最終更新: 2025年11月20日

“もっと欲しがるのは罪なこと?”

ジョーダナ(Jordana)が自身の名を冠した最新EP『Jordanaland』で投げかけるこの問いは、現実世界で“親切”を演じ続ける全ての人へ向けられている。

父親がオルガニストという音楽的な家庭で育った彼女は、2019年のデビュー以来、透明度の高いボーカルで聴く者の心を掴んできた。

しかし今作でジョーダナが描くのは、ただ美しいだけの世界ではない。

父親との葛藤、アルコール依存症という重いテーマ、現実への野心と逃避願望・・・などのリアルな現実だ。

ポップな曲調に隠された痛み、もう愛したくないのに愛してしまう矛盾、そして最後に爆発する感情と建国される理想郷。

ジョーダナが理想とする『Jordanaland』とはどのようなもので、そこで奏でられる音楽とは?

ジョーダナと『Jordanaland』


テキスト:Wakiki(わきき) 導入文・歌詞和訳:BELONG Media / A-indie

ジョーダナは、2019年から活動するアメリカのシンガーソングライターだ。

父親がオルガニストであったジョーダナは教会にあふれる音の中で自身の感性を育んでいったという音楽的な背景がある。

彼女はいくつかのアルバムやEPをリリースしており、その新しいEPが『Jordanaland』である。

まるで水滴がリズミカルに落ちて弾けるような、透明感のある声と音が印象的な作品だ。

彼女自身の名を含むこのタイトルを一目見れば、リスナーは彼女が今作に込めた意図を掴み取ることができるだろう。

『Jordanaland』は、現実世界(Americaland)からの逃避場所であり、”混沌からのオアシス”なのだそうだ。

アートワークは革命戦争のイメージが元となったみたいだが、私には現実世界のしがらみ全てから解放された“心が生きる場所”の風景のように感じられた。

EPを聴いていくにつれて、私たちは現実の苦しみと、そこから逃れたいと願う共感に満ちた景色を目の当たりにする。

父親との葛藤と”不本意な愛”を歌う

「Still Do」は、ハイライトの一つだ。ポップでノスタルジックな曲調に乗せて、ジョーダナは父親やその他の失望させられた人々との確執、そしてその複雑な想いをぽつぽつと呟く。

「大丈夫になるよ」って言ってあげられたらいいのに

「愛してる」なんて言いたくない
でも まだ愛してる 今でも

もう期待をしたくないのに、まだ愛してしまう。”不本意な愛”とでも言うんだろうか、その葛藤が伝わってくる。

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