最終更新: 2024年5月21日
映画から音楽に、また音楽から映画に相互に影響を及ぼし合っている例は枚挙に暇がない。
アメリカのアーティスト、ジャネール・モネイのデビューアルバム『The ArchAndroid』は、1927年の映画『Metropolis』から着想を得て、比類なき傑作を生み出した。
映画からインスピレーションを受けたモネイは、アンドロイドの登場人物を少数派の比喩として用い、抑圧から解放される物語を描いている。
余談であるが、映画『Metropolis』は手塚治虫の漫画『メトロポリス』や後ほどコメントで紹介するyahyelやThe Novembersも影響を受けたと語る映画『ブレードランナー』に影響を与えている作品である。
このように映画は音楽家たちにとって、豊かな創作の源泉となっており、世界観や情景描写、シーン、台詞などから多くを学び、それらを自身の音楽表現に落とし込もうとする姿勢が見受けられる。
今回は映画の持つ表現力やストーリー性、ビジュアル面での魅力などに着目し、それらを自身のルーツとしたアーティストを紹介。
彼らのコメントから、映画と音楽の関係や音楽だけではないルーツを探求していく。
目次
映画から影響を受けたアーティスト
yahyelのコメント
バンド名の由来でもあるyahyel(宇宙人)のイメージとヒッピー・ニューエイジ的なトリッピーさを意識しています。また、デジタル、あるいはサイバー感は、サイバー・パンク的な世界観や、映画『The Matrix(マトリックス)』で視覚化されたボードリヤールがいうところのシミュラークル感、ジョージ・オーウェルやオルダス・ハクスリーなどのディストピア小説のアイロニー性などに影響を受けています。もしかしたらYMOからの影響も大きいかもしれません。
👉️yahyel(ヤイエル)が人種や性別をシャットアウトする理由
The Matrixについて
The Matrix – Official Theatrical Trailer
THE NOVEMBERSの小林の コメント
『Down by Law(ダウン・バイ・ロー)』に関しては、好きなシーンがあって牢屋の中で”I scream ,you scream ,we all scream for ice cream!”ってセリフがあって檻の中でハチャメチャに歌うんですけど、それが僕にとって美しいと思えるシーンの一つで。このシーンは映画を見てもらえたら嬉しいですね。
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Down by Lawについて
DOWN BY LAW (1986) | Official UK Trailer – in cinemas 12th September
禁断の多数決のコメント
何を意味しているかはCDを買って頂くとライナーにミニストーリーが付いていますので、少しばかし謎が解けると思います。映画『The Sheltering Sky(ザ・シェルタリング・スカイ)』が好きで(砂漠のイメージ)、そして、月刊ムーさんに取り上げて貰えたら嬉しいです。
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The Sheltering Skyについて
The Sheltering Sky [1990] Official Trailer
pollyのコメント
『Sweet November(スウィート・ノベンバー)』を観た方なら説明不要だとは思いますが、死に直面し、それまでにどう過ごすか誰と過ごすか、その期間を共に過ごした相手が自分の死後、幸せに過ごしていけるように。など生きている間にできる事をやっていくというような話なんですね。それは僕自身のテーマでもあって、観た後に腑に落ちたんです。自分が残していたい言葉や音、意志。それらを明確にする事ができました。
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Sweet Novemberについて
Sweet November (1968) – Original Theatrical Trailer
アーティストが影響を受けた映画のルーツまとめ
アーティストたちの言葉から、映画が音楽創作に多大な影響を与えていることが分かる。映像の持つ世界観やムード、シーンの一コマ、台詞の一言など、様々な要素から刺激を受け、新しい音楽が生み出されている。
時に人生の本質的なものまでを映画から学び取り、音楽表現に落とし込もうとする試みも。
今後もアーティストたちが映画から影響を受け、新しい音楽を生み出していくことだろう。
ライター:Tomohiro Yabe(yabori)
BELONG Media/A-indieの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻
これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。
過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。
それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行。
現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。
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Twitter:@boriboriyabori