最終更新: 2020年12月6日

オーストラリアはパース出身の5人組サイケデリック・バンド、Tame Impala(テーム・インパラ)の4枚目となるアルバム『The Slow Rush』が2/14にリリースされた。

シングル「Borderline」を始め、「It Might Be Time」や「Lost In Yesterday」を含む12曲は過去や未来、そして時間や人生という大きな議題をアルバムを通して表現している。

前作『Currents』と比較すると、よりダンス・ミュージックへ舵を切り、ミニマムではなく音数がとても増えた今作『The Slow Rush』。

2020年代を代表するであろうこの名作『The Slow Rush』について、もう聴いた方も、これからの方もぜひ読んでいただきたい。

『The Slow Rush』全曲紹介

The Slow Rush

「One More Year」


オープニング・トラック「One More Year」ではエレクトロ特有のフレーズがリフレインされる曲展開だが、絶妙な変拍子でリスナーを飽きさせない工夫はさすが。

「Instant Destiny」


そして前作『Currents』の名残りを感じる「Instant Destiny」へと続く。この曲は今作の中でも特にメロディーに対してのアプローチを大きく図った一曲ではないだろうか。

「Borderline」


「Borderline」はシングルで発表された形とは異なり、アルバム・バージョンとして収録されている。

歌詞の順番が入れ替わり、ボーカルもおそらく録り直したのか、他のサウンドも細かく聴き比べるとミックスが少し変化している。

「Posthumous Forgiveness」


この曲は2構成に分かれており、前半は亡くなった父への内容ということもあり、悲哀の込められたスローなサイケデリック・ロックに。

後半はリズムもガラッと変わり、前作『Currents』に通じるシンセのサウンドスケープを中心に、ケヴィン・パーカー(Vo./Gt.)の心の変化の移ろいを表現しているのではないだろうか。

「Breathe Deeper」


「Breathe Deeper」では高揚感をそそるファンキーなピアノがダンス・ミュージックを見事に演出する。

「Tomorrow’s Dust」


そしてアコースティックギターとコンガが、少し現実とは離れた異世界へ誘ってくれる「Tomorrow’s Dust」へと繋がる。

「On Track」


スローで壮大なバラード曲「On Track」はスタジアムでもリスナーを一人残さず包み込む包容力のある一曲。

「Lost In Yesterday」


そしてグルーヴィーなベースラインがとても印象的なシングルカット曲「Lost In Yesterday」。

「Is It True」


コンガとベースが主軸に展開されるダンス・チューン。ケヴィン曰く、8時間で完成させるというテーマの元に作曲されたそうだ。

そのためか、グルーヴや直感によって作られたようなシンプルさがあり、それが踊りたくなるダンス感を生みだしているのだろう。

「It Might Be Time」


歪みが加えられたドラムサウンドにこだわりのあるシングルカット曲。

曲を立体的に聴くと、この曲は特にドラムが目の前に定位されており、ケヴィンのドラムへ探究心を感じる。

「Glimmer」


このアルバムでのインタールードとしての役割を果たしている2分間のショートトラック。

クラブの雰囲気が漂い、Tame Impalaらしさには欠ける一曲。

「One More Hour」


一曲目の「One More Year」に呼応し、アルバムのラストを飾る7分の長編「One More Hour」でアルバムは幕を閉じる。

感想

Tame Impala(テーム・インパラ)の『The Slow Rush』は細やかな音作りが秀逸なのはもちろんだが、今回はメロディーよりもリズムへのこだわりを強く感じる作品に仕上がっている。

LAのフリーダムな空気、そして数々のコラボを経験しただけに、ケヴィンを取り巻くこれらの環境の変化がこのアルバムに多大なる影響を与えたのは間違いないだろう。

内容的にも人生、そして時の流れに身を委ねるような壮大な感覚を味わえる大傑作ではないだろうか。

リリース

4th アルバム『The Slow Rush』

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収録曲:
1. One More Year
2. Instant Destiny
3. Borderline
4. Posthumous Forgiveness
5. Breathe Deeper
6. Tomorrow’s Dust
7. On Track
8. Lost in Yesterday
9. Is It True
10. It Might Be Time
11. Glimmer
12. One More Hour

3rd アルバム『Currents』

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収録曲:
(LP – Currents)
A面 : 1. Let It Happen
2. Nangs
3. The Moment
B面 : 1. Yes I’m Changing
2. Eventually
3. Gossip
C面 : 1. The Less I Know The Better
2. Past Life
3. Disciples
4. ‘Cause I’m A Man
D面 : 1. Reality in Motion
2. Love/Paranoia
3. New Person, Same Old Mistakes

(12インチ)
A面 : Let It Happen (Soulwax Remix)
B面 : Reality In Motion (Gum Remix)

2nd アルバム『Lonerism』

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収録曲:
1. Be Above It
2. Endors Toi
3. Apocalypse Dreams
4. Mind Mischief
5. Music To Walk Home By
6. Why Won’t They Talk To Me?
7. Feels Like We Only Go Backwards
8. Keep On Lying
9. Elephant
10. She Just Won’t Believe Me
11. Nothing That Has Happened So Far Has Been Anything We Could Control
12. Sun’s Coming Up

1st アルバム『Innerspeaker』

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収録曲:
1. It’s Not Meant To Be
2. Desire Be Desire Go
3. Alter Ego
4. Lucidity
5. Make Up Your Mind
6. Solitude Is Bliss
7. Jeremy’s Storm
8. Expectations
9. Bold Arrow Of Time
10. Runway Houses City Clouds
11. I Don’t Really Mind

来日公演


FUJI ROCK FESTIVAL ’20
8月21日(金)22日(土)23日(日)@新潟県湯沢町 苗場スキー場
チケット:
1次先行販売(限定枚数):~4月2日(木)23:00
https://www.fujirockfestival.com/

プロフィール

Tame Impala

“Tame ImpalaはKevin Parker(ケヴィン・パーカー)である。2008年、EP『Tame Impala』をリリース後、MGMT等とのツアーを経て、2009年にはアルバム・リリース前ながらもサマーソニックに出演。2010年には待望のデビュー・アルバム『Innerspeaker』をリリースし、世界中のメディアから高評価を得ては、2012年リリースの2nd アルバム『Lonerism』ではNME年間ベスト・アルバムランキング1位を飾り、2015年リリースの『Currents』はBRIT AWARDのBest International Groupを受賞し、2作続けてグラミー賞にもノミネートされている。作詞作曲家/プロデューサーとして、Kevin Parkerは過去にTravis Scott, SZA, レディー・ガガ、マーク・ロンソン、カニエ・ウェスト、Kali Uchis, ミゲル、A$AP Rockyなどともコラボしている。

2019年3月に配信されたシングル「Patience」に続いて、ニュー・シングル「Borderline」配信後、コーチェラ、ロラパルーザ、ACL等数々の音楽フェスのヘッドライナーを務める他、全米人気TV番組Saturday Night Liveに出演し、勢力的にワールドツアーで世界中を駆け巡って来た中、遂にこの度待望の4thアルバムのリリースが発表されたのだ。”

引用元:Caroline International

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    Tame Impala – Lost in Yesterday (Live on Jimmy Kimmel Live! / 2020)

    Tame Impala – Breathe Deeper (Live on Jimmy Kimmel Live! / 2020)

    Tame Impala – The Less I Know The Better (Official Video)

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    BELONGスタッフが選ぶ、2019年のベストソング30曲(Tame Impala「Patience」選出)

    ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)

    兵庫県出身のサイケデリック・ロックバンド、Daisy JaineのVo./Gt.。アメリカ・ボストンに留学経験があり、BELONGでは翻訳を担当。サイケデリック、オルタナ、60s、ロカビリーやR&Bと幅広く聴きます。趣味はファッション、写真、映画観賞。
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    Twitter:@rio_daisyjaine

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