最終更新: 2025年10月18日

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どこか噛み合わない空気、言いたいのに言えない言葉。

相手の沈黙が、自分の中から叫び声を否応なく引きずり出す。

そんな息苦しい瞬間のためのサウンドトラックが存在する。

The Belair Lip Bombs(ザ・ベルエア・リップ・ボムズ)の「Hey You」は、親密な関係性の中で生まれるコミュニケーションの断絶と、爆発寸前の切望を描いた楽曲だ。

この記事では、「Hey You」の歌詞の深層に迫り、その物語とサウンドが織りなす“yearn-core(イヤーンコア)”の世界を解き明かしていく。

彼らのセカンド・アルバム『Again』は、2025年10月31日にリリースが予定されており、今回取り上げる「Hey You」はその期待感を高めるに十分な一撃である。

The Belair Lip Bombsとは


The Belair Lip Bombsは、2017年にオーストラリアのフランクストンで結成されたインディー・ロック・バンドである。

メンバーはメイジー・エヴェレット(Vo./Gt./Key.)、マイク・ブラドヴィカ(Gt.)、ジミー・ドラウトン(Ba.)、そしてダニエル・デヴリン(Dr.)の4人。

The StrokesやTelevision、The War On Drugsなどから影響を受けたサウンドと、メイジーの気だるくも力強いボーカルが特徴。

彼らが自ら“yearn-core”と称するその音楽は、「切望」や「憧れ」をテーマにしている。

2023年にデビュー・アルバム『Lush Life』をリリース後、ナッシュヴィルに拠点を置くレーベル“Third Man Records”と契約した初のオーストラリアのアーティストとなり、大きな注目を集めている。

“yearn-core(ヤーン・コア)”とは何か

クレジット:pexels

The Belair Lip Bombsを語る上で欠かせないのが、彼ら自身が生み出した造語“yearn-core(ヤーン・コア)”という表現だ。

これは確立された音楽ジャンルやサウンドの方向性というよりも、彼らの音楽性を象徴的に示すためのラベルである。

「yearn」は英語で「切望する」「憧れる」「思い焦がれる」という意味を持つ動詞だ。

つまり“yearn-core”とは、切ない思いや満たされない渇望を音楽表現の核に据えたスタイルを指している。

彼らはこの言葉を、自分たちの音楽的アイデンティティを表す重要なキーワードとして位置づけている。

「Hey You」が描く、爆発寸前の“切望”


今回取り上げる「Hey You」は、2025年10月31日にリリースされる待望のセカンド・アルバム『Again』からのリード・シングルだ。

この楽曲の核心にあるのは、恋愛関係におけるコミュニケーション不全の描写である。

「言わなくても察してほしい」という願いと、「なぜいちいち言わなければならないのか」という苛立ち。

歌詞は、一方的な我慢を強いられ、沈黙の中で心をすり減らしていく主人公の姿を克明に描き出す。

それは単なる不満の吐露ではなく、関係性が崩壊する前の最後の“知らせ”であり、痛切な心の叫びなのである。

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