最終更新: 2025年8月15日
“誰でもPool Kidsのようになれる”“誰でもバンドを始められ、アルバムを作れる”“誰もが夢を追いかける権利がある”といったメッセージを掲げ、
インディペンデントな活動を通してライブキッズに自信を与えている、Pool Kids(プール・キッズ)。
彼らは、フロリダ州タラハシー出身の4人組オルタナティブバンドで、既に現地の実力派のバンドとの共演歴を持つ。
Pool Kidsがリリースする3rdアルバム『Easier Said Than Done』は、アメリカの名門レーベル“Epitaph”との契約後、初となる作品だ。
今作のスタジオセッション費用は、長年のツアー活動で地道に貯めた資金で賄われた。『Easier Said Than Done』は、原点回帰に努め、
“自分たちにとって本物だと感じられる音楽”を追求した先にたどり着いた、究極のオルタナティブポップ作品に仕上がっている。
今回のインタビューでは、バンドのこれまでの歩みを振り返りながら、最新作『Easier Said Than Done』の制作背景を紐解くとともに、シーンの若手バンドに向けたエールとなるような話を聞いた。
バンドPool Kids結成と出会い
アーティスト:クリスティーン・グッドワイン インタビュアー:滝田優樹 翻訳・編集・校正:BELONG Media / A-indie
結成の経緯
-滝田優樹:私たちはアーティストのルーツや音楽が生まれた背景、そして影響を受けた音楽・文化・芸術を大切にしているメディアです。今回私たちとは初めてのインタビューなので、バンドの成り立ちから質問させてください。あなたたちはフロリダ州タラハシー出身の4人組バンドですよね? どのようにこの4人が知り合ってバンドが結成されるに至ったのでしょうか。
クリスティーン:ええ、私たちは4人組のバンドで、タラハシーを故郷だって言っているの。そこでバンドを結成して、初めてライブをするようになったから。育ったのはフロリダのいろんなところで、私(クリスティーン)はタンパ、ニッキー(ニコレット)はゲインズビル、ケイデンはベロビーチ、そしてアンディはマイアミ出身。ケイデンとニッキーと私は、大学のためにタラハシーに引っ越してきて、そこの音楽シーンで出会ったよ。
バンドは最初、ケイデンと私の2人組として始まって、うちは自分の家の裏庭で、ツアーで通りかかるDIYバンドを呼んでライブを企画したりしていたのよね。いずれは専任のベーシストとセカンドギタリストを見つけたいとは思っていたけど、ぴったりの人が見つかるまで時間をかけた。そのうち、私たちが2人ともDJをしていた大学のラジオ局WVFSタラハシーでニッキーに出会って、彼女にバンドに入ってくれないかって頼んだの。当時私がやっていた別のバンド“Cough Drop”と、ケイデンがやっていた“Faking Jazz”で、彼女が何度かサポートで素晴らしい演奏をしてくれた後だった。アンディが加わったのは、私たちが望むような頻度でツアーに参加できるギタリストがなかなか見つからなくて苦労していた後のこと。彼が長年フロリダのたくさんのバンドに関わってきたことは知っていたんだけど、まさか私たちのバンドに興味を持ってくれるとは思わなくて。でも、共通の友人が2人も彼に頼んでみたらって提案してくれた。私たちのデビューLPをレコーディングしてくれたロン・ベシーリと、今私のボーイフレンドであるニック・ノッテバウムが、2人とも高校時代からアンディと親友で、彼らが「アンディ、興味あるかもしれないよ」って教えてくれたから、すぐに声をかけたの。それ以来、ずっとこの4人でやってるってわけ!
初期の方向性
-滝田優樹:バンド結成当初の方向性もしくはやりたい音楽はどのようなものなのか教えてください。
クリスティーン:ケイデンと私が最初のレコードを書き始めた時、当時タラハシーのハウスショーシーンで活動していた地元のバンド、特に(今は活動していない)“Echo Base”というバンドにすごく影響を受けていたの。何よりも、彼らのライブでのオーディエンスのエネルギーが大好きで、彼らの面白いギターパートも大好きだったから、本当に同じようなものを作りたいって思ってた。ハウスショーでみんなが一緒に歌ってくれるような、そんな光景を思い浮かべながら、面白いギターパートとボーカルパートがある曲を書くのが、あのレコードでの一番の目標だった。今はもう完全にバンドとして形になって、当時とはまったく違うものに成長したけど、それがバンドの“最初の”方向性だったかな。
バンドの姿勢と影響
“誰でも始められる”というメッセージ
-滝田優樹:あなたたちについて紹介されている資料では“誰でもPool Kidsのようにできる”“誰でもバンドを始められる”“誰でもアルバムを作れる”“誰もが夢を追いかける権利がある”といったメッセージを打ち出していると記載がありました。これについて詳しく教えてくれますか。具体的にどのような思いでこういったメッセージを伝えているのか、どのような思いで活動しているのか知りたいです。
クリスティーン:私がギターを始めたのは10歳の誕生日だったんだけど、21歳くらいになって周りでバンドをやってる女性たちを見るまで、自分でバンドを始められるなんて一度も考えたことがなかった。なんでそうやって誰かの姿を見ることが影響するのかは分からないけど、時々、自分がやりたいことをやっている、自分と重なるような誰かの姿を見るだけで、それが達成可能なことに感じられるようになることがあるのよね。もっと何年も前に誰かが私を揺さぶって「バンドを始めるべきだよ!」って言ってくれてたらなって心から思うから、私たちは他の人たちのためにその一押しになろうとしてる。ライブでそういう話をすると、後で女の子たちが来てくれて、それを実行に移すために聞きたかったのはまさにその一言だったって言ってくれることもあるから…きっと効果はあるはず!
フロリダという故郷

クリスティーン:うーん、何よりもまず、フロリダは故郷って感じかな。すごく暑くて、ベタベタして、湿度が高くて、ゴキブリと蚊だらけの場所なんだけど、太陽は文字通りいつもすごく輝いていて、世界の他の場所をたくさんツアーして、それがどれだけ珍しいことかを見てきたから、すごく感謝するようになった。政治的な状況は悪夢みたいだけど、それでもここには一緒に頑張る良い人たちがいる。音楽シーンは街ごとに全然違うけど、州全体にわたって強いコミュニティ意識があるとは感じてる。フロリダのバンドは、本当にお互いをサポートし合っているの。
共演から受けた刺激
-滝田優樹:The Mountain Goats、PUP、Beach Bunny、La Dispute、Sunny Day Real Estateといったバンドとの共演歴もありますね。彼らとの共演はいかがでしたか? 感想や刺激を受けたことがあれば知りたいです。
クリスティーン:あのツアーはどれも、私たちにとって素晴らしい経験だった。ツアーに連れて行ってくれるバンドには、本当に、本当に恵まれてきたと思う。どのバンドもそれぞれ違う形で刺激的だったけど、ツアーを終えるときはいつも、オープニングを務めさせてもらったバンドから何かしらのインスピレーションやモチベーションをもらって帰ってくるのよね。
バンド名の由来
-滝田優樹:バンド名についても教えてください。なぜ“Pool Kids”という名前にしたのでしょうか? “Pool Kids”というバンド名の意味についても教えてください。
クリスティーン:“Pool Kids”っていう名前に、実はそんなに深い意味はないの。2017年に活動を始めた時、ケイデンと私は何ヶ月もバンド名なしで練習していて、ついに初めてのライブが決まって、フライヤーに載せるために名前を決めなきゃいけなくなったのよね。それでFacebookに、みんなのスマホのメモ帳に入ってるバンド名のアイデアを送ってって投稿した。送られてきたのは全部ひどい提案だったんだけど、“Pool Kids”はその中で一番マシな感じがしたから、それでずっとやってるわけ。今でもそんなに気に入ってるわけじゃないんだけどね。
影響を受けたアルバム
-滝田優樹:Paramoreのヘイリー・ウィリアムズもファンであることを公言されていましたが、あなたたちの音楽に影響を与えたアルバム3枚について教えてください。また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードについても教えてください。難しければメンバーそれぞれ好きな音楽アルバムとエピソードを教えてください。
クリスティーン:
Great Grandpa – 『Four of Arrows』
このレコードはバンド内でも人気で、結果的に私たちのセルフタイトルレコードと『Easier Said Than Done』の両方をプロデュースしてくれたマイク・ヴァーノン・デイヴィスと仕事をするきっかけになったの。
Andy Shauf – 『The Neon Skyline』
このアルバムのソングライティングには刺激を受けたわ。誰か他の人の人生について、すごく具体的で個人的な内容に感じられるのに、それでも私の中から感情的な反応を引き出して、夢中にさせてくれたから。自分の歌詞をもっと具体的で個人的なものにすることへの恐れがなくなったよ。
Charli XCX – 『how i’m feeling now』
これは私が完全にポップミュージックにハマるきっかけになった、入門編みたいなアルバムかな。それ以来、私は物事を“キャッチー”にすること、フックを書こうとすること、そして他のミュージシャンに感心されるだけじゃなくて、耳に心地よい方法でリズムやメロディーで遊ぶことを、すごく優先するようになったのよね。