最終更新: 2021年3月22日

Wolf Alice(ウルフ・アリス)のアルバムには特別なコンセプトもなければ一貫したテーマもない。

Wolf Aliceのフロントウーマン、エリー・ロウゼルはそう断言する。そんな彼らが作ったデビューアルバム『My Love Is Cool』とはどのようなアルバムなのだろうか。

Wolf Aliceインタビュー


Wolf Alice:エリー・ロウゼル(Vo./Gt.) インタビュー:桃井かおる子 翻訳:木ノ下トモ

Wolf Alice結成のきっかけ

-メンバ-の皆さんがどのようにして出会い、どのような経緯でバンドが結成されたのか詳しく教えて下さい。
エリー:まずジョフと私が、二人とも人前で演奏することを始めたいと思っていた時期に、インターネットを通じて出会ったの。お互いのデモを交換して、それからロンドン北部周辺のオープンマイク・ナイト(飛び入り参加可能なステージ)にでて演奏するようになって。でも、だんだん飽き飽きしてきて、もっと激しい音楽をしようって決めたの。それから、友達の一人がジョエルを紹介してくれて、私たちのバンドでドラムを叩いてくれるようになったのよ。ベースはサディーって子が弾いていたんだけど、彼女は看護師になったから、私たちのデモをレコーディングしてくれてた、テオにベースを弾いてもらうことにしたの。

Wolf Alice(バンド名)の由来

-Wolf Aliceというバンド名はアンジェラ・カ-タ-という作家の小説から由来しているそうですが、数ある彼女の作品の中からなぜこの作品をバンド名にしたのですか?
その二つの言葉の並びが好きだったから。私はアンジェラ・カーターの暗くて屈折した世界観が好き。その感じがちょうど私たちが始めようとしていることにぴったりだと思ったの。

-『My Love Is Cool』の収録曲の歌詞は、情景描写の流れが美しいものやタイトルと曲そのものにギャップのあるものなど様々だったと思います。歌詞を書く時も小説からヒントを得ることがあるのでしょうか?
たくさんではないけど、たまにあるわ。タイトルに関しては、私たちって、ほんとにぎりぎりまで決めないことが多いの。だから、デモのときのままってことも多いのよ。

-『My Love Is Cool』の収録曲はストレ-トなロックナンバ-からゆったりとした曲まで、曲調の振れ幅が非常に広かったと思います。これだけユニ-クに富んだアルバムを作るのは難しいと思いますが、今作の制作にあたり困難だと感じた状況やエピソ-ドはありますか?
結局、いったんスタジオに入ってからは、制作中に苦労したことはなかったわ。大変だったのは、スタジオに入る前。ふさわしいタイミング、ふさわしい人材、ふさわしい場所、ふさわしい曲達。それを見つけるのに苦労した。でもスタジオに入ってからは、流れるように事がすすんでいって。曲のジャンルに関していえば、私たちがつくる曲がどんな方向にすすんでいこうと、その曲が変化していくのをとめなかったわ。ポップなバラードになろうが、ヘビーなロックになろうが、ね。

-既にEPやシングルをいくつかリリ-スされていますが、『My Love Is Cool』の収録曲の中で、今までにないバンドの新しい一面を表現できたと感じられる曲はありますか?また、その曲はそれまでのWolf Aliceとどのように違うのでしょうか?
「Turn to Dust」はこれまで以上に私たちの実験的な部分を打ち出した曲だと思う。「Silk」と「Freazy」も、今まで以上にポップなところが全面に出てるかな。

-『My Love Is Cool』はエリ-がボ-カルの曲の他に、ジョフがボ-カルの曲もあります(ジョフでなかったらごめんなさい)。Wolf Aliceは、いつもどのようにして曲を作っているのですか?
それね、実はジョエルなの。私たち、毎回あまり決まったやり方で曲を作ることがなくて。たとえば、誰かが家で作ったデモをもってきて、みんなでそれを聴いてちょっとずつ手を加えていくようなやり方をするときもあるし。そう、ジョエルが歌ってる「Swallowtail」はそうやって作ったの。彼はその曲をポップパンク調につくってきたんだけど、もし彼がテンポを下げるならもっといいサウンドになりそうだと思って、歌詞にもゆとりをもたせようって考えたの。あとは、リハーサルルームでいきなり演奏して、考えを出し合ったりする時もあるわ。

-Wolf Aliceの特徴の一つに、エリ-の歌声が挙げられると思います。のびやかでしっとりとした声や少女のようなかわいらしい声など様々な声で歌われていますが、ボイストレ-ニングなど、何か特別なことをされているのでしょうか?また、声を保つために、日頃から何か工夫していることなどもあるのでしょうか?
私は歌のレッスンって一度も受けたことがなくて。ただ、子どもの頃はずっと聖歌隊に入っていたの。人の歌を歌うことって、色んなスタイルで自分の声をだせるようになるためにとっても役に立つと思う。でも一番大事なのは、自分の声がどんな風にも変化できる楽器だと思って、おもいきって声を使うこと。だけど私ね、本当にこつとかウォーミング・アップとか全然知らないから、たぶん声をいい状態に保つ方法をきちんと知っておいた方がいいのよね。

-Wolf Aliceの楽曲のPVは、どれもスト-リ-に工夫があって展開も非常におもしろかったです!PVの内容や演出は皆さんで考えているのでしょうか?
そう!私たちいつもPVのアイデアはどんどんでてくるの!それから、でてきたアイデアを誰かに監督してもらって撮影してもらうのよ。もし時間と忍耐力さえあればだけど、自分のPVを作るときに自分が関わることはとっても楽しいことよ。自分を間抜けな感じに演出してみたり、自分を見て笑ったりするのはいい機会でもあると思うの。

My Love Is Cool

-アルバムタイトルになっている『My Love Is Cool』には、どのような意味が込められているのでしょうか?
私たちのアルバムには特別なコンセプトもなければ一貫したテーマもないの。だから、ピタッとはまるタイトルをずっと探し続けていて。その中で『My Love Is Cool』が候補にあがったの。『My Love Is Cool』は私たちのある歌の歌詞からとったものなんだけど。いいと思ったタイトルはそれだけだったし、頭の中に残ったの。“Love”と“Cool”っていう二つの大きな概念をひとつの感情で表現する、その感じがとてもいいと思って。それに、私たちは色んな人がそれぞれに違う捉え方ができるものを作りたいと思っているの。

-アルバムタイトルもそうですが、収録曲のタイトルも「You’re a Germ(あなたは細菌) 」など、大胆で皮肉めいたタイトルが多いと思います。楽曲のタイトルはいつもどのようにして付けているのですか?
私ね、誰かのことを細菌って呼ぶのはすごく侮辱的なことだとつねづね思っていて。だから「You’re a Germ」は実際の歌よりも先にタイトルを書いたのよ。「Giant Peach」は最後の最後まで決まらなかった。ずっと“home”って言葉を別の何かで表現したいと考えていて。それで思いついたのが、ロアルド・ダールの絵本の中にでてくるジェイムスの桃のお家だったの。「Silk」は何か壮大で、美しく、こわれやすいものをタイトルにしたくて。「Your Loves Whore」ってタイトルは“あなたがいないと駄目なの”ってことを言い換えたのよ。

Wolf Aliceのルーツ

-Wolf Aliceが影響を受けたア-ティストに、キングス・オブ・レオンやピクシ-ズなど、主にアメリカのバンド名を挙げられています。本国であるイギリスのア-ティストでなく、なぜアメリカのバンドから影響を受けているのでしょうか?
メンバー全員の意見としては言えないけれど、確かにその両方のバンドからたくさん影響を受けていると思うわ。そう言われてみると、私が好きなバンドって、ほとんどアメリカのバンドね。でも、そんなの理由なんてわからないわ!

PJ Harvey

-イギリスのア-ティストで影響を受けているとすれば、それは誰ですか?その人からどのような影響を受けていると思いますか?
PJ Harveyが好き。彼女はシンプルなものを作るけど、それを面白く聴かせる方法を知ってるから。彼女のアルバムの『White Chalk』はとても素晴らしいと思う。収録曲のほとんどが3分以下の曲で、音も少なくて単純なつくりの音楽ばかりなのに、そのアルバムからは知性が感じられるし、心を深く揺さぶるの。

-Wolf Aliceのル-ツとなっているアルバムを3つ教えて下さい。そのアルバムについてのエピソ-ドも教えて下さい。

Nirvanaの『Nevermind』


私たちみんな別々のものに夢中だから、Wolf Aliceのルーツって言われると分からないな。でも自分のことに限っていえば、ひとつはNirvanaの『Nevermind』。私はそのアルバムの歪んだコードがひたすら好き。そこにある音楽が出す深い悲しみや強い感情も。それでいて、とてもパワーに溢れていてキャッチーでしょ。このアルバムに出会ってから私は、重くひずんだ音を愛するようになったの。

The Moldy Peaches『The Moldy Peaches』


それから、The Moldy Peachesの『The Moldy Peaches』かな。そのアルバムはとてもシンプルなのに、しっかりロックンロールしてる。彼らは私が初めてバンドをしたいと思ったきっかけのバンドなの。

Kings of Leon『Aha Shake Heartbreak』


最後の一枚は、Kings of Leonの『Aha Shake Heartbreak』。理由は、アルバムに入っているすべての曲が全く違う雰囲気だから。彼は信じられないほど素晴らしいヴォーカリストで、作詞家だと思う。

-もうすぐで夏フェスのシ-ズンで、皆さんも様々なフェスに出演されると思うのですが、「この人のステ-ジだけはどうしても観たい!」というア-ティストはいますか?なぜ、その人のパフォ-マンスが観たいのでしょうか?
私が観たいのはRun The Jewels! 私、彼らの新しいアルバムがとっても好きなの。あと、あまりラップ・ミュージックのライブって見たことがないから、絶対に面白い体験になると思う。だから、Kanye Westをグラストンベリーで観るのもすごく楽しみ!彼のステージもきっと素晴らしいわ。

-サマ-ソニックで日本に初めて来日されますね。日本で初めてのパフォ-マンスということで、意気込みをお願いします!日本のファンへメッセ-ジもお願いします!!
日本はね、私が演奏しに行きたいと思う場所リストの中で、ここ数年ずうっとナンバー1だったの!だからこの夏、サマーソニックで演奏できることが、信じられないくらい光栄です。その夢が叶って、サマーソニックに来る人たちが私たちのパフォーマンスを楽しんでくれるといいな。そして、また日本に戻って来られるように、私たちを呼んでね!

リリース

1stアルバム『My Love Is Cool』

発売日: 2015/6/21
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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来日公演

SUMMER SONIC 2015
2015年8月15日(土)・16日(日)
東京会場:QVCマリンフィールド&幕張メッセ
大阪会場:舞洲サマーソニック大阪特設会場

ライター:桃井 かおる子

スマホ、SNSはやっておらず、ケータイはガラケーという生粋のアナログ派。

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