最終更新: 2023年3月25日

ザ・ストロークス(The Strokes)が7年ぶりとなる新作アルバム『The New Abnormal』をリリースした。

そして、新曲「At The Door」と「Bad Decisions」のMVが公開されている。

ストロークスを知るものは上記2曲視聴し、戸惑ってしまったのではないだろうか?

これまでのバンド像を打ち砕く「At The Door」と従来の延長線上にある「Bad Decisions」。

今こうして記事を書いている私もそうだ。

正直、今作がどんなアルバムになるのか予想する以前に先行曲をどう分別していいのかわからない。

そこで改めてストロークスというバンドが一体何者で、今までどんなアルバムをリリースしてきたのかをおさらいする。

そうすることで、この謎を少しでも解き明かしていきたいと思う。

また、ストロークスはフジロック2023のヘッドライナーとして来日が決定している。(2023年3月25日追記)

(※『The New Abnormal』レビュー記事後編追加 2020年4月19日追記)

ザ・ストロークス(The Strokes)とは

The Strokes_The New Abnormal
2000年代に巻き起こったムーブメント“ガレージロック・リバイバル”における中心バンドのひとつザ・ストロークス(The Strokes)。

今と同じくヒップ・ホップとR&Bが活躍する時代にThe White StripesやThe Libertinesともに死にかけであったロックを救った功績は計り知れない。

そんな彼らはNYで結成されたロック・バンド。

メンバー

メンバーはジュリアン・カサブランカス(Vo.)、ニック・ヴァレンシ(Gt.)、アルバート・ハモンドJr. (Gt.)、ニコライ・フレイチュア(Ba.)、ファブリジオ・モレッティ(Dr.)の5人からなる。

2002年には日本初来日公演を果たし、2003年と2011年にはサマソニに2006年にはフジロックへ出演。

どちらのフェスにおいてもヘッドライナーをつとめた。

デビューアルバム『Is This It』

the strokes is this it
ザ・ストロークス(The Strokes)の音楽を語るうえで欠かすことができない『Is This It』。

UKの名門レーベル“ラフトレード”と契約を交わしたバンドの記念すべきデビューアルバムだ。

同作品は2001年リリースで、それから5年後にミリオンセールスを達成。

先述の“ガレージロック・リバイバル”のはじまりを告げるアルバムと位置付けられている。

ガツガツと攻撃的な印象が強かったガレージロックを再解釈し、親しみやすい旋律をあわせることにより耳触りの良さを加えた。

「知ってたか? ガレージロックってこんなに楽しいんだぜ?」というメッセージを感じることができる。

5thアルバム『Comedown Machine』

the strokes Comedown Machine
続いて2013年の5thアルバム『Comedown Machine』。ザ・ストロークス(The Strokes)のアルバム作品としてはこれが直近のものである。

まず耳をひくのは、a-haの「Take On Me」か?とつっこみを入れたくなる「One Way Trigger」。シンセ全開のニューウェーブサウンドだ。

そしてアンビエントとチルウェイブの狭間でゆらめく妖しい「80’s Comedown Machine」。

全体的にエレクトロニックが幅を利かせた作品ではあるもののしっかりとロックンロールなギターリフも忘れていないのが何とも愛らしい。

新作アルバム『The New Abnormal』

The New Abnormal
ザ・ストロークス(The Strokes)のアルバムにおいて対極にある2作を取り上げたのには理由がある。まずは以下を読んでみて欲しい。

前作からの流れを汲むと完全電子化、バンドサウンドからの脱却を図った「At The Door」は必然であったのかもしれない。

何度聴いても新次元の広がりを魅せた楽曲だ。それでもサウンド、歌、歌詞。どこを切り取っても悲哀に満ちた曲から“終幕”の2文字がよぎってしまう。

そして「At The Door」について、次回作について考えるうえで困窮を極める要因となった「Bad Decisions」についてだ。

まずはMVを視聴して観て欲しい。デビュー当時の彼らがテレビ画面に映し出される。

それから1stアルバムで聴かせたように、いきいきとしたガレージロックを披露する。

復活を示すものなのか、それとも懐古に浸っているのか。曲名も和訳すると“悪い決断”だ。

新機軸を打ち出した曲と原点回帰を図った曲、ふたつを先行曲に持ってきた。

楽曲のモードからこの2曲はそれぞれ『Is This It』と『Comedown Machine』のような位置づけだ。

もしかすると彼らは新旧どちらの曲もひとつの作品に詰め込むことで、真価を示そうとしているのかもしれない。

それが今回、デビューアルバムと1つ前のアルバムを取り上げた理由だ。

「どちらのストロークスが好きか?」を問い掛けられているように思えてしょうがない。

しかし、残念ながらその答えは4月まで持ち越しだ。

ひとつだけ言えることは、先行曲の選曲は間違っていなかった。何故なら、今から新作アルバムを聴きたくてしょうがなくなってしまっているからだ。

ストロークスの真骨頂

The Strokes(2020)
先に公開した記事では、先行曲の「At The Door」と「Bad Decisions」を基に、ザ・ストロークス(The Strokes)の新作アルバム『The New Abnormal』がどのような作品になるのかを考察した。

その結果“新機軸”と“原点回帰”どちらも示唆した内容に戸惑い、バンドの行く末を案じた――。

しかし、先に結論から言えば、完成された新譜『The New Abnormal』を聴いてみると、嬉しいことにこの不安は杞憂に終わった。

ストロークスがこれまで鳴らしてきたガレージロックが正しかったことを再度証明した作品だったからだ。

そこで改めて、『The New Abnormal』がどのような作品なのか書き記させてもらう。その前にリリース前後に起きたトピックを。

8月に開催を控える“フジロック2020”“フジロック2023”にて、ストロークスの来日が決定した。ヘッドライナーとして、約17年ぶりのフジロック出演である。

次にアルバム収録曲である「Brooklyn Bridge To Chorus」の先行公開。レトロなSFを想像させるシンセが小気味よい、80年代ニュー・ウェイヴナンバーだ。

そのサウンドや歌詞、YouTubeでのサムネ画像が車であること、そして「Brooklyn Bridge To Chorus」というタイトル。

2019年に亡くなったThe Carsのリードヴォーカル、リック・オケイセックを意識したものであることは間違いなさそうだ。

彼が亡くなったとされるのは、ニューヨークのマンハッタン東19番街にある自宅アパートで、ブルックリン区に橋がかかっている場所である。

ザ・ストロークス(The Strokes) – Brooklyn Bridge To Chorus

最後にメンバー5人によるビデオ・チャット“5guys talking about things they know nothing about”がYouTube公式チャンネルにて公開されたことも忘れてはならない。

公開されているエピソード1と2では、プライベートな会話や先日亡くなったビル・ウィザースについて語られているほか、セルフアルバムレビューも行っている。

コロナで自宅待機を余儀なくされている状況で、ファンに向けて自分たちができることを行いながらも、メンバー同士が仲睦まじい姿も確認することができる。

ザ・ストロークス(The Strokes) – 5guys talking about things they know nothing about – Episode 1

『The New Abnormal』の真価

これらを踏まえて、ザ・ストロークス(The Strokes)の新作アルバム『The New Abnormal』について。

7年ぶりとなるアルバムは、端的に言うとストロークスの代名詞であるガレージロックサウンドをとても心地よく聴くことができる。

単体で聴くと対極にあるかのように聴こえた「At The Door」と「Bad Decisions」だってそうだ。

「At The Door」

「At The Door」で鳴らした感傷的なシンセ音も所々では、歪みの効いたギター音に似たような響きを奏でる。そのためストロークス固有の音楽性と乖離することなく、繋ぎ止めている。

「Bad Decisions」

「Bad Decisions」は、原点回帰的なサウンドだけが注目点じゃない。

ニックとアルバートのギターが絶妙な距離感で鳴らされるハーモニー。2本あるからこそ、互いの個性が活きてくる仕掛けだ。

それらだけでなくサイケやニューウェイヴ、ブルースのエッセンスを取り入れた他の楽曲でもやはり感じられるのは心地よさ。

現代的なアプローチがなく、革新的な試みはなくとも、どこをとっても快適で諧調に満ちている。

「The Adults Are Talking」

中でもそれが凝縮されているのが「The Adults Are Talking」。

緊張感のある律動的なビートに乗りながら、各パートが互いを引き立たせるために音を紡いでいく。

決して個を殺すことなく結晶化した、バンドの結束力が感じられる1曲になっている。

某スナック菓子やカップ麺は定番を守るため、時代に合わせて少しずつ味を変えている。

そのようにストロークスも現代でガレージロックサウンドが違和感なく気持ちよく聴かれるため、自分たちの持っているものだけで、僅かにニュアンスを変えてお届けしたのが、今回の『The New Abnormal』だ。

もし今作を“新機軸”と“原点回帰”どちらなのか?と問われたのならば後者だと答えるだろう。ただし、ただの回帰ではない。再出発の作品でもある。

かつて『Is This It』にて“ガレージロック・リバイバル”のはじまりを告げように、『The New Abnormal』でもう1度リバイバルさせたのだ。(2020年4月18日更新)

グラミー最優秀ロックアルバム受賞

グラミー賞2021
グラミー賞2021の候補が発表され、ザ・ストロークス(The Strokes)の新作アルバム『The New Abnormal』が最優秀ロック・アルバムにノミネートしている。

グラミー賞の授賞式は本来、2021年1月31日に行われる予定であったが、同年3月15日に延期された。

そこでストロークスは悲願にして初のグラミー賞(最優秀ロックアルバム)を受賞した。(2021年3月15日 BELONG編集部追記)

アルバムリリース

6thアルバム『The New Abnormal』

The New Abnormal
The New Abnormal

posted with amachazl at 2020.04.18
ザ・ストロークス
Cult Records/RCA Records (2020-04-10)

フォーマット:MP3ダウンロード
収録曲:
01. The Adults Are Talking
02.Selfless
03.Brooklyn Bridge To Chorus
04.Bad Decisions
05.Eternal Summer
06.At The Door
07.Why Are Sunday’s So Depressing
08.Not The Same Anymore
09.Ode To The Mets
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The New Abnormal [12 inch Analog]
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Rca (2020-04-10)
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フォーマット:LP Record
収録曲:
A面
01. The Adults Are Talking
02.Selfless
03.Brooklyn Bridge To Chorus
04.Bad Decisions
05.Eternal Summer

B面
01. At The Door
02. Why Are Sunday’s So Depressing
03. Not The Same Anymore
04. Ode To The Mets
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5thアルバム『Comedown Machine』

Comedown Machine [Analog]
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Strokes
RCA (2013-03-26)
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収録曲:
01. Tap Out
02. All The Time
03. One Way Trigger
04. Welcome To Japan
05. 80’s Comedown Machine
06. 50/50
07. Slow Animals
08. Partners In Crime
09. Chances
10. Happy Ending
11. Call It Fate, Call It Karma
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4thアルバム『Angles』

Angles [12 inch Analog]
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Strokes
RCA (2011-03-22)
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収録曲:
01.Machu Picchu
02.Under Cover of Darkness
03.Two Kinds of Happiness
04.You’re So Right
05.Taken For a Fool
06.Games
07.Call Me Back
08.Gratisfaction
09.Metabolism
10.Life is Simple In the Moonlight
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3rdアルバム『First Impressions of Earth』

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Strokes
RCA (2020-02-07)
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収録曲:
01.You Only Live Once
02.Juicebox
03.Heart In A Cage
04.Razorblade
05.On The Other Side
06.Vision Of Division
07.Ask Me Anything
08.Electricityscape
09.Killing Lies
10.Fear Of Sleep
11.15 Minutes
12.Ize Of The World
13.Evening Sun
14.Red Light
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2ndアルバム『Room on Fire』

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Strokes
RCA (2020-02-07)
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収録曲:
01.What Ever Happened?
02.Reptilia
03.Automatic Stop
04.12:51
05.You Talk Way Too Much
06.Between Love & Hate
07.Meet Me in the Bathroom
08.Under Control
09.The Way It Is
10.The End Has No End
11.I Can’t Win
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1stアルバム『Is This It』

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Strokes
RCA (2020-02-07)
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収録曲:
01.Is This It
02.The Modern Age
03.Soma
04.Barely Legal
05.Someday
06.Alone, Together
07.Last Nite
08.Hard To Explain
09.New York City Cops
10.Trying Your Luck
11.Take It Or Leave It
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フジロックで来日決定

フジロック2023

ストロークスが2023年のフジロックで来日することが決定した。

本来であれば2020年のフジロックでヘッドライナーとして来日予定だったが、イベント自体が中止となり、今回改めて出演が決定した。

イベント名:フジロックフェスティバル ’23
開催日:2023年7月28日(金)・29日(土)・30日(日)
場所:新潟県湯沢町苗場スキー場
住所:新潟県南魚沼郡湯沢町三国202
チケット情報:
2次先行販売期間:2023年3月3日(金)12:00~6月1日(木)23:00 ※限定枚数発売
一般発売:6月2日(金)~
チケット価格:
2次先行予約:3日通し券 52,000円、1日券 22,000円
一般発売:3日通し券 55,000円、1日券 23,000円
注意事項:
「中学生以下」は保護者の同伴に限り入場無料。
チケット詳細は公式サイト(https://www.fujirockfestival.com/)を確認。

ザ・ストロークス(The Strokes)プロフィール

The Strokes_The New Abnormal

“1999年にニューヨークで結成したロックバンド。メンバーはアルバート・ハモンド・ジュニア(G)、ジュリアン・カサブランカス(Vo)、ファブリツィオ・モレッティ(Dr)、ニック・ヴァレンシ(G)、ニコライ・フレイチュア(B)。現在までに5枚のスタジオ・アルバムを発表し、ブリット・アワード、NMEアワードなど名立たる音楽賞を数多く受賞している。UKロックバンドのアークティック・モンキーズは彼等の影響を受けたことを公言している。2001年に<Rough Trade / RCA>から発表したデビュー・アルバム『イズ・ディス・イット』は全英2位を獲得し、英国最高峰音楽賞ブリット・アワードにおいて「最優秀インターナショナル新人賞」を受賞。またNMEアワードでは「最優秀アルバム賞」、「バンド・オブ・ザ・イヤー」、「最優秀ニュー・アクト」を授賞し、国内外を問わず瞬く間に時代の寵児となった。2002年2月に初来日公演を果たした。2003年、2作目『ルーム・オン・ファイア』(全英2位 / 全米4位)を発表。サマーソニックで再来日。2006年発表の3作目『ファースト・インプレッションズ・オブ・アース』が全英1位 / 全米4位を獲得。収録曲「Juicebox」も全英5位を獲得した。同年のフジロックにヘッドライナーとして出演。2011年、4作目『アングルズ』(全英3位 / 全米4位)を発表。2013年、5作目『カムダウン・マシン』を発表。2016年6月、メンバーのジュリアンが主宰する<Cult Records>から『フューチャー・プレゼント・パストEP』をリリース。”

引用元:ザ・ストロークス(The Strokes)プロフィール(Hostess)

ストロークス代表曲(Youtube)

  • ザ・ストロークス(The Strokes) – Someday(1stアルバム『Is This It』収録)
  • ザ・ストロークス(The Strokes) – Reptilia(2ndアルバム『Room on Fire』収録)
  • ザ・ストロークス(The Strokes) – You Only Live Once(3rdアルバム『First Impressions of Earth』収録)

ライター:滝田優樹
滝田優樹
北海道苫小牧市出身のフリーライター。音楽メディアでの編集・営業を経て、現在はレコードショップで働きながら執筆活動中。猫と映画観賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
Twitter:@takita_funky

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