最終更新: 2025年2月6日
オーストラリア・ブリスベンの郊外で、斬新な音楽実験が形を成しつつある。
Matt Hsu’s Obscure Orchestra(マット・シュー・オブスキュア・オーケストラ)は言うなれば、ジョン・レノンが「Imagine」で思い描いたような音楽の理想郷である。
25人編成のMatt Hsu’s Obscure Orchestraは、オーケストラアレンジとパンク精神を混ぜ合わせ、従来のジャンルや音楽をあり方、そのどれもを超えていこうとしている。
指揮をするのは、自身の音楽的な“平凡さ”を強みに変えた台湾系オーストラリア人のマルチインストゥルメンタリスト、マット・シュー(Matt Hsu)。
現在、彼のオーケストラは真に包括的なアート活動の力を体現し、ノンバイナリー、トランスジェンダー、先住民、難民コミュニティなど、多様な背景を持つアーティストたちを結集させ、音楽を通じた“歓びある抵抗”を生み出している。
彼らは新作アルバム『Forest Party』と『Noodle』を同時リリースし、マットは平均的なトランペット奏者から型破りなオーケストラの革新者となるまでの道のりを語ってくれた。
とはいえ彼らの音楽はとっつきにくいどころか、ものすごく人懐っこい音楽であり、いうなれば真に“バリアフリー・バラエティ(バリバラ)”な存在だと言って良い。
そんなMatt Hsu’s Obscure Orchestraについて、今回は、アリアとプニポンによる、一風変わった音楽コラムで紹介していく。
そして、最後に言わせて欲しい。彼らの存在は、2025年の音楽シーンや社会において、最も必要とされていながら、同時になかなかアクセスするのが難しいアーティストでもある。
だからこそ、彼らの存在はかけがえがないし、最も聴かれるべき音楽の一つであると確信している。
この音楽がオーストラリアからアジア、欧米、全世界に届いて欲しいと願ってやまない。(テキスト:Tomohiro Yabe)
テキスト:アリア・ソムナンブラ、プニポン 使用ツール:Chat GPT日本語、Gemini 編集・校正:Tomohiro Yabe(編集長)
キャラクター紹介
アリア:レンジタウンノートへようこそ!私たちのコラムを読んでくださっているみなさん、今日も温かい目で見守ってくれて、ありがとうございます!
♪レンジタウン・ノートのジングルが流れる♪
私、アリア・ソムナンブラと、研究室の電子レンジに住み着いている不思議な生命体プニポンが、インディーミュージックの素晴らしさをお届けしていきます。
今回は特別な記事になりそうです。オーストラリアから、とても興味深いアーティストをご紹介しますね。
その前に、まずは私たちのことを少しだけ知っていただこうと思います。
普段は真面目に(?)音楽について語っているのですが、今日もちょっとだけ息抜きも交えながら…。

プニポン、憧れのオーストラリア

さあ、第7回目の“レンジタウン・ノート”では、オーストラリア出身のアーティスト、Matt Hsu’s Obscure Orchestraを取り上げます。
彼らについて、BELONGの姉妹サイトのA-indieで掲載された英語のインタビューををもとに、私とプニポンで紹介していきます。
それでは、さっそく本編をお楽しみください!
Matt Hsu’s Obscure Orchestraとは

“反人種差別的オーケストラル・パンクアンサンブルを始めるきっかけは、20代の頃にThe Mouldy Loversという、“正しい方法”で楽器を学んでいない若者たちのフォーク・パンクバンドに参加したことがきっかけなんだ。即興演奏や試行錯誤、笑いと友情を通じて音楽を作っていく仲間たちと一緒に、好きな音が聴けるまでDIYで作曲を重ねていく過程がとても楽しかった。(中略)“下手でも構わない”という自由、世界中の音楽を吸収すること、パンクバンドでのコミュニティ作り、市民的不服従と活動主義の重要性が、今日のMatt Hsu’s Obscure Orchestraの基礎となり、社会的意識を持つアーティストと友人たちのコミュニティとなったんだ。(中略)(オーケストラのメンバーは)友達グループが形成されるのと同じように、自然な形で集まったんだ!一緒に時間を過ごすのが楽しい人に出会い、その人が信頼する他の人を紹介してくれて、気づけば20人以上になっていたんだ!オーケストラの多様性は意図的だったわけではないんだけど、無意識でもないんだ。つまり、僕が育つ中で、白人男性のギタリストばかりのバンドを見続けてきて、その文化的な画一性が非常に違和感を覚え、“オルタナティブ/インディー音楽の場には、この種の人しか歓迎されない”というメッセージを感じてね。これは、クラシックオーケストラが特定の演奏者とヨーロッパ中心の音楽内容を優遇する傾向があるのと似ていると思う。僕は疎外感を強く経験して育ったから、同じような経験を持つ人々に本能的に共感するんだと思う。だから、そのようなコミュニティが自然とObscure Orchestraに集まり、加入してくれたんだと思う。”
Matt Hsu’s Obscure Orchestraの音楽性について

“プレスリリースではあなたの音楽を“まるでジブリ映画が命を吹き込まれたよう”と表現していますが、このイメージについて詳しく説明していただけますか?
マット・シュー:4歳の頃の最も古い記憶をたどると、久石譲さんの音楽に魅了されていたんだと思う。トトロを観ていた幼い頃の記憶があってね。ジブリ作品にはすべて、日常の中に垣間見える魔法のような感覚が含まれていると思う。もし現代の世界を舞台にしたジブリ映画があって、インターネットの寄せ集めのような性質や、ヒップホップの影響、商業主義の過剰さなどが色濃く存在するものがあるとしたら、そのサウンドトラックは、おそらくこれらのアルバム(『Forest Party』と『Noodle』)に少し似ているかもしれないね。”
Matt Hsu’s Obscure Orchestraのルーツ
“ICHI『Maru』
このやや知られていないイギリス在住の日本人ミュージシャンは、僕がObscure Orchestraを始めた年のWoodfordフォークフェスティバルで、僕の心を完全に奪ってしまったんだ。パフォーマンスアート、オブジェクトサウンドプレイ、音楽ライブが融合したような演奏でね。彼とパートナーのレイチェル・ダッドのパフォーマンスを見て、“音楽は何でもありなんだ”と気づかされ、ソロ音楽を始める大きな励みとなったよ。椎名林檎/東京事変 — 1999-2006年の作品群
椎名林檎のすべての作品が好きなんだけど、特にこの7年間は、毎年僕の大好きなアルバムを作り続けてくれたんだ。友人たちに椎名林檎を説明するのに苦労したんだけど、“もしビョークがエレクトロニカではなく、ロックとジャズの方向に進化していったとしたら・・・”が僕の最善の説明。ジャンルや期待に関係なく、自分が興奮する音楽を作る彼女の大胆さは、大きな影響を与えてくれたよ。Buena Vista Social Club『Buena Vista Social Club』
これは10歳頃に意識的に取り組んだ初めての非英語の音楽だったね。父が僕の子供時代を通じてこのアルバムを流していたので親近感があったんだけど、同時に“なぜラジオで流れる音楽とは全然違うんだろう?”という気づきがあり、その後キューバ文化について学ぶきっかけとなったんだ。トクマルシューゴ『Port Entropy and In Focus?』
誰かが僕の初期の音楽実験を彼の音楽に例えたことで、初めてトクマルシューゴを知ったんだ。それ以来、聴き続けているよ。まるでウォーリーを探せのイラストを探検しているかのような、喜びに満ち、爆発的で細部まで作り込まれた音楽だと思う。大橋トリオ『ohashiTrio collaboration best -off White-』
僕は大橋トリオの大ファンなんだ。落ち着いた態度、日常的でありながら心地よい声、そして彼が作る素晴らしいジャズポップは、僕の心拍数を30bpm下げてくれるんだ。”
『Forest Party』と『Noodle』
“パートナーと2月中旬に赤ちゃんを迎える予定だから、完全に子育てに専念する前に“すべての音楽を出し切らなければ!”という思いがあったんだ。制作に向けて、アートや音楽に関する仕事を長くしていて、音楽制作の時間が取れない状況だったから、掛け持ちしていた5つの仕事のうち2つを辞めて、創作に没頭できる時間を作ったよ。当初は1枚のアルバムに足りる曲を作るつもりだったんだけど、気がついたら2枚分の曲ができていて、どれも気に入っているものばかりだったんだ。”
““forest party”という言葉が喚起するイメージが大好きなんだ。まるでツリーハウスのコミュニティのように、住人たちがお互いを気遣い、一緒に物を作り上げる。それはObscure Orchestraを理想化したような姿だと思う。これらの楽器、音、声を重ねていく中に、独特の豊かさがあると思うんだ。”
“麺類は僕の大好物で、幸せには欠かせないものだよ!でも、“noodle”には、アイデアが生まれる“頭脳”という意味や、楽器で“即興演奏する”という意味もあるんだ。このタイトルは、手作り感があり、奇想天外でありながら非常に個人的なアルバムの雰囲気を暗示していると思うよ。”
日本への愛着について

“日本中を旅をして演奏することができたら素晴らしいね!特に日本の田舎に深い愛着があるんだ!15歳の時、福岡の友人、ヒロシの家族と一緒に暮らしていて、木村カエラがテレビで音楽活動を始めたばかりの頃を見ていた温かい思い出があるよ。それ以来ずっと日本のテレビ番組を見続けていてね。安藤サクラさんとバカリズムさん出演の『ブラッシュアップライフ』や、『鉄オタ道子、2万キロ』、『ちょこっと京都に住んでみた』をとても楽しく見たんだ。そして是枝裕和監督の作品はすべて大好き。”
Matt Hsu’s Obscure Orchestraリリース情報
アルバム『Forest Party』

Release Date:February 1, 2025
bandcamp
アルバム『Noodle』

Release Date:February 1, 2025
bandcamp
アーティスト関連情報
これまでのレンジタウン・ノート
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ライター:Tomohiro Yabe(yabori)

BELONG Media/A-indieの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻
これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。
過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。
それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行。
現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。
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Twitter:@boriboriyabori




















