最終更新: 2025年5月7日
ブルックリンを拠点とするアメリカを代表するインディー・ロックバンドDirty Projectorsが2009年に発表した5thアルバム『Bitte Orca』。
10年以上の時を経ても未だ支持を集める文句なしの名盤だ。
そんな名盤『Bitte Orca』にかつて元メンバーとして参加していたのが、今回インタビューを行ったソングライターでありマルチインストゥルメンタリストのDeradoorian(デラドゥーリアン)である。
Dirty Projectorsへ在籍する前からソロでの活動を行っていたが、本格的なソロ活動はバンドを脱退後の2015年以降。
それからいくつかの作品のリリースや来日ツアー、そしてKate NVとともにDecisive Pinkを結成するなどを経て、今回新アルバム『Ready For Heaven』をリリースする。
このタイミングで彼女にインタビューを行ったのは、『Ready For Heaven』がDeradoorianのキャリアにおける総括であるとともに新たな到達点であったからに他ならない。
ダブが主軸にあるポストパンクの楽曲が並んでいて、現代の感覚で70年ないしは80年代にトーキングヘッズやジョイデヴィジョンたちが鳴らしていた音楽を鳴らすとこういった音楽になるのだなと感銘を受けた。
そのため今回はDeradoorianことAngel Deradoorianに『Ready For Heaven』がどのような作品であるのか語ってもらった。
また、BELONG Mediaにとって、Deradoorianへのインタビューは彼女のデビューアルバム『The Expanding Flower Planet』ぶり、約10年ぶりのインタビューとなった。
前回のインタビューを振り返り、編集長のTomohiro Yabeも一部質問している。
是非、10年前のデビューアルバム『The Expanding Flower Planet』のインタビューも併せて読んで欲しい。
Deradoorian インタビュー

音楽との出会いについて
-滝田優樹(Yuuki Takita):5歳の時に学校でヴァイオリンとピアノを習ったのが音楽との最初の出会いだと伺いました。学校でこれらの楽器を習い始めたきっかけや、当時どのような音楽を演奏していたのか教えていただけますか?
エンジェル・デラドゥーリアン: 学校にヴァイオリニストの先生がいたから、私を含めたほとんどの子どもたちがヴァイオリンから始めたんだと思う。音楽を学び始めるには良い方法だったけど、私にはまだ幼すぎてよくわからなかった。両親にどの楽器を習いたいか聞かれて、ピアノを選んだ。そこから音楽の基礎を学んで、練習にもっと打ち込むようになったのよね。
-滝田優樹(Yuuki Takita):16歳で学校を辞め、ブルックリンに移り住み、音楽の道に進むことを決意されたと聞きました。その決断のきっかけや、当時の心境についてお聞かせください。
エンジェル: 高校は15歳で卒業したんだけど、ニューヨークに移ったのは20歳になってから。16歳から19歳の間は、いくつかのバンドでアメリカ中をたくさんツアーしていて、ブルックリンで演奏するのが大好きだったの。そこが自分の音楽的な目標を追求したい場所だって感じた。そこには音楽的に自分に良いものをもたらしてくれるような、活発なエネルギーがたくさんあるってわかったのよね。
ソロ活動本格化のきっかけ
-滝田優樹(Yuuki Takita):以前にもソロ名義でEPをリリースされていましたが、本格的なソロ活動は2015年以降に始まったと思います。何か特定のきっかけがあったのでしょうか?
エンジェル: 2011年にダーティ・プロジェクターズを辞めたから、仕事がなくなっちゃった。いつもやろうと思っていた、ソロにいよいよ集中する時が来たって感じてね。『The Expanding Flower Planet』の作曲とレコーディングには長い時間がかかって、リリースされるまでにはさらに時間がかかったの。2015年よりかなり前にできてはいたんだけど、レーベルを見つけて、キャンペーンのサイクルを経る必要があったんだよね。
10年間の変化と「この土地で生きていく方法」
-Tomohiro Yabe:10年前のインタビューで、“私たちは考え方や生き方を完全に変える必要がある時代に来ていると思う。(中略)私の理想の生き方は、この土地で生きていく方法を学ぶこと”とおっしゃっていたのが印象的でした。この10年間で、パンデミックや生成AIの台頭など、10年前には想像もできなかったようなことを経験しました。この10年間であなたの考え方は変化しましたか?それとも、以前よりも“この土地で生きていく方法を学ぶ”必要性を強く感じていますか?
エンジェル: この気持ちは強くなるばかりね。毎日、自分の食べ物を育てるための土地付きの家を見つける方法を考えてる。家賃が高くて緑地がほとんどない都市に住んでいると、これは大きな課題でね。人々、特に今のアメリカ人は、消費の少ない生活を始めて、自分の食べ物を育てたり、すでに持っている服を大切にしたり、地域社会にもっと関わったりするような、持続可能な生き方を学ぶことがすごく大切だと思う。
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