最終更新: 2025年8月15日
『Easier Said Than Done』制作
DIYとレーベルの関係
-滝田優樹:あなたたちはレーベルに縛られずインディペンデントに活動されていますね。DIY精神に基づいてスタジオ・セッションの費用は、何年にもわたるツアー活動で地道に貯めた資金によってまかないながら、意欲的に活動する姿はとても頼もしく見えますが、こういった活動でのメリットやデメリットを教えてください。現在私たちが紹介している日本のバンドにもインディペンデントに活動しているバンドはたくさんいて、あなたたちのように活躍しているバンドからそれについて教えてもらうことで、日本の若手のバンドの参考になればいいなと思っています。
クリスティーン:今はEpitaphと契約しているんだけど、そうね、レコードは契約前に全部自分たちで資金を出してレコーディングを終えていたの。自分たちでやる一番のメリットは、やりたいように完全にコントロールできることよね。集中している間、誰か他の人の意見を気にする必要がない。自分が望む人と仕事ができて、好きなようにクリエイティブな決断ができる。すごく力をもらえることだと思う。ただ、EpitaphやSkeletal Lightningを含め、アーティストに完全な創作の自由を与えてくれるレーベルもたくさんあるとは思う。創作活動を制限する可能性があるのは、主にメジャーレーベルじゃないかな。いずれにせよ、自分たちの力だけでこのレコードを完成させたって言えることは、すごく誇りに思ってる。
タイトルの背景とテーマ
-滝田優樹:ここからはアルバム『Easier Said Than Done』について教えてください。まずはタイトルから。“Easier Said Than Done”というタイトルはどのような感情や雰囲気が反映されているのでしょうか。
クリスティーン:このアルバムは、自分自身に対するたくさんのフラストレーションから生まれたの。アルバムの中では、自分自身や自分の人生について変えたいと願っているけど、なかなか上手くいかない多くのことを探求してる。そういった物語を語る中で、ツアー、愛、犠牲、失敗、情熱、後悔、そして夢を追うことといった、他のいくつかの根底にあるテーマが浮かび上がってきた。でも最終的に、“もし手放すことができたら。言うは易く行うは難し”っていう歌詞がアルバムのタイトルになったのよね。物事を手放して、文字通り何でも楽しむことができないっていう私の性格は、間違いなく自分自身や人生について変えたいと願う一番大きなことだから。
レコーディングの進め方
-滝田優樹:前作に引き続きシアトルでマイク・ヴァーノン・デイヴィスとともに『Easier Said Than Done』を制作されたそうですね。彼とはどのようなディスカッションやアイデアの交換をして進められたのでしょうか。前作との比較をすると、前作は確固たる世界観があって全体の雰囲気もシリアスな印象ですが、今作は爽やかな印象で音として心地よく、neo acoustic由来の瑞々しさを持つ究極のオルタナティブポップ作品になっていると感じました。
クリスティーン:今回は、マイクのところに持って行った時点で、曲は全部書き上がって完成していたの。前回はまだ曲の多くに手を入れる必要があったから、スタジオ時間のかなりの部分を構成をいじったり、曲を完成させたりすることに使ったのよね。今回はキーの変更とか、音色の実験みたいなことにもっと時間をかけられた。
バンド内のディスカッション
-滝田優樹:アルバムの資料でベーシストのニコレットは“その場で新しいアイデアを試しては、曲そのものやキー、コード進行、フレーズを何度も書き直した。全体を“バンド全員の目”で、以前よりもさらに高精度な顕微鏡を使うような視点で制作していった”とコメントされていましたが、メンバー間でのやり取り自体はどのような話し合いがあったのでしょうか。制作時にあなたたちが思い描いていた着地点はどのような音楽であって、それを実現できたのか、もしくはそれとは異なるものになったのかについても教えてください。
クリスティーン:今回スタジオに入るにあたって私たちが持っていた唯一具体的な目標、つまり“思い描いていたサウンド”は、レコードの音を私たちのライブにもう少し近づけたいっていうことだった。サウンドを劇的に変えたいわけじゃなくて、このレコードがセルフタイトルのレコードと兄弟みたいなサウンドになってほしかった。それは間違いなく達成できたと思う。前回と似ていて、メンバー間の話し合いは、例えばキーの変更の可能性とか、全ての曲の全てのセクションで全ての楽器が演奏する全ての音やリズムを細かく分析したり、歌詞の修正なんかもあった。本当に顕微鏡で覗き込むみたいに細かく分析していくから、ほとんど執着してるって言えるくらい。深みにハマりすぎないように、しょっちゅう自分たちを止めなきゃいけなかった。でも最終的には、みんなが大好きだって言える作品ができたから、その手間をかける価値はあったのよね!
ブレイクスルーとなった曲
-滝田優樹:アルバムの中でブレイクスルーになった曲やバンドにとって最も変化を感じさせる楽曲はどれでしょうか? 理由も併せて教えてください。もしなければメンバーそれぞれおすすめの楽曲を教えてください。
クリスティーン:一番大きな変化っていう意味では、「Sorry Not Sorry」がこれまでの曲の中で一番違うサウンドだと思う。曲の全体的な雰囲気やムードはPool Kidsらしいんだけど、表現の仕方がロック寄りというよりは、かなりポップ寄りのものになっていると思う。
今作の位置付け

クリスティーン:あなたの印象は、全くその通りだと思う。前作から大きく変えたり、逸脱したりするつもりはなくて、ただ私たちにとって本物だと感じられる音楽を作り続けたかっただけなの。この作品の位置付けとしては、今の私たちは一種のフロウ状態にあるって感じかな…。セルフタイトルのレコードを経て、私たちはどうやって協力して、どうやって物事を叩き上げていくかを学んだの。今はもう、よく油が差された機械みたいにスムーズに進む感じね。
聴いてほしい人・シチュエーション
-滝田優樹:『Easier Said Than Done』をどのような人に聴いてほしいですか? もしくはどのようなシチュエーションで聴いてほしいですか?
クリスティーン:レコードの中には、親友と一緒に窓を全開にして車で大音量で流してほしい曲もあれば、一人で、何か危機的な状況を整理している時に聴いて、少しでも孤独じゃないって感じてもらえたら嬉しいなって思う曲もあるの。
日本のリスナーへ
-滝田優樹:最後に、日本の音楽ファンもきっとあなたたちの音楽を気に入るはずです!その人たちに向けて、メッセージをください。
クリスティーン:日本のリスナーの皆さんへ。日本は私たちが今まで訪れた中で一番大好きな場所で、近いうちにまた戻りたいって心から思ってる!皆さんの応援は、私たちにとって本当に、本当に大きな意味があるの!
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Pool Kidsアルバムリリース
3rdアルバム『Easier Said Than Done』
発売日: 2025年8月15日
収録曲:
1. Easier Said Than Done
2. Tinted Windows
3. Bad Bruise
4. Leona Street
5. Last Word
6. Sorry Not Sorry
7. Not Too Late
8. Which Is Worse?
9. Dani
10. Perfect View
11. Exit Plan
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Pool Kidsプロフィール
フロリダ出身の4人組インディ・オルタナティヴ・バンド。2018年のデビュー作はParamoreのHayley Williamsからも支持された。22年の2ndアルバムはPitchforkなどで高評価を獲得し、ポップ、エモ、マスロックを鮮やかに融合。23年12月には初来日公演も成功させている。DIY精神を原点とし、全世界で2,300万回以上の再生を記録。25年、Epitaph Recordsと契約し、3rdアルバム『Easier Said Than Done』をリリースする。ライブでは誰もが夢を追う権利があるというメッセージを発信しており、リスナーから多くの共感を得ている。
ライター:滝田優樹
1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。
そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。
その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。
退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。
それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。
猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
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Twitter:@takita_funky