最終更新: 2023年9月9日
アイスランドはレイキャビクで生まれ育ち、現在はLAで活動するシンガー・ソングライター、Laufey(レイヴェイ)。
中国人でヴァイオリニストの母とジャズが好きなアイスランド人の父を持つLaufeyは、その影響からクラシック音楽やジャズ、そしてボサノバをベッドルームポップ通過後の感覚でブレンドする。
Billie EilishやBTSのV、そしてWillow Smithたちからもフォローされ、注目されるLaufeyがリリースする新作アルバム『Bewitched』。
アルバムとしては今作が2枚目となるが、“私にとって次のステップだと”と語り、より自身の音楽的なルーツに向き合ったクラシカルな作品になっている。
今年の6月5日にはBLUE NOTE TOKYOで行われたアコースティック・ライヴのチケットは数分で完売。日本でも注目のシンガー・ソングライター、Laufeyにインタビューを行った。
目次
Laufey インタビュー
アーティスト:レイヴェイ・リン インタビュアー:滝田 優樹 翻訳:BELONG編集部Laufeyの音楽原体験
-今作、『Bewitched』を聞いてあなたの音楽的ルーツがより色濃く反映された作品だと感じました。なので、まずはあなたの生い立ちから詳しく知りたいです。あなたはアイスランドのレイキャビク出身で現在はLAで活動をしているそうですね。中国人でヴァイオリニストのお母さんとジャズが好きなアイスランド人のお父さんからの影響で幼い頃からピアノやチェロを演奏していたそうですね。音楽に対する原体験から教えてください。その当時はどのような音楽を聞いていて、何がきっかけで音楽をやろうと思ったのでしょうか。具体的なアーティストやエピソードがあれば教えてください。
レイヴェイ・リン:私が音楽と最初に出会ったのは、クラシックを聴いたり演奏したりすることでした。10代になってジャズに出会いましたが、その中でもエラ・フィッツジェラルドやチェット・ベイカーなどは今でも私の一番のお気に入りです。ポップスも好きでしたが、クラシックやジャズ のほうがより自分が心からやりたい音楽に近いと思いました。
バークリー音楽大学とボサノバ
-そのあと、15歳でソリストとしてアイスランド交響楽団と共演して、バークリー音楽大学に進学したそうですね。アイスランドを離れて、バークリーに進学しようと思ったきっかけは何だったのですか? またあなたの音楽にはボサノバの要素も必要不可欠なものだと思います。もともとはボサノバもブラジルの音楽やアメリカのジャズ、フランス印象派音楽との邂逅によって音楽でボサノバに影響を受けたのは自然の流れだったかと思いますが、そのボサノバに触れた、魅了されたきっかけもあれば知りたいです。ちなみにですが、あなたの音楽を聞いているといくつかのディズニー音楽も思いだされるのですが、そういった影響もあったりするのでしょうか?
私は部分的にアメリカので育ちましたが、大学進学のためにアメリカに戻るという夢がありました。アメリカの音楽産業はとても大きく、夢を叶えるチャンスが一番あると思っていました。
ボサノバにはある種のシンプルさがあり、それに惹かれたんです。ボサノバのグルーヴはとても新鮮で耳に心地よいです。非常に満足感の高いグルーヴだと思う。
アルバムタイトル曲「Bewitched」では、『ファンタジア』や『シンデレラ』などの古いディズニー映画からインスピレーションを得たんです。そのジャンルの映画のスコアは本当に私に刺激を与えました。彼らは音楽や楽器で魔法を見せてくれたんです。その映画の曲の多くは、今日の偉大なジャズミュージシャンたちが演奏するジャズスタンダードになりました。
ディズニー映画『ファンタジア』より「弟子の目覚め~魔法使いの弟子」
映画『シンデレラ』もう一つのオープニング映像
アイスランドとアメリカ
-あなたの生まれ育ったアイスランドは、やはり自然に恵まれた美しいロケーションの国だという印象です。実際に生まれ育ったレイキャビクはどんなところですか?
レイキャビクは小さな町で、みんなお互いのことを知っています。世界で最も安全な場所の一つで、音楽家として育つには最適な場所だと思うんです。やることがあまりなく、周りの美しい土地に常に刺激されます。アイスランドには魔法があるんです。それが私に自分の人生について書くことができるんだと教えてくれました。
-「Promise」の“To distance myself Took a flight, through aurora skies Honestly I didn’t think about”という歌詞を受けて聞きたいと思ったのですが、あなた自身、アイスランドからアメリカに移り住んだことで、さまざまな環境の変化を体験したと思います。そのことでご自身のアイデンティティやルーツに何か影響はありましたか? また私自身も同じ日本でありながらも成人を迎えてから地方都市から東京に移り住んだことでいくつかのギャップを感じたことがありました。
遠くへ引っ越してカルチャーショックを受けたのは確かです。私は家族ととても仲が良いので、いつもたくさんの人に会いたくなります。アジア人である私にとっては、アイスランドから離れたことで、自分という人間をより深く知ることができたと思うんです。アメリカはとても多様性に富んでいて、大人になって成長する過程で、アジアの伝統に触れる機会が増えました。
新作アルバム『Bewitched』
-あなたのアーティスト名である“Laufey”は本名だと思いますが本名をそのままで活動するには何か意味はありますか? 別のアーティスト名を考えようとは思ったりはしなかったのでしょうか?
別のアーティスト名にしようと考えたことももちろんあります。私の音楽は私の実生活から得た経験がベースになっているとても正直なものなので、本名を名乗ることが大切だと感じました。“Laufey”はアイスランド神話に由来するアイスランドの名前です。私はアイスランドのルーツに敬意を称して、本名をアーティスト名として使いたかったんです。
『Bewitched』の過程
-ここからは新作アルバム『Bewitched』について、お聞きします。まずはタイトル“Bewitched”から、前作『Everything I Know About Love』から引き続き、愛がテーマであることは変わらないと思いますが、今回はなぜこのように名付けたのでしょうか。今作のテーマについても教えてもらえますでしょうか。
前作は『Everything I Know About Love』というタイトルですが、それはちょっとした冗談で、それを書いた時に私は愛について何も知らなかったんです。そのアルバム全体がいかに自分が愛について何も知らなかったかということを歌っています。このアルバム『Bewitched』も愛についてのアルバムなんですけど、前作よりも私はずっと成長して成熟したと思います。人生や愛や喪失を経験しました。『Bewitched』は私にとって次のステップだと感じます。
-また「Misty」以外の楽曲は全てご自身の作曲ですね。アルバムの制作自体はどのような過程で進められたのでしょうか。アルバムというフォーマットに落とし込んでいく、過程で見えてきたサウンドの方向性、コンセプトはどういったものだったのでしょうか? もし前作との違いなどあればそちらも教えてください。個人的に前作『Everything I Know About Love』はサウンド的なバラエティに富んだ作品であったのに対して、今作はより自身の音楽的なルーツに向き合ったクラシカルな作品になっていると感じました。
このアルバムでは、自分のクラシックやジャズのルーツにもっと自信を持って寄り添うことができました。最初のアルバムでは、観客がクラシックやジャズっぽい曲にどう反応するかわからなかったので、ポップミュージックの要素が多めに入れてみたんです。でも、私のファンは実際にはクラシックやジャズの方が好きだということがわかったので、今回はそれに全力で寄り添って、私が好きな音楽を作ることができました。
曲はすべて去年の終わりから今年の始めにかけて書きました。私のプロデューサーであるスペンサー・スチュワートと一緒に自宅スタジオで録音したんです。すべての作業がとてもスムーズでした。私たちはお互いをとてもよく知っているので、一曲を仕上げるのに数日しかかかりませんでした。ロンドンのフィハーモニア管弦楽団と一緒にやった曲は、仕上げるのに少し時間がかかったんだけどね。このアルバム全体はもっと成熟して、もっと普遍的な内容になったと思うんです。
『Bewitched』制作のハイライト
-特に「Promise」はDan Wilsonとともに制作されていて、今回のアルバムのテーマを象徴する曲です。Dan Wilsonとともに制作されたということで、彼との共作で何か刺激を受けたことやこれまでの楽曲制作との違いがあれば教えてください。
ダンとセッションに入って、私が抱えていた状況について話しました。「Promise」はすぐに書けたし、良い曲だと思います。アルバムに収録されている数少ない共同制作の曲で、とても特別なものなんです。
-今作『Bewitched』における私自身のフェイバリットは「Lovesick」です。あなたがこれまで各地で行ってきたライヴでの経験が反映されたもしくは、ライヴの演奏の延長線上で生まれたような臨場感が感じられる楽曲だからです。『Bewitched』にてブレイクスルーもしくは最も変化や進化を感じさせる楽曲はどれですか?
「Lovesick」は確かに私にとって新しい方向性ですが、それでもとてもLaufeyらしいです。私にとってこの曲は他のどんな曲よりも少しロックっぽく感じます。
-ちなみにですが、今作でも双子の姉妹は演奏で参加されていますか?
はい!彼女は3曲にヴァイオリンで参加しました。
-『Bewitched』をどのような人、もしくはどのようなシチュエーションで聴いて欲しいですか?
彼らが逃避するために聴いてほしいと思います。私は誰もがこのアルバムの中に自分自身を見つけることができると思うんです。
日本でのライブ
-6月5日には日本のBLUE NOTE TOKYOでアコースティック・ライヴを行いましたね。インスタグラムには「felt like I was in a different decade playing I Wish You Love in a tokyo jazz club」というメッセージとともに投稿していました。こちらのメッセージについてやライヴの感想を教えてください。また東京で観光はできましたか?
あのような小さなジャズクラブで演奏するのは、他のすべてのショーとは違っていました。とても親密な雰囲気で、観客もとても注意深く聴いてくれました。誰も携帯電話を出さず、とても集中していました。まるで違う時代にいるような気がしました。
観光する時間はあまりありませんでしたが、できるだけ歩き回りました。何よりも、また日本に戻ってきてすべての観光スポットを回りたいんです!
日本のリスナーへのメッセージ
-最後に日本のリスナーにメッセージを頂けますか?
今年日本でとても素敵な時間を過ごしました。もっとたくさんの人のために演奏するために戻ってくるのが待ちきれません!
私は日本のリスナーの皆さんに感謝しています。私の音楽を聴いてくれて、応援してくれて、私を温かく迎えてくれてありがとうございます。私は日本が大好きです!
Laufeyアルバムリリース
2ndアルバム『Bewitched』
発売日: 2023年9月8日収録曲:
1. Dreamer
2. Second Best
3. Haunted
4. Must Be Love
5. While You Were Sleeping
6. Lovesick
7. California and Me feat. Philharmonia Orchestra
8. Nocturne (Interlude)
9. Promise(第二弾シングル)
10. From The Start(第一弾シングル)
11. Misty
12. Serendipity
13. Letter To My 13 Year Old Self
14. Bewitched
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
Amazonで見る
1stアルバム『Everything I Know About Love』
発売日: 2022年8月26日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
Amazonで見る
【Advertisement】
Laufeyプロフィール
Laufeyこと、レイヴェイ・リンは、アイスランドと中国の血筋を引くシンガーソングライターである。彼女は母親からクラシック音楽の指導を受け、父親からジャズを教えてもらった。アメリカのバークリー音楽大学で勉強し、自分で曲を作るようになりました。彼女はクラシックとジャズの成分をポップスに加えた斬新なサウンドを生み出し、豊かな歌声で聞く人を惹きつける。ライター:滝田優樹
1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。
そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。
その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。
退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。
それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。
猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
今まで執筆した記事はこちら
他メディアで執筆した記事はこちら
Twitter:@takita_funky