最終更新: 2015年3月31日
Mando Diao(yabori)
Mando Diaoほど、自分がリアルタイムで聴いてきた音楽の中で激変(サウンドだけでなくビジュアルも)したバンドはいないだろう。デビュー当時、彼らは溢れんばかりの野心をガレージロックにのせて、スウェーデンのボーレンゲから颯爽と出てきた。持ち前のルックスの良さもありビートルズの再来と言われた彼ら。ガレージロックリバイバルの旗手として、ここ日本でもリスナーの心を鷲掴みにしたのだった。
https://www.youtube.com/watch?v=bFE1QEQJ6oY
しかし最近のMando Diaoは何だか様子がおかしい。事件は新作『Aelita』が発表された時に起こった。発表されたジャケットはご覧のとおり、その激変ぶりには開いた口が塞がらない。サウンドに関しても彼らの持ち味だったガレージロックはどこ吹く風と、KraftwerkやDaft Punkを思わせるようなエレクトロ色でバッキバキに染め上げている。あげくの果てには、オフィシャルビデオにデコトラが出動する始末(日本のカルチャーに影響を受け過ぎたのか!?)。これぞ、一体どうした!?と疑問を持たずにはいられない変わりようである。しかしながら、ソングライティングのクオリティは落ちておらず、最近発表された曲は何故かビートルズの「Norwegian Wood」を思わせるものを作っている所がなんだか憎めないなぁと思ってしまう。
Modest Mouse(Chappy)
20年以上ものキャリアを持ち、根強いファンに支えられながら活動を続けバンドという、垣根を越えた異彩な音楽集団とも言えるModest Mouse。多彩な音楽性を合わせ持つ音や独自の演奏スタイルはあらゆるミュージシャンにも影響を及ぼしており、今やインディーシーンにおいて欠かせない存在とも言われる彼らの楽曲は遡って聴いても色褪せない魅力がある。
元ザ・スミスのジョニー・マーが一時的に加入して出た前作のアルバム『We Were Dead Before The Ship Even Sank』ではビルボードチャートで1位を獲得。この快挙にはファンもを驚かせ地道な活動の果ての大躍進だった。それ以降、ライブ活動などのみだった彼らが8年ぶりに待望の新譜アルバム『Strangers To Ourselves』を今月出した。彼ら独自の在り方、核なる部分は変わっておらず、Modest Mouseという異彩な音楽集団の織り成す音の方向性が確立され、貫禄ある姿に変貌した様に改めて魅了され、歳月を経て作り上げられた濃厚さを感じた。
宇多田ヒカル(桃井かおる子)
日本人であれば老若男女問わず、この名前を知らない人はまずいないだろう。彼女こそ、今月のこの企画に最もふさわしいアーティストと言えるだろう。宇多田ヒカル。彼女が生み出してきた数多くの楽曲、時が経つにつれてその音楽性が変化してきたことは、おそらく誰もが納得するのではなかろうか。『Automatic』にに始まる初期の頃の楽曲は、彼女が帰国子女であることからも分かるように、R&Bテイストをふんだんに使用したものが多かった。歌詞の内容も主にラブソングが目立ち、そのどれもが誰が聴いても分かりやすいものだった。
そこから大きく変化したのが、3rdアルバム『Deep River』以降である。代表曲「traveling」はR&Bをベースにしながらも、誰も聴いたことのない、それでいてどこか懐かしさを感じさせるメロディーを確立した。歌詞もかつてとは違い、まるで文豪の小説を読んでいるかのような言葉を用い、彼女にしかできない術を私達の耳と心に焼き付けた。こう書いてしまっては彼女がまるでハチャメチャなことをしているかのようにも思われるかもしれないが、それでも一つ一つの楽曲が一つの作品になっているのは、彼女にしかない優れたポップセンスを、その賢さでコントロールしていたからだろう。だからこそ、どんな人の耳にも心にも届いてしまうのだ。何より彼女のチャーミングな性格と笑顔は、誰からも愛されるものだった。だから突然の引退発表は、日本中を騒然とさせた。彼女の楽曲はいまでも街のどこかで流れ、私達の生活のどこかや思い出の中で、今でもちゃんと根付いている。彼女がラストライブのステージに置いたマイクを再び握る日を、私たちは待っている。