最終更新: 2019年1月1日
友達から同志へ。お互いをさらけ出しながら作られたアルバム『OFF THE WALL』。その全貌をメンバー全員が語る。BELONGの新人特集号(Vol.19 #YOUTHWAVE3.0)にも掲載。
アーティスト:ROVIN、ASHTRAY、BAOBAB MC、NOLOV インタビュアー:まりりん 撮影:樋口隆宏
-前作『QUEST』のリリースから今作までの1年半の間で、大きく変化した事はありますか?
ROVIN:1stアルバム(『QUEST』)の制作時はそんなに仲良くなかったけど、前作を作ってからはめちゃめちゃライブをして地方回って、4人でいたのがダイレクトに影響しています。密にコミュニケーションを取れるようになって、2ndの制作の仕方はガラッと変わりました。ダサいものはダサいと言えるようになって。
BAOBAB:単純に共有するものが多くなりました。好きなものが一緒だと気づいたり、各々恥部を曝したりして、深いところまで踏み込めるようになったりね。
NOLOV:一言で言うとめっちゃ仲良くなった。
-聴いていて仲良いのはとても伝わってきました。前作の「PANNNA DONNA」が自己紹介だったのが今作の「FANTASTIC 4」は他己紹介になっていますよね。
NOLOV:コイツはこう思っているんだっていうのが分かって面白かったですね。短いから1番伝えたいコアなところが出てるんですよ。
BAOBAB:会話の量が増えて、それが音楽にも反映されています。コイツはこういう事を言ってくるだろうっていう事やフロウやラップはこういう感じで来るだろうなっていうのが分かってきて、じゃあこっちはこういう風に遊んじゃおうっていうのができるようになった。
ASHTRAY:前作は歌詞をLINEで共有してたもんね。信頼してお互いのディレクションができるようになった。
ROVIN:前は自分しか信用してなかったっていうのが全員あったから。でも今はこいつらが正解だなって思う。
BAOBAB:誰よりも自分の事を見てくれる人たちだしね。
【interview】誰かがいなくなってから、やっと何がダメだったんかなって考えた-Tempalay『5曲』 https://t.co/c5Hq1nPB39 pic.twitter.com/MPfVDXFRo3
— BELONG Media (@BELONG_Media) February 17, 2017
-今回もトラックごとにテーマを決めてそれぞれ歌詞を書いてきたのでしょうか。
NOLOV:作り方はあんまり変わってないんですけど、それぞれの歌詞にディレクションできるようになって間違いがなくなったっていうのはあります。
ASHTRAY:前作はできあがったら「じゃあ録ってみようか」ってそのまま出す感じだったんですけど、ボツにしたりボツにしたものが生き返ったりするようになりました。
BAOBAB:「死む。」は2ndを作ろうってなった時、初めて作った曲なんですけどしっくりこなくて喧嘩みたいにまでなって、一度はお蔵入りにして別の曲に手をつけたんです。全曲できて最後の最後にボツにしたものをもう一回聴いてみたら「あれ?これいいよね?」ってみんな同じ空気になって、これ本録りして採用する事になりました。
-「死む。」のテーマは難しくて面白いですよね。
NOLOV:1stの延長線は嫌だったので変わろうとしてたんです。あのアルバムを出した後に冷静になって聴くと初期衝動だなと思って。反省を生かして2ndは凝ろうとして、考え過ぎちゃったんです。その結果、どうしていいか分からなくなって。でもスーパーバイザーとして、TSUBAMEさん(TOKYO HEALTH CLUB)が入ってくれて話していくうちに自分たちのなかでやっと基準ができてきました。
-トラックの雰囲気がかなり変わったなというのが最初の印象でした。ピアノが多いのが印象的で。
BAOBAB:生音に近付けたっていうのはありますね。
NOLOV:2ndは、シーンへの目配せや計算みたいな事を全て止めました。前作まではシーンに認められに行こうとしていた節があって。
BAOBAB:それを止めて単純に自分たちに響いてるものを作ろうって。
NOLOV:そうしたらめちゃくちゃポップになった。それが明確になっているのが「STAY GOLD,LIFE GOES ON」。MVを公開してみんなの反応見て、伝えたかった事がちゃんと伝わってるなって思いました。俺らはRIP(RIP SLYME)とKICK(KICK THE CAN CREW)とDragon Ashを聴いて育った人間だから。
BAOBAB:ポップスのなかで市民権を得たHIPHOPが自分たちの入り口だから、それは隠さずにいこうと思います。それが全員の共通点だし。
ROVIN:「STAY GOLD,LIFE GOES ON」も狙ってないって言ったら嘘になるけど、好きなものを出したらこうなりました。
-このアルバム通して聴けばだいたい人柄が分かると思うんですけど、ROVINさんはゲームの話と東京に憧れがあるとか。
ASHTRAY:前作で俺は、千葉!千葉から出ない!みたいな感じだったけど今は東京に向かってるよね。
NOLOV:俺が俺がっていうのじゃなくて力を抜いて表現できてる。
ROVIN:前はそれしかなかったからね。俺がやるしかねぇと思ってたから。でも2ndを作る頃からみんなの事も分かったし、自分の立ち位置も自然と分かったし。
BOABAB:1stは武装して考えてたよね。ゲームの話もしてなかったし。
ROVIN:前までは3人の事を信用してなかったかもね(笑)。1stの反響が大きくて、正直それがプレッシャーになっていたのもありました。でもこれでいいんだって思えるような作品になりました。
BAOBAB:俺さ、エモい事があったりするとJABBAを聴くの。やっぱり聴きたいのよ、みんなの声を。包まれたいというか。やっぱこいつらだわーってなる。
NOLOV:分かる、分かる(笑)。あるよね、そういう瞬間。
ROVIN:マジかよ。気持ち悪いな。
BAOBAB:誰でもなくJABBAなんだよね。「雨音はディラのビート」のASHTRAYのパートを聴いてホロっとするの。もともと音楽的なアプローチがうまいし、ラップも1stの時とは比べものにならないくらい上手くなったよね。
NOLOV:色気が出てきたよね。でも歌詞はめっちゃキザ!これで恥じらいないからね。MVでのかっこつけ方がナチュラル過ぎて!MVを見るまで忘れてたの、コイツがイケメンって(笑)。
-BAOBABさんはとてもロマンチストですよね。
BAOBAB:よく言われる!
NOLOV:巨漢のOLだから!今回は立ち位置がはっきりしたのがいいんだよね。前はバランサーって感じで俺らがやった事をバオ(BAOBAB)がまとめてたんだけど、みんな上手くなって4人が横に並べるようになってからは裏方感がなくなった。
BAOBAB:前作は楽曲性を担保しなきゃって思ってたけど、2ndは上手くなったから大丈夫だって思って。欠けてる部分なんて大丈夫でしょって思えるようになりました。
-NOLOVさんは「GOOD VIBLE」そのままな感じがします。1番しっかりしててリーダーっぽく行動するけど抜けてるところもあるんだろうなって。
NOLOV:あの曲を作って次の日に歌詞通りの事が起こったの!前日に明日遅れないようにお願いしますって振って当日「あーもう無理だタクシーで行こう」ってなって、ROVINが最初に着いてて2人で待ってますってLINEが来てて。着いたらASHTRAYも「寝坊してタクシーで来た」って同じじゃんって。
ASHTRAY:「2分遅れたけど最後じゃないし大丈夫っしょ」って。NOLOVは個性が欲しくてリーダーを名乗ってるところありますからね。
ROVIN:リーダーっていうのがなかったら中肉中背のわがまま。
NOLOV:他が濃いじゃないですか。デブ・ガリイケメン・ヤンキーだよ。勝てないじゃん。もうグーニーズだよ。異常なまでの個性だよ。
ASHTRAY:この3人で映画撮れちゃうねえ。真ん中にいる分どっしりしてるんじゃない?
BAOBAB:ムードメイカーだよ。“こいつがいればまあ良い雰囲気(FANTASTIC 4より)”。
NOLOV:ASHTRAYがそう言ってくれたのが嬉しくてさぁ、「すいません、もう1回聴いていいですか」って撮り終わったあとすぐ何回か聴いちゃった(笑)。
ASHTRAY:もっとイキってたよ。「いいじゃん。さっきなんて言ってた?聞かせてよ?」って言われたよ(笑)。
-歌詞に固有名詞が多いのは意識してるのでしょうか。アルバムの中でドラゴンボールのネタが3回も出てきていたりしますよね。
NOLOV:無意識ですね。好きなもので例えちゃう。
BAOBAB: それがHIPHOPのいいところだと思います。なんでも歌詞に入れられるっていう。好きなものを表明できるっていうのが1番HIPHOPの好きなところですね。
ROVIN:しかも今はそういうのをフレキシブルにやってる人はあんまりいないよね。
BAOBAB:想像がつきやすいんだよね。スタイルウォーズ(技術の競い合い)って言って響く人よりも天下一武道会って言って響く人のほうが多いから。
ASHTRAY:ポップでいいんだって意識したかも。1stだったら出てこなかったフレーズ。
BAOBAB:前作だったらスタイルウォーズって言ってたよね。
-歌詞でこだわったところや気に入っているものはありますか。
ASHTRAY:「BIG WHEEL」のROVINのところが1番と2番で着地点があって好きだな。曲全体を見て、ラップじゃなくて歌として見ているのがあるって思う。
ROVIN:一聴して分かるように意識しました。頭から聴いてて1ライン1ラインぎりぎりググらなくて済むように分かりやすく。聴きとりやすいって言ってもらえるんで。
BAOBAB:ROVINはだれが聴いてもかっこいいじゃんってなるからすぐ刺さるよね。俺は「STAY GOLD,LIFE GOES ON」の“賛から否まで総取り俺の取り分”ってとこが決意表明だと思ってます。賛成も否定も割れるだろうなって。MVに低評価もついてるし。
NOLOV:わかる!あれ付いたときグッときたよね。今までなかった否!
ASHTRAY:Dislike!あれは嬉しかったね。今まで好きか興味ないかだけだったから。
NOLOV:いいね押すのには何もいらないけど、否定するのにはそれなりに強い意思を持って否定するじゃん。
ROVIN:自分の中でそれなりに消化して押すよね。「これがこうだからむかつく。だから否定する。これじゃねーんだよ!」っていう。その人の強い意志がある。
BAOBAB:それを表明してもらえる立場になったっていうのが嬉しい。そのMVでこの決意を言えてよかった。否定する人が現われてやっと次のステージに上がれる。めっちゃ好きって人しかいなかったら、掌を返されたら何もなくなってしまうからね。EXILEやAKB48ですら嫌いって言う人がいるんだから、否定があってこそなんだなと思います。
ROVIN:単純に上手くなったから1stと聴き比べて欲しいです。声の出し方とかも。
BAOBAB:「ハッピーアイスクリーム」みたいな曲もできるようになった。でもレパートリーが多いから好みは聴く人によって分かれると思う。バンド出身の人はサウンド的に「STAY GOLD,LIFE GOES ON」で、ポップが好きな人は「ハッピーアイスクリーム」で、音楽的によく聴いてくれている人は「雨音はディラのビート」か「GOOD VIBLE」っていう。
【最新号】BELONG Vol.19が完成しました!特集は注目の新人アーティストを取り上げる“YOUTHWAVE 3.0”。DATSが表紙でMONO NO AWARE、Tempalay、ジャバを掲載。4月8日(土)に発刊します。 https://t.co/0AqJao4r3Z pic.twitter.com/56jkkNFCE1
— BELONG Media (@BELONG_Media) March 29, 2017
-どんなジャンルが好きな人でも聴けるアルバムですよね。実は私もパブリック娘。とJABBAからHIPHOPに興味を持つようになりました。
BAOBAB:それはめちゃくちゃ嬉しい!浅いとかポップだとか言われてもいいからラップミュージックの入口になりたい。そこから掘って色々聴いてもらえればいくら足蹴にされても構わない。
ROVIN:何ならラップである事やHIPHOPである事も気にしなくていい。良い音楽って聴いてもらってそこから派生してもらえれば。それがHIPHOPじゃなくても何でもね。
-アルバムタイトル『OFF THE WALL』に込めた意味について教えてください。
NOLOV:以前ZINEを作っていたときにバオが“OFF THE WALL”って言葉についてコラムを書いてくれたんです。“逸脱する”や“常識から並はずれている”っていうかっこいい意味で。俺らは普通の環境で普通に育ってきて、でもそんな中でも誰もが人とちょっと違う部分を持っていると思うんです。それは誇っていい事で、俺らにとってそれがJABBAなんです。
BAOBAB:正直どこのライブに出ても浮いてるから、それが我々じゃんって。だからジャケットがすごくいいんだよね。MAWって壁に描くグラフティライターなの。ストリートに生きる人たちにとってはいつも見ているもので、彼を壁から外してジャケットにできたっていうのも“OFF THE WALL”なんです。
ROVIN:このMikeLってキャラクターは新宿とか渋谷とかどこにでも描いてあって、そういう存在になりたいです。ふと気づけばここにもいるんだっていう。
-JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUBとして今後どのような存在になりたいと思いますか?
ROVIN:王道。スターだね。ライブとかして「うおー!!!」ってなるのが最近ないじゃん。かっこいいんだけど面白くないじゃん。でも俺らが楽しんできたのってそういう光景だし、上がるって感じだからそこにいきたい。こいつらがいたらアガるっていうの。
BAOBAB:曲とかじゃなくて出てきただけで湧いてほしいよね。
NOLOV:自分たちがやってる“NEW VACANT STORE”ってパーティーの光景をもっと広げて行きたいです。そこのお客さんはピュアで純粋に楽しい、アガるっていう感じで周りを気にせず盛り上がってて、音楽聴いて最高!超楽しい!ってそれでいい。
ROVIN:俺らがライブした30分とか1時間の重要性が欲しい。例えば自分がライブを見に行ってやべぇなって思ったときって超アガるか呆けるかで。SNS見ると誰かがライブを撮ってアップしてるのがあったりするじゃないですか。そういう感情をぶち破りたいですね。ケータイ触れねー!焼きつけるしかない!っていう。ロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)は誰も撮ってないんですよ。きっとただでかい存在に圧倒されているんです。そういうでけぇ存在になりたい。
前回BELONGで行ったインタビューはこちら。
【Release】
『OFF THE WALL』
NOW ON SALE