最終更新: 2015年5月31日
タイトルの言葉は『STUDIO VOICE』vol.406で出戸学が大阪のgoatというインスト・バンドの音楽性を指して語ったものだ。これはそのままOGRE YOU ASSHOLEにも当てはまる。様々な時代、民族の音楽を取り入れ彼らにしか鳴らせないロックを生み出し続けている。“宇宙人にすら聴かせられるというか、意味とか全部取っ払われていて、純粋に音とリズムだけで聴いていて気持ちいい”と出戸は続けているが、本作の1曲目と9曲目に違ったヴァージョンで収録された「ROPE」を聴いて全く同じことを感じた。
去る2015年5月22日名古屋ボトムラインで「ROPE long ver.」の演奏中に、出戸が汗を拭い天井を見上げた瞬間、夏の野山で満天の星空を見上げる彼の姿が見えた気がした。どんなにアヴァンギャルドな演奏を繰り広げていても彼らの魂は故郷長野の大自然にあるのかもしれない。彼らは自然と共生した、文化の起源としての音楽に近づいていこうとしている。ライヴ録音という方法からして自然発生的、プリミティヴだ。
あらゆる自然の営みは繰り返し。巡る四季、生まれては引き継がれる生命。本作に収録された演奏を語るにあたっても“反復”は重要なキーワードだ。メビウスの輪のようにねじれ表と裏が反転して永久に繰り返しどこにも辿り着かないのか、DNAのらせん構造のように繰り返す歳月のなかで少しずつ進化していくのか。彼らの“反復”はどちらだろう。
モデスト・マウスやビルト・トゥ・スピルのようなUSインディーに影響を受け、ニルヴァーナ・ミーツ・ジョイ・ディヴィジョンとも称された彼らは、しかし2011年の『homely』から始まる3部作で80年代のAOR、ミニマル・ファンク、70年代のプログレッシヴ・ロックやサイケデリック・ロック、ヨーロッパからラテン・アメリカの音楽まで大胆に取り入れ出す。メドレー構成で収録された「ムダがないって素晴らしい」と「フェンスのある家」に特に顕著だが、近年の彼らはプログレの中でも特にCANを始めとするクラウトロック、そしてラテン音楽の中でも特にカリプソを想起させるビートを血肉化していっているようだ。
自分たちの好みに従って自然に選んだ結果だろうが、どちらも黒人音楽とヨーロッパの音楽が侵略、移住の繰り返しをへて混ざり合った“反復”を特徴とする音楽スタイルだ。同じリズムを繰り返すのは言語が違う者同士のコミュニケーション手段として発展したからでもあるかもしれない。ここで冒頭の発言につながるのだ。OGRE YOU ASSHOLEの音楽が生み出す“反復”は音とリズムだけで気持ちがいい。メビウスの輪ではなくDNAのらせん構造のようなうねりとなって広がっていき、あらゆる文化、時代を超え宇宙にさえ届くはず。
◆関連記事◆
【interview前半】OGRE YOU ASSHOLE『ペーパークラフト』
【interview後半】OGRE YOU ASSHOLE『ペーパークラフト』
【Review】OGRE YOU ASSHOLE – ペーパークラフト
【Writer】Toyokazu Mori (@toyokazu_mori)
今までのレビューはこちら