最終更新: 2021年12月31日

フォークロックはフォークとロックが合わさった音楽ジャンルである。

ボブ・ディランやThe Byrdsを始めとする60年代を代表するアーティストによって作りあげられた。

フォークロックとはどのようなジャンルなのかを掘り下げるとともに、海外と日本の新人フォークロックバンドを15組を厳選したのでぜひ紹介したい。

これから紹介するバンドを通して、多様性のあるフォークロックというジャンルについて知るきっかけになれば嬉しい限りだ。(2021年10月2日更新)

フォークロックとは

Big Thief
Big Thief
フォークロックは、60年代半ばに北アメリカとイギリスで誕生した音楽ジャンルの一つで、文字通りフォークとロックを組み合わせた音楽である。

フォークロックの始まりは、1965年に開かれたニューポート・フォーク・フェスティバルでの出来事。

ボブ・ディランがフォークソングの「Like A Rolling Stone」をロックバンドと共にエレキギターで歌ったことによりファンから激しく罵られた。

その後、The Byrdsがボブ・ディランの「Mr. Tambourine Man」を電気楽器でカバーしたことをきっかけにフォークロックは始まった。

現代ではフォークのナチュラルな響きはそのままに、シンセサイザーなどの電気楽器やサイケデリックの要素を加味したサイケデリック・フォークも誕生し、フォークロックの世界は今なお広がり続けている。

フォークとロックの違いと特徴

Whitney
Whitney
フォークロックはフォークやロックとどう違うのか。

特徴としてはメッセージ性の強い歌詞、各地域や民族によって異なる進化を遂げた柔軟性、そして演奏スタイルなどが挙げられる。

そこで、それら3つの特徴について詳しく説明していきたい。

メッセージ性の強い歌詞

そもそもフォークとは日本語で”民族”や”民謡”という意味がある。

それゆえ、フォークミュージックは人との関わりや社会の情勢などを歌詞に色濃く反映するメッセージ性の強いジャンルであった。

そこで民衆により届きやすい音楽へと変化する上で、ロックというジャンルの要素を織り交ぜることにより、メッセージ性と民衆性の両方を兼ね備えたフォークロックへと派生した。

地域性と民族性との繋がり

フォークロックと一口に言っても、アメリカとイギリスのスコットランドやウェールズなどを始め、ヨーロッパなどの異なる地域特有の音楽との結びつきによって、フォークロックは様々な顔を覗かせる。

地域によって使われる楽器や、歌い方のスタイル、そしてフォークとロックのどちらにより重きが置かれているなどの違いがあるが、ジャンルとしての細かい識別の定義はない。

その土地の地域性や民族性に合わせて柔軟に変化するからこそ、様々な様式のフォークが今なお存在しているのではないだろうか。

演奏スタイル

フォークロックはフォークとロックの要素が合わさったジャンルのため、それぞれの演奏スタイルが織り混ぜられている。

フォークのスタイルとして、美しいハーモニーが特徴のボーカル、アコースティックギターやバンジョー、そして各地域によってはその土地の民族楽器も使用される。

ロック要素としてはエレキギター、現代ではシンセサイザーなどの電子楽器も使われている。

演奏スタイルの柔軟性はありながらも、フォークのスタイルが根底にあるのがフォークロックの特徴である。

フォークロックの代表的なアーティスト

ボブ・ディランとThe Byrds(ザ・バーズ)抜きにフォークロックは語れない。60年代ではフォークとロックは別々のジャンルとして嗜まれていた。

しかし彼らは、”フォークソングで電子楽器を使う”という”タブー”を犯すことにより、フォークとロックを結びつけた。そこで、フォークロックを代表するその2組について紹介していきたい。

ボブ・ディラン

ボブ・ディラン
ロックの殿堂入りも果たしたユダヤ系アメリカ人SSW、ボブ・ディラン(Bob Dylan)。“ボブ”は本名であるロバートのニックネーム、また“ディラン”は詩人ディラン・トーマスから取られたもの。

「Blowin’ in the Wind」や「Like a Rolling Stone」など数々の名作を世に生み出し、グラミー賞やアカデミー賞、大統領自由勲章など数々の賞を受賞している。

さらに、2016年には歌手として初めてノーベル文学賞を受賞した。

ボブ・ディランの楽曲や生き様はThe BeatlesやJimi Hendrixからのリスペクト、そして今なお現代のアートや文化にも多大なる影響を与え続けている。

The Byrds

The Byrds(ザ・バーズ)
1964年にアメリカのロサンゼルスで結成されたフォークロックバンド、The Byrds(ザ・バーズ)。1965年に発表されたボブ・ディランのカバー曲、「Mr. Tambourine Man」でデビューを果たす。

フォークソングであった「Mr. Tambourine Man」を電子楽器でカバーしたこの曲こそがフォークロックの夜明けとなった。

The Byrdsの音楽の特徴としては、ロック特有の12弦ギターを使用した煌びやかなサウンドや美しいハーモニー、そしてフォーク譲りの温かな空気感が挙げられる。

「Eight Miles High」という曲は、世界初のサイケデリック・ソングとも言われており、フォークロックだけでなくサイケデリックのパイオニアとしても、The Byrdsは重要な存在だ。

ニール・ヤング

ニール・ヤング(Neil Young)
ニール・ヤング(Neil Young)はカナダ・トロント出身のシンガーソングライター。

Crosby, Stills, Nash & YoungやBuffalo Springfieldのメンバーとして活躍した経歴があり、1995年にはロックの殿堂入りを果たしている。

フォークロック・アルバムとして外すことのできない名作『After the Gold Rush』や『Harvest』を世に生み出した。

ロックからグランジ、R&Bにテクノと音楽的な幅広さはもちろん、障害者支援や経営難に苦しむ農家へのチャリティーイベントなどの社会問題に対して活動するなど、

音楽だけに留まらず社会的な側面においても新たな時代を切り開こうとするフロンティア精神溢れるアーティストだ。

フォークロックの新人バンド15選


現代のフォークロックは多種多様に派生している。

そこで今回は、現代のフォークロックの新人バンドであるWhitney、Big Thief、ROTH BART BARON、Loving、Sundowners、Bright Eyes、Sufjan Stevens、Bon Iver、カート・ヴァイル、Turntable Films、ゆうらん船、Summer Salt、コートニー・バーネット、フェイ・ウェブスター、フレディーマーズの15組について紹介したい。

今回紹介するバンドをまとめたSpotifyプレイリストを作成したので、そちらもチェックして欲しい。

Whitney

Whitney

アメリカはシカゴ出身のフォークロック・デュオ、Whitney(ホイットニー)。

Unknown Mortal OrchestraとSmith Westernsに以前所属していたメンバー2人によって結成された。

Whitneyと言えば、心に直接響く血の通ったアナログ・サウンドと、ボーカル兼ドラマーのジュリアン・アーリックの優しいハイトーンボイスが魅力。

あたかも自分が大自然の中にいるかのようなナチュラルなサウンドはフォークロックの醍醐味で、聴き手の心を癒してくれる。

Whitney結成の生い立ちを始め、アナログ感溢れる彼らのテイストについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせて読んでいただきたい。

発売日:2019/8/29
レーベル: Secretly Canadian
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Big Thief

Big Thief

アメリカはニューヨークの4人組フォークロック・バンド、Big Thief(ビッグ・シーフ)。

紅一点の女性ボーカル、エイドリアン・レンカーによる、感情が剥き出しにされたダイナミックなボーカルがフォークロックに独自の色彩を与える。

さらにフォークとロックのパワーバランスが見事で、フォークロックの真髄をストレートに表現しているバンドである。

そんなBig Thiefの来日情報やバンドについての詳しい記事はこちらからチェックして欲しい。

発売日:2020/4/30
レーベル: BEAT RECORDS / 4AD
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ROTH BART BARON

ROTH BART BARON

三船雅也と中原鉄也によるROTH BART BARON(ロットバルトバロン)はサマソニやフジロックに出演経験もあるフォークロック・バンド。

ROTH BART BARONがその他のフォークロック・バンドとは一線を画す要素として、サウンドへの追求心が挙げられる。

アコースティックはもちろん、エレクトロなサウンドスケープ、そして民族楽器のような名前すら想像の付かないサウンドを生み出す楽器により、フォークロックの可能性を上限なく広げている。

彼らは、それぞれの楽器のサウンドを信じきった先に見えた景色は広大であることを証明している。

そんなROTH BART BARONの最新曲「Special」についての記事はこちら。

発売日:2019/11/6
レーベル: felicity
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Sundowners

Sundowners

イギリス・リヴァプール出身のサイケデリック・フォークロックバンド、Sundowners(サンダウナーズ)。

Kasabianのツアーに参加し、さらにはグラストンベリーへの出演も果たした新人バンド。

現代の音楽シーンは古今東西、多種多様な要素が交錯しているが、Sundownersはフォークロックとサイケデリックを組み合わせたバンドである。

特に女性ダブルボーカルのパワフルなハーモニーや12弦ギターの響く高音は、60年代の音楽をそのまま現代に蘇らせている。

Sundownersについてはこちらの記事も合わせてチェックしていただきたい。

発売日:2017/4/28
レーベル: Skeleton Key Records
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Loving

Loving

カナダのサイケデリック・フォークロックバンド、Loving(ラヴィング)。

アコースティック楽器を主軸に奏でるフォークロック・バンドで、ノスタルジア溢れるレトロなサウンドがサイケデリックなのだが、ただ古いだけではないのがLovingの特徴。

というのも、ただレトロなサウンドというのはよくあるが、曲を聴いて想像する情景がコンパクトにまとまっており、まるで”箱庭”のように全てがパッケージングされているのだ。

Lovingの楽曲「Only She Knows」の魅力や、バンドについて詳しく知りたい方はこちらの記事も読んでいただきたいと思う。

発売日:2020/1/31
レーベル: Last Gang
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Bright Eyes

Bright Eyes
アメリカはネブラスカ出身のフォークロックバンド、Bright Eyes(ブライト・アイズ)。

Bright EyesはSSWのコナー・オバーストを中心に結成され、彼はPhoebe Bridgersとのプロジェクト、Better Oblivion Community Centerでも活動していた。

フォークならではの、歌を聴かせる繊細なメロディー、そしてそれを引き立てるシンプルなサウンドメイキングがBright Eyesの特徴。

最新アルバムでは、シンセや民族楽器によって空間の広がりを感じさせ、ドラマチックな展開は静と動のコントラストを強調し、曲に深みを与えている。

まさに、フォークとロックの可能性を練り込んだ、”フォークロック”がここにある。

Red Hot Chili PeppersやQueens of the Stone Ageのメンバーも参加した新作アルバム『Down in the Weeds Where the World Once Was』についてはこちらから。(2020年8月2日 更新)

発売日:2020/8/21
レーベル: DEAD OCEANS
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Sufjan Stevens

Sufjan Stevens(スフィアン・スティーヴンス)

アメリカはミシガン出身のSSW、Sufjan Stevens(スフィアン・スティーヴンス)。

アメリカへの愛、キリスト教への厚い信仰、壮大なスケール感。これらがSufjan Stevensならではのフォークロックの特色である。

フォークは地域や文化と深く根付いてきた背景があるが、そのフォークの特徴がサウンドや歌詞に色濃く反映されている。

フォークロックというジャンルを全てにおいて体現しているのがSufjan Stevensだ。

そんなSufjan Stevensの最新曲「America」の歌詞和訳と内容の考察についてはこちらから。(2020年8月2日 更新)

発売日:2020/9/25
レーベル: ASTHMATIC KITTY RECORDS
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Bon Iver

Bon Iver
Bon Iver(ボン・イヴェール)はジャスティン・ヴァーノンを中心に活動する、アメリカ出身の6人組フォークロック・バンド。

グラミー賞では、最優秀新人賞とベスト・オルタナティブ・アルバムを受賞した経歴を持つ。

牧歌的なアコースティック楽器のぬくもりに加え、ゴスペル・コーラスやシンセサイザーによる環境音楽のアプローチが加わり、Bon Iverのフォークロックはモダンな色彩を見せる。

歌詞には母国アメリカへの愛やキリスト教への深い信仰が色濃く投影され、社会的なメッセージを投げかけている。

発売日: 2019年8月9日
レーベル: Jagjaguwar
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カート・ヴァイル

カート・ヴァイル(Kurt Vile)
カート・ヴァイル(Kurt Vile)はアメリカ出身のSSW兼音楽プロデューサー。

過去にはThe War on Drugsのリードギターを務めており、2017年にはオーストラリアの女性SSWであるコートニー・バーネットとのコラボも話題となった。

ルーツにボブ・ディランを持つカート・ヴァイルのフォークロックは語り口で歌われることが多く、ニール・ヤングのソフトロック・ツイストの効いたテイストといい、アメリカン・フォークロックの伝統的な遺伝子を受け継いだ正統派アーティストだ。

発売日: 2020年10月2日
レーベル: Matador Records
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Turntable Films

Turntable Films (ターンテーブル・フィルムズ)
Turntable Films (ターンテーブル・フィルムズ)は京都で結成された3人組フォークロック・バンド。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカルであるGotchが主宰するレーベル、only in dreamsに所属している。

ほとんどの曲は英詞で表現されるとともに、サウンドデザインの面では“アメリカーナ”と称されることが多く、

クラシックなカントリーやソフト・ロック、そして浮遊感のあるサイケデリックな表情まで、海外志向の多彩な顔を持つ。

アメリカの伝統を継承しつつも、遊び心に富んだメロディーやフレーズは日本の風土にフィットする心地よいフォークの響きを持ち合わせており、国境を行き来する優れたバランスが魅力だ。

発売日: 2020年11月11日
レーベル: Only In Dreams
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ゆうらん船

ゆうらん船
ゆうらん船は内村イタルを中心に結成された5人組バンド。

はっぴいえんどを始めとするクラシックなフォークロックを継承したタイムレスなグッドミュージックを奏でる。

浮遊感漂うサイケデリックな音像や、フォークとは対極に位置する電子音を織り交ぜる実験的なフォークロックが魅力。(2021年10月6日追加)

発売日:2020/6/24
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Summer Salt

Summer Salt(サマーソルト)
Summer Salt(サマーソルト)はテキサス・オースティン出身のフォークロック・デュオ。

ハワイアンやサーフロックを始め、ボサノバにインディーロックなど多彩なエッセンスを織り交ぜたフォークロックが特徴。

夏の陽気を纏ったメロディーセンスは、フォークロックならではの地域性を体現している。(2021年10月6日追加)

発売日:2021/6/25
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コートニー・バーネット


コートニー・バーネット(Courtney Barnett)はオーストラリア・メルボルン出身の女性シンガーソングライター。

ボブ・ディランを彷彿とさせる叙情的な歌詞や、心地良い気怠さとエモーショナルさを兼ね備えたボーカルスタイルが持ち味。

オルタナティブ・ロックやグランジの要素をフォークを掛け合わせた現代のギターヒーローである。(2021年10月6日追加)

発売日:2018/1/1
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フェイ・ウェブスター

Faye Webster(フェイ・ウェブスター)
フェイ・ウェブスター(Faye Webster)はアメリカ・アトランタを拠点に活動している女性シンガーソングライター。

気怠くもメロウなボーカルに、ハワイアンやカントリーを匂わせるスティールギターによって、浮遊感漂うドリーミーなフォークロックを奏でる。(2021年10月6日追加)

発売日:2021/6/25
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フレディーマーズ

フレディーマーズ
フレディーマーズ(ex:フレディーマーキュリーズ)は東京を拠点に活動する4人組バンド。

90年代のアメリカのインディーシーンを踏襲したローファイな音像や、くるりを彷彿とさせる日本の土壌にフィットした懐古的なメロディーセンスと日本語詞が秀逸。

なおメンバーの砂井は、先ほど紹介したゆうらん船のメンバーとしても活動している。(2021年10月6日追加)

発売日:2021/8/4
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フォークロックの多様性

フォークロックを更新する、新世代バンド7選 (1)
フォーク・ミュージックが派生し、ロックと組み合わさることによって誕生したフォークロック。

60年代に北アメリカからヨーロッパに広がり、それぞれの土地で形を変えながら語り継がれてきたが、やはりフォークロックと聞くとどこか古いイメージがあるかと思う。

しかし、今回紹介した新人バンドを聴いてもらえば、懐古主義なリスナー、そして現代音楽を聴いて育ったリスナーのどちらにも新鮮さをもたらし、今の時代に完全にフィットしていることが分かると思う。

多様性がカギとなる現代だからこそ、他ジャンルと柔軟に適合できるフォークロックというジャンルはこれからも形を変えながら、時代に寄り添い続けていくに違いない。

フォークロック関連記事

フォークロックの関連記事について、BELONGではこれまでにWhitney、Big Thief、ROTH BART BARON、Sundowners、Loving、Bright Eyes、Sufjan Stevens、Bon Iver、ゆうらん船、コートニー・バーネット、フェイ・ウェブスターの記事を取り上げている。

  • Whitney
  • Big Thief
  • ROTH BART BARON
  • Sundowners
  • Loving
  • Bright Eyes
  • Sufjan Stevens
  • Bon Iver
  • ゆうらん船
  • コートニー・バーネット
  • フェイ・ウェブスター
  • ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)

    兵庫県出身のサイケデリック・ロックバンド、Daisy JaineのVo./Gt.。アメリカ・ボストンに留学経験があり、BELONGでは翻訳を担当。サイケデリック、オルタナ、60s、ロカビリーやR&Bと幅広く聴きます。趣味はファッション、写真、映画観賞。
    今まで執筆した記事はこちら
    Twitter:@rio_daisyjaine