最終更新: 2023年3月15日
ミツキ・ミヤワキことMitski(ミツキ)が3年半ぶりとなる新作アルバム『Laurel Hell』をリリースした。
この記事では、ミツキ・ミヤワキの人物像を掘り下げると同時に、『Laurel Hell』収録曲の「Everyone」の歌詞を和訳し、BELONG Media独自の解釈で内容を考察している。
2019年のライブ活動の無期限休止宣言とSNSアカウントの停止。
『Laurel Hell』で見事カムバックを果たしたMitskiが「Everyone」で描いた、アーティストとして生きることの苦悩と成功とは。
目次
ミツキ・ミヤワキについて
Mitski(ミツキ)ことミツキ・ミヤワキは、日系アメリカ人のシンガーソングライター。
1990年、三重県でアメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれる。
18歳で作曲を始め、ニューヨーク州立大学のパーチェス・カレッジで音楽を専攻し、在学中にファーストアルバム『Lush』(2012)とセカンドアルバム『Retired from Sad, New Career in Business』(2013)を自主リリース。
HatchieやFrankie Cosmosを輩出したインディーレーベルDouble Double Whammyよりサードアルバム『Bury Me at Makeout Creek』(2014)をリリース。
その後、Japanese BreakfastやPhoebe Bridgersを輩出した名門レーベルDead Oceansと契約し、『Puberty 2』(2016)、『Be the Cowboy』(2018)、『Laurel Hell』(2022)をリリースした。
2019年9月9日、ニューヨークのセントラル・パークでのライブにて無期限のライブ活動休止宣言を発表。
そして同年、ファンの期待や誹謗中傷から精神的に不調をきたし、SNSのアカウントの運用を停止した(現在はマネージャーが管理している)。
Everyone
Mitski(ミツキ)の「Everyone」は6作目となるアルバム『Laurel Hell』の収録曲。
ミツキ・ミヤワキは「Everyone」ができた経緯について以下のようにコメントしている。
“「Everyone」は、Beakというイギリスのエレクトロニック・グループから着想を得て制作したの。Beakの作風はとてもミニマルだけどエモーショナルかつ意味深くて、全てがうまくまとまってるの。”
Mitski – Everyone (Official Audio)
Everyone歌詞和訳
Mitski(ミツキ)の「Everyone」について。
アーティストとしての苦悩と成功がテーマの歌詞を和訳し、内容を考察していく。
周りのみんな、全員よ
「その道はやめといたほうがいい」とみんなから言われたわ
だから私はこう言ったの
「私はこの道で生きていく」
“Everyone, all of them
Everyone said, “Don’t go that way”
So, of course, to that, I said
“I think I’ll go that way””
暗闇へと続く扉を大きく開けて
「出ておいで、あなたが誰だか知らないけど」と私は言った
私はまだ求めてないみたい
“And I left the door open to the dark
I said, “Come in, come in, whatever you are”
But it didn’t want me yet”
まるで大人が灯りを消した後に
ベビーベッドで眠る赤ちゃんみたい
“Then like a babe in a crib
After some big hand turns out the light”
暗闇に両手を大きく広げて
「望むものを全て持っていきなさい」と私は言い放った
自分の若さに当時は気づいてなかった
そして何が必要かも分からなからずに
どんな犠牲が強いられるか何も知らなかったの
“And I opened my arms wide to the dark
I said, “Take it all, whatever you want”
I didn’t know that I was young
I didn’t know what it would take
I didn’t know what it would take”
私は自由だって時々思うの
またあの道に戻るまでの間は
“Sometimes I think I am free
Until I find I’m back in line again”
ミツキ・ミヤワキの苦悩と成功
Mitski(ミツキ)の新曲「Everyone」は、ミツキ・ミヤワキがアーティストとして生きることの苦悩と成功がテーマの楽曲である。
冒頭の歌詞では、Mitskiが音楽の道へと進む決意を固めた頃の様子が描かれており、周りの人々からは音楽で食べていくことの厳しさを忠告され、周りのサポートを得られなかった孤独が表現されている。
“周りのみんな、全員よ
「その道はやめといたほうがいい」とみんなから言われたわ
だから私はこう言ったの
「私はこの道で生きていく」”
次の歌詞で登場する“暗闇”とは、音楽業界という未知なる世界を比喩している。
自分の全てを音楽に捧げようとするが、Mitskiの才能がなかなか音楽業界で認められない辛い現実が描かれている。
“暗闇へと続く扉を大きく開けて
「出ておいで、あなたが誰だか知らないけど」と私は言った
私はまだ求めてないみたい”
次の歌詞で登場する“大人”とは、音楽関係者のことを象徴していると解釈できる。
生活の全てを親に頼らなければならない赤ちゃんと同じように、Mitskiは音楽関係者に依存しなければ成功しないと考えていることが次の歌詞から読み解くことができる。
“まるで大人が灯りを消した後に
ベビーベッドで眠る赤ちゃんみたい”
当初は周りに反対されていた、音楽の世界で生きていくというMitskiの夢。
あらゆる犠牲をいとわない姿勢でアーティストとしての成功を目指していたMitskiだが、名声と引き換えにプレッシャーやストレスに苛まれ、当初の自分の考えがいかに甘かったのかを痛感している様子が次の歌詞で述べられている。
“暗闇に両手を大きく広げて
「望むものを全て持っていきなさい」と私は言い放った
自分の若さに当時は気づいてなかった
そして何が必要かも分からなからずに
どんな犠牲が強いられるか何も知らなかったの”
次の歌詞では、“こうすれば売れる”、“ファンはこのような作風を望んでいる”、といった音楽業界のしがらみから解放されると同時に、アーティストとしての成功を感じたMitskiの心情が表現されている。
“私は自由だって時々思うの
またあの道に戻るまでの間は”
ライブ活動の無期限休止宣言やSNSアカウントの停止など、音楽業界という“暗闇”で
名声を得ることによって生じた精神的な重圧。
ミツキ・ミヤワキは無期限のライブ休止宣言前の最後のライブに関してこうコメントしている。
“これが私にとって最後のライブにして、音楽をやめて新しい人生を歩もうかとも考えていた。”
一度は音楽活動をやめようと考えるまで苦しんだMitskiだが、アルバム『Laurel Hell』のリリースでようやく音楽業界という暗闇から抜け出せた、と感じることができたのではないだろうか。
「Everyone」はアーティストとしての成功、そして自由を手に入れたミツキ・ミヤワキの希望の歌である。
ミツキ・ミヤワキリリース作品
6thアルバム『Laurel Hell』
発売日: 2022/2/4
収録曲:
1. Valentine, Texas
2. Working for the Knife
3. Stay Soft
4. Everyone
5. Heat Lightning
6. The Only Heartbreaker
7. Love Me More
8. There’s Nothing Left for You
9. Should’ve Been Me
10. I Guess
11. That’s Our Lamp
フォーマット:Mp3、CD
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5thアルバム『Be the Cowboy』
発売日: 2018/8/17
フォーマット:Mp3、CD、カセット
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4thアルバム『Puberty 2』
発売日: 2016/6/17
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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3rdアルバム『Bury Me At Makeout Creek』
発売日: 2014/11/11
フォーマット:Mp3、CD
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2ndアルバム『Retired from Sad, New Career in Business』
発売日: 2013/8/1
フォーマット:Mp3
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1stアルバム『Lush』
発売日: 2012/1/31
フォーマット:Mp3
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ミツキ・ミヤワキ プロフィール
“ミツキ・ミヤワキ(Mitsuki Laycock-Miyawaki、1990年9月27日生まれ)は、日系アメリカ人のシンガーソングライターである。ミツキは、パーチェス・カレッジの音楽院で学びながら、最初の2枚のアルバム『Lush』(2012年)と『Retired from Sad, New Career in Business』(2013年)を自主リリースした。卒業後、Double Double Whammyから3枚目のスタジオ・アルバム『Bury Me at Makeout Creek』(2014年)をリリースした。その後、2015年にDead Oceansと契約し、『Puberty 2』(2016)、『Be the Cowboy』(2018)、『Laurel Hell』(2022)をリリースし、絶賛を浴びる。ガーディアン紙は彼女をアメリカにおける“最高の若手ソングライター”と評している。”
ミツキ・ミヤワキ代表曲(Youtube)
- ミツキ・ミヤワキ(Mitski Miyawaki) – The Only Heartbreaker (Official Video)
- ミツキ・ミヤワキ(Mitski Miyawaki) – Love Me More (Official Video)
- ミツキ・ミヤワキ(Mitski Miyawaki) – Heat Lightning (Official Lyric Video)
・Mitskiから影響を受けたバンド、Wednesday(ウェンズデイ)
ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
BELONG Mediaのライター/翻訳。
高校卒業後18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、大学ではインターナショナルビジネスを専攻。
13歳よりギター、ドラム、ベースを始める。
関西を拠点に活動するサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。
2017年10月、全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をDead Funny Recordsよりリリース。
2021年2月、J-WAVEのSONAR MUSICへゲスト出演。
普段はサイケデリック、ソウル、ロカビリーやカントリーを愛聴。趣味は写真撮影、ファッション、映画鑑賞。
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