最終更新: 2023年3月15日
Mitski(ミツキ)が新曲「Working for the Knife」をリリースした。
この記事では、BELONG Media独自の解釈で「Working for the Knife」の歌詞を和訳し、内容を掘り下げている。
Mitskiが幼い頃に描いていた夢と、社会の渦の中でただ人生が削られていくだけの現実。
“30歳の壁”を迎えた時に感じた、Mitskiが抱える人生の葛藤とは。
目次
Mitskiとは
Mitski(ミツキ)ことミツキ・ミヤワキは日系アメリカ人のシンガーソングライター。2012年にファーストアルバム『Lush』、セカンドアルバム『Retired from Sad, New Career in Business』(2013)、
サードアルバム『Bury Me At Makeout Creek』(2014)、フォースアルバム『Puberty 2』(2016)、フィフスアルバム『Be the Cowboy』(2018)をリリース。
Mitskiは2019年9月のニューヨーク公演を最後にライブ活動休止を宣言した。
そして、2021年10月に発売されたシングル「Working for the Knife」のリリースと共に、2022年2月から北米ツアーでライブ活動を再開することを発表した。
Working for the Knifeについて
Mitski(ミツキ)の新曲「Working for the Knife」について。
新曲「Working for the Knife」は長年Mitskiの作品を担当してきたPatrick Hylandをプロデューサーに起用。
そしてミュージックビデオはニューヨーク州オールバニーにあるThe Eggという建物で撮影され、Zia Angerが監督を務めた。
Mitski – Working for the Knife (Official Video)
Working for the Knife歌詞和訳
Mitski(ミツキ)の新曲「Working for the Knife」について。
“死ぬために働く”というテーマの歌詞を和訳し、内容について考察していく。
映画の冒頭でいつも泣いてしまうの
私も何かを生み出したいと願ってたからかな
ただ死ぬために私は働いてるのよ
“I cry at the start of every movie
I guess ‘cause I wish I was making things too
But I’m working for the knife”
自分のストーリーを語れるようになりたいと昔は思ってた
でも誰も私の人生に興味なんてないのよ
誰一人としてね
“I used to think I would tell stories
But nobody cared for the stories I had about
No good guys”
世界は進み続けてるってずっと分かってた
私を置き去りにしても進み続けるとは思ってもみなかったけどね
一日を明るくスタートして、落ち込んで一日が終わる
だって死ぬために私は働いてるのよ
“I always knew the world moves on
I just didn’t know it would go without me
I start the day high and it ends so low
‘Cause I’m working for the knife”
私は20歳で死ぬとずっと思ってた
29歳の今、目の前には見慣れた道が続いてる
30歳になったら何か新しい変化が訪れるのかな
命ある限り生き抜くわ
“I used to think I’d be done by twenty
Now at twenty-nine, the road ahead appears the same
Though maybe at thirty I’ll see a way to change
That I’m living for the knife”
私は何でも好きに選択できるってずっと思ってた
それは正しかったけど、間違った選択をしたのかも
嘘をついて一日が始まって、真実を突きつけられて一日が終わる
死にたくてたまらないの
“I always thought the choice was mine
And I was right but I just chose wrong
I start the day lying and end with the truth
That I’m dying for the knife”
和訳まとめ:Mitskiの葛藤
Mitski(ミツキ)の新曲「Working for the Knife」は幼い頃の夢と現実の狭間に生きる葛藤、そして現代社会で削られていく人生がテーマである。
Mitskiは「Working for the Knife」に関してこうコメントしている。
“この曲は、夢を持った子供から職についた大人へと成長する過程のどこかで取り残されてしまった状態についての歌なの。そして、自分の人間性を認めてくれない世界に直面するけど、そこから抜け出す方法も見当たらない。”
冒頭の歌詞で登場する映画についての言及は、Mitskiが大学で音楽を専攻する前に映画学を専攻していた経験が由来している。
何かを生み出せる人間になりたいと願う反面、苦悩や葛藤といった負の感情を音楽として昇華せざるを得ないという結論に至った経緯が読み解ける。
“映画の冒頭でいつも泣いてしまうの
私も何かを生み出したいと願ってたからかな”
次に続く歌詞では、先ほど述べた映画というストーリーとリンクさせながらも、自分が何者かになりたいと願うが世間から認められない苦痛を表現している。
“自分のストーリーを語れるようになりたいと昔は思ってた
でも誰も私の人生に興味なんてないのよ
誰一人としてね”
“30歳の壁”を目前に、Mitskiが29歳の時に感じていた“夢を持った子供と職についた大人”の境界線に立たされるという苦悶が次の歌詞で描かれている。
“私は20歳で死ぬとずっと思ってた
29歳の今、目の前には見慣れた道が続いてる
30歳になったら何か新しい変化が訪れるのかな”
Knifeの意味
ここで、タイトルに登場する“Knife(ナイフ)”という意味について考察していきたい。
この“Knife(ナイフ)”という単語は計4回登場するが、苦悩、メンタルヘルス、社会的な圧力、そして死など、比喩として様々な意味に捉えることができる。
“ただ死ぬために私は働いてるのよ”
“だって死ぬために私は働いてるのよ”
“命ある限り生き抜くわ”
“死にたくてたまらないの”
幼い頃に夢見ていた未来とは裏腹に、生きるために働くことによって死んでいく自我や、常に死を意識しながら生きている現実。
Mitskiが抱えるアーティストとして生きることの葛藤、そして夢を追うことすら難しい現代社会への疑念が描かれたのが『Working for the Knife』である。
Working for the Knife作品クレジット
Mitski(ミツキ)「Working for the Knife」のクレジットは下記となっている。
プロデューサー:Patrick Hyland
作詞・作曲:Dan Wilson & Mitski
レーベル:Dead Oceans
リリース日:2021年10月5日
アルバム
シングル『Working for the Knife』
発売日: 2021/10/5
フォーマット:Mp3
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5thアルバム『Be the Cowboy』
発売日: 2018/8/17
フォーマット:Mp3、CD、カセット
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4thアルバム『Puberty 2』
発売日: 2016/6/17
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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3rdアルバム『Bury Me At Makeout Creek』
発売日: 2014/11/11
フォーマット:Mp3、CD
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2ndアルバム『Retired from Sad, New Career in Business』
発売日: 2013/8/1
フォーマット:Mp3
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1stアルバム『Lush』
発売日: 2012/1/31
フォーマット:Mp3
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Mitskiプロフィール
“Mitskiは日系アメリカ人のシンガーソングライター/ミュージシャンだ。大学で音楽を学びながら『Lush』(2012年)、『Sad, New Career in Business』(2013年)と2枚のアルバムを自主リリースし、大学卒業後の2014年にDouble Double Whammy(後にDead Oceansより再発)よりリリースしたサード・アルバム『Bury Me at Makeout Creek』が高い評価を獲得した。その後、2016年には4枚目のアルバム『Puberty 2』、2018年には5枚目のアルバム『Be the Cowboy』をそれぞれDead Oceansよりリリース。『Be the Cowboy』はPitchforkの年間ベスト・アルバムの1位を獲得する等、賞賛を浴びた。”
Mitski代表曲(Youtube)
- Mitski(ミツキ) – Nobody (Official Video)
- Mitski(ミツキ) – Washing Machine Heart (Official Music Video)
- Mitski(ミツキ) – Your Best American Girl (Official Video)
・Mitskiから影響を受けたバンド、Wednesday(ウェンズデイ)
ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
BELONG Mediaのライター/翻訳。
高校卒業後18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、大学ではインターナショナルビジネスを専攻。
13歳よりギター、ドラム、ベースを始める。
関西を拠点に活動するサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。
2017年10月、全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をDead Funny Recordsよりリリース。
2021年2月、J-WAVEのSONAR MUSICへゲスト出演。
普段はサイケデリック、ソウル、ロカビリーやカントリーを愛聴。趣味は写真撮影、ファッション、映画鑑賞。
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