるんだ。私は15歳のときに運転を覚えた。私の母はとても大きな家族の出身で、8人の兄弟姉妹がいるんだ。幼い頃から、母の家族は私の人生の中で大きな部分を占めてたんだ。それ以来、叔父や叔母の多くは別の州に引っ越してしまったから、カリフォルニアは以前ほど故郷のように感じられなくなって。

ロサンゼルスで育つと面白いよね。小学校では、友達の親が有名人だったり、近所の人が有名人だったりすることを知ったよ。コーヒーショップやレストランに行けば、セレブリティがいることもあるんだ。それは、ロサンゼルスならではのことだと思う。クリエイターの拠点だからね。私の育った環境と学校教育が、私の音楽の旅を支え、キャリアとして追求することを可能にしてくれたと思ってる。小学校の7歳のときにトランペットとチェロを始めて、その後、パフォーミングアーツ系の高校に進学して、ギターと歌唱を学んだんだ。その高校がきっかけで音楽の道に進み、ニューヨークのThe New School of Jazzのボーカル科に行くことになってね。1年間しか住んでなかったから、ニューヨークは楽しかったけど、プログラムが自分に合ってるとは思えなかった。カリフォルニアがとても恋しくなっちゃった。

今はボーイフレンドと一緒に住んでて、去年は犬を飼った(これは本当に良かった)。犬と一緒に山にハイキングに行ったり、ビーチに行ったりするのが好きなんだ。今年の夏は愛犬と一緒にビーチに行きたいな。

Walliceの音楽のルーツ

-別のインタビューではRadiohead、Weezer、Dr.Dogらオルタナティブロックを聴いて育ったそうですね。Walliceの音楽に影響を与えたアルバム3枚について教えてください。また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードについても教えてください。
Radioheadの『In Rainbows』は、私が最も好きなアルバムのひとつなんだけど、彼らのレコードはどれも大好き。Weezerの『Weezer(blueアルバム)』も大好きで、初めて買ったiPodに入っててね。Weezerのソングライティングは私の歌詞に影響を与えてると思う。ラナ・デル・レイの『Born To Die』も大好きなんだ。ラジオで初めて「Video Games」を聴いたとき、歌を始めたくなっちゃった。

Dr.Dogを知ったのは13歳のときで、友達が「Heart it Races」を聞かせてくれたんだ。『Fate』と『Shame, Shame』は彼らのアルバムの中で一番好きなんだよ。

Lana Del Rey – Video Games

Dr.Dog – Heart It Races (Cover Version)

Dirty Hitとの契約、THE 1975のツアーについて

-2021年には現在のDirty Hitと契約し、最近ではTHE 1975のツアーのサポートもつとめていましたね。私もTHE 1975の日本公演を見ました! まずはDirty Hitと契約に至った経緯を教えてください。そしてTHE 1975のツアーをサポートした感想を教えてください。なかには行ったことのない国でのパフォーマンスもあったと思います。特に印象的なパフォーマンスがあればそちらもお願いします。
Dirty Hitがとても好きなんだ。契約する前はよく知らなかったんだけど、ずっとDirty Hitと契約してるアーティストはみんな大好きだったんだ。以前はレコード契約の本当の意味を知らなかったし、メジャーレーベルと契約したいとずっと思ってたんだけど、いざとなったらDirty Hitがいいと思ってね。私の最初のEPが出るときに、マネージャーを通して彼らに出会ったんだ。

4月にバンコク、マニラ、オーストラリア、ニュージーランドでオープニングをやらせてくれたDirty HitとThe 1975にとても感謝してるよ。最初に言っておきたいのは、バンドとツアー・クルー全員がとてもいい人たちで、全てを通してとても楽しい経験だったってことなんだ。今までで一番大きなショーだったし、どの国にも行ったことがなかったからね。一番好きなのは、オーストラリアのブリスベンとマニラで、観客のエネルギーがすごかった!日本公演も楽しみにしてたんだけど、結局、オープニングがなくて行けなかったんだ。

Mr Big Shot

Wallice EP Cover final small

タイトルとコンセプトについて

-ここからは新作『Mr Big Shot』について、お聞きします。“Mr Big Shot” というタイトルについて、なぜこのタイトルにしたのでしょうか? また、『Off the Rails』では日ごと違うキャラクターになりきるとコンセプトで、『90s American Superstar』では自分自身を架空のセレブのアイドルとして思い描きながら制作されていましたが、今作のコンセプトなどあればそちらも教えてください。
『Mr Big Shot』は、『90s American Superstar』や『Off the Rails』のようなキャラクター重視の作品じゃないから、私の最初の2枚のEPとは少し違うんだ。このEPは自分自身にとても忠実で、歌詞の中にユーモアはあんまりないと思う。ラブソングもいくつかあるし、成長や人生の変化について歌った曲もあるよ。タイトルに“Mr Big Shot”を選んだのは、EP収録曲「Quarterlife」の中の一節だから。“私は片耳では大物で、躊躇なく聞き流せるんだ”っていう。このタイトルは、歌詞に関係なく、私のエピソードにユーモアをもたらしてると思う。私は自分のことをあんまり深刻に考えないようにしてるんだけど、“Mr Big Shot”はその完璧な例だと思うよ。

-また、あなたの楽曲制作のスタイルとしてベッドルームポップ、宅録での制作も特徴の一つだと思います。『Mr Big Shot』の楽曲はどのように制作されたのでしょうか? これまでの楽曲制作と違いがあればそちらも教えてください。
『Mr Big Shot』の各曲は、マリネッリ(デヴィッド・マリネッリ)だけで作曲・録音した最初の2枚のEPとは対照的に、新しい誰かと一緒に始めたものなんだ。新しい人たちと一緒に書くのは新しいプロセスだったし、これらのコラボレーターから新しい視点や芸術的な選択を得ることができたのは素晴らしいことだった。「Prepaid Wireless」は、高校時代に大きな影響を受けたバンドThe Drumsのジョニー・ピアースと書いたんだ。「Why Do You Love Me」は、The Mariasのジョシュ・コンウェイと一緒に書いたんだ。

楽曲制作とサウンド面について

-制作上でブレイクスルーになった曲はありますか? 個人的には「Why do you love me」はスロウコアを土台にミニマルなアレンジが光る楽曲だと感じて、新機軸だと思いました。
本当にありがとう!あの曲は本当に楽しみなんだ。どの曲も私の音楽の音の世界を押し出していると思うよ。「Best Friend」は本当に大好きで、私のブレイクスルーになる曲だと思うんだ。ポップとロックがうまく融合しているからね。私はいつもポップよりもオルタナティブ・ロックやグランジに傾倒したいと思っているんだけど、時にはそれを受け入れるのも楽しいと思うよ。

-またこれまでの作品は90年代のオルタナティブロック、グランジのギターサウンドが前面に押し出されたサウンドが印象的だったのに対して、今作はシンセやストリングスなどのアプローチを際立たせた楽曲が印象的でした。特にギターのサウンド面で意識された点があれば教えてください。
このEPでは、ギターをすごく大きく鳴らしたくて。ギタリストに7弦ギターでメタルをイメージしたラインを弾いてもらって、パンチのある大きなサウンドに仕上げたんだ。また、「Loser at Best」ではチェロを弾いていて、できる限りチェロを取り入れるのが好きなんだよ。

Wallice – Loser At Best (Official Audio)

「Best Friend」について

-「Best Friend」について、“私の音楽の中で繰り返されるテーマは友情で、友情と恋愛関係の中の友情の両方に関連付けることができる。”と言っていましたね。これについて、詳しく教えてください。またMVでは、編まれた長い髪とねじれたロープ、体に巻き付いたトゲのついたバラの茎などが映し出されています。あなたにとっての友情を比喩したものなのでしょうか?
私は16歳のときから彼氏と一緒にいるから、それ以来、別れたり、心が痛んだりした経験がないんだ。友情の関係って、恋愛と同じようなテンションに簡単に変換できると思う。「Best Friend」は、私が人生を通して失ったいくつかの友情について、そして、彼らを恋しく思い、頻繁に思い出すけれど、それが過去の友情であることが最善であることを歌っているよ。

-ちなみにですが、レーベルメイトあるリナ・サワヤマがトゥナイトショーで「ミュージックビデオを作る予算があるなら、それで演技リールを作ったほうがいいかもしれない」みたいなことを言っていたことに刺激を受けたようですが、「Best Friend」のMVでもその影響はありますか?
彼女のあのインタビューが好きだったのは、自分もすべてのMVでそうしてきたんだと気づいたから。私はLAで演技をして育ち、それに情熱を持っているから、私のMVの多くには、演技やストーリテリングを取り入れているんだ。

Wallice – Best Friend (Official Video)

バンドメンバーについて

-アメリカとイギリスのあなたのヘッドライナー・ショーではキャラハン・ケバニーやジョン・ウェイン、コーリー・ゴードンらのバンドメンバーとの演奏だと思います。『Mr Big Shot』にも彼らは参加してますか? 参加していたら、それぞれのメンバーのベストプレイとその理由を教えてください。
キャラハン・ケバニーは私のギタリストでありボーイフレンドなんだ。彼は『Mr Big Shot』のほとんどの曲で演奏しているよ。「Quarterlife」と「disappears」は、私が彼と一緒に曲を作り始めたから、彼がギターパートを書いてくれたんだ。彼は、「Loser at Best」と「Best Friend」でも演奏してくれたよ。

Wallice – disappear (Animated Video)

聴いてほしい人やシチュエーションについて

-『Mr Big Shot』をどのような人、もしくはどのようなシチュエーションで聴いて欲しいですか?
『Mr BIG SHOT』は理想を言えばみんなに聴いてほしいな。ティーンからヤングアダルトになるとか、家や場所を引っ越すとか、人生の転換期にある人、ラブリーな人がこのEPを好きになってくれると思うよ。飛行機の中や一人で車の中でこのEPをかけて最初から最後まで順番に流すと良さそうじゃない?

日本のリスナーへのメッセージ

-最後に日本のリスナーにメッセージを頂けますか?
私の音楽を気に入ってくれたら嬉しいな!日本でライブをするのが夢の一つだよ。日本は私にとってとても特別な国だからね。そして、日系アーティストとして欧米のメディアでもっと良く表現できるようになりたいんだ!

【Advertisement】

Walliceアルバムリリース

Wallice(ワリス)はこれまでに3枚のEP(『Off the Rails』、『90s American Superstar』、『Mr Big Shot』)をリリースしている。

3rd EP『Mr Big Shot』

Wallice EP Cover final small
発売日: 2023年6月23日
収録曲:
1.Best Friend
2.Loser at Best
3.Quarterlife
4.Prepaid Wireless
5.Why Do You Love Me?
6.disappear
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
Amazonで見る

2nd EP『90s American Superstar』

Wallice 90s American Superstar
発売日: 2022年
フォーマット:Mp3
Amazonで見る

1st EP『Off the Rails』

Wallice Off the Rails
発売日: 2021年
フォーマット:Mp3
Amazonで見る

Walliceプロフィール

Wallice(Credit - Nicole Busch)
クレジット:Nicole Busch
LA在住、日本にルーツを持つシンガー・ソングライター。Wallice(ワリス)は6歳で初めて楽器を手にし、中学時代にはオリジナル楽曲の制作を開始。トム・ヨークやラナ・デル・レイの歌詞、ウィーザーやノー・ダウトのパンキッシュなアティテュードに影響を受け、高校ではバンド活動を行う。元俳優である母親が彼女の創作活動をサポートし、思春期を通じてモデルや俳優としても活躍。大学中退後、ニューヨークにてジャズボーカルを学び、2021年にはデビューEP『Off the Rails』をリリース。その後、Dirty Hitと契約し2022年にはEP『90s American Superstar』をリリース。NME誌が選ぶ有力新人リスト「NME 100」に選出されている。2023年6月に新EP『Mr Big Shot』をリリースする。

Wallice代表曲(Youtube)

  • Wallice(ワリス) – Little League
  • Wallice(ワリス) – Punching Bag

Wallice関連記事

Wallice(ワリス)の関連記事について、BELONGではこれまでにDirty Hit所属アーティストを多数取り上げている。

  • The 1975、新曲「Part Of The Band」から見える音楽ジャンルの変遷とは?
  • 【歌詞和訳】Wolf Aliceが「The Last Man On Earth」に込めた意味とは?
  • 【和訳】Pale Waves、ヘザーが「Lies」の歌詞に綴った恋愛のトラウマとは?
  • 【歌詞和訳】beabadoobee、「Last Day On Earth」に込めた狂気とは?
  • 【和訳】Oscar Lang「21st Century Hobby」で描かれたSNSの闇とは?
  • ライター:滝田優樹

    1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

    そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

    その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

    退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

    それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

    猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

    今まで執筆した記事はこちら
    他メディアで執筆した記事はこちら
    Twitter:@takita_funky

    【Advertisement】