最終更新: 2026年3月18日
聴いていると、踊りたくなるのに泣けてくる。そんな不思議な体験をもたらすバンドが、ニューヨーク・ブルックリンから現れた。
Nation of Language(ネイション・オブ・ランゲージ)は、シンセサイザーを主軸に据えながらも、パンクの体温とポップの透明感を兼ね備えた3人組だ。
2020年のデビュー以来、世界中の音楽ファンから支持を集め、2025年には4thアルバム『Dance Called Memory』をSub Popからリリース。
今回、来日公演を目前に、ボーカルのイアン・リチャード・デヴァニーにインタビューを行った。
“記憶とはダンス”だと彼は言う。その言葉の意味を、ぜひこの記事で確かめて欲しい。
アーティスト:イアン・リチャード・デヴァニー(Ian Richard Devaney) インタビュアー:Wakiki(わきき) 翻訳・編集・校正:BELONG Media / A-indie
Nation of Languageとは

バンド結成のきっかけ
─わきき:バンド結成の経緯について教えてください。イアンはOMD(Orchestral Manoeuvres in the Dark)の「Electricity」に影響を受けてシンセサイザーでの楽曲制作を始めたそうですが、そこからどのようにして現在の3人体制へと発展していったのでしょうか。また、当時イアンが思い描いていたシンセ・ミュージックの理想像はどんなものだったのでしょうか。
イアン:「Electricity」を初めて聴いたとき、その”不完全さ”に衝撃を受けたんだ。当時の僕はほとんどパンクばかり聴いていたんだけど、このシンセ・ミュージックがすごく人間的で、生々しく感じられた。それが刺さったんだよね。だからプロジェクトを始めたとき、あのエネルギーを音楽に閉じ込めることが、僕にとって一番大切なことだったんだ。
音楽的影響とバンド名の意味
─わきき:Nation of Languageの音楽的ルーツについて伺いたいです。OMD、New Order、Kraftwerk、そして日本のYMOなどの影響を公言されていますが、それ以外にも現在のサウンドに至るまでに特に大きな影響を受けた音楽やアーティストはありますか?また、それらの影響はサウンドのどんな部分に反映されていると感じますか?
イアン:Future IslandsとThe Nationalは、本当に大きな影響を受けたと思う。あの2組は、情熱も痛みも愛も、全部音楽に注ぎ込んでいたから。それと、昔のパンクバンドも僕たちのサウンドに深く根付いていると思うよ。FugaziやThe Clashの昔のライブ映像をよく観ていたんだけど、あのエネルギーと熱量はすごかった。何も出し惜しみせず、毎晩ステージにすべてを捧げているように見えて、本当にかっこよかったんだ。
─わきき:バンド名について伺いたいです。Nation of Ulyssesから着想を得てアレンジされた名前だと聞いていますが、改めて振り返ってみて、Nation of Languageという名前は現在のバンドの音楽や表現をどのように表していると感じていますか?
イアン:ありがたいことに、今でもこの名前はしっくりくると思ってる。僕にとってこの名前は、時代を超えて残り続けるものを想起させてくれる。僕たちの音楽にも、そうあってほしいと思ってるよ。それに、ちょうどいい塩梅の謎めいた感じがあって、聴く人それぞれが自分なりの解釈を持てるところも気に入っているんだ。
4thアルバム『Dance Called Memory』を語る
タイトルに込めた想い
─わきき:ここからは昨年発表された最新アルバム『Dance Called Memory』についてお聞かせください。アルバムタイトルに“Dance Called Memory”を選んだ理由を教えてください。感情豊かなサウンドに乗って、傷や記憶を抱きしめたまま踊る人々の姿を思い浮かべましたが、このタイトルに込めた意味やイメージはどんなものでしょうか。
イアン:それはすごく美しいイメージだね。このタイトルはアン・カーソンの詩集『The Beauty of the Husband』から借りたんだ。エイダン(エイダン・ノエル)が僕に教えてくれて、読んだ瞬間に“これだ”と思ったよ。記憶ってとても流動的なものだよね。ある時は抱きしめるように近くにあって、またある時は遠心力で弾き飛ばされそうになる。そのすべてを、戦いのようなものとしてではなく、ダンスとして想像してみたかったんだ。
サウンドの進化
─わきき:機械的でドリーミーなシンセの音はボーカルの感情の昂ぶりに寄り添って時に温度を持ち、ギターやベースの感情的で人間らしい動きもより際立っています。今作のサウンド面では前作までと比べて、特にどのように進化したと感じていますか?制作過程で特に意識したことや、完成したサウンドの魅力についても教えてください。
イアン:進化を重ねるごとに、より多様な楽器を取り入れて、不完全さや人間らしさがどんどん大きな割合を占めるようになってきた。スタジオでもその方向を意識して選択していたんだけど、思っていた以上にうまくまとまったんだよね。プロデューサーのニック・ミルハイザー(Holy Ghost!)が、音楽に力強さと重厚感を加えてくれて、鳥肌が立ったよ。
ボーカルについて
─わきき:ボーカル表現について伺いたいです。今作でのイアンのボーカルはより熱を帯び、感情を爆発させるような場面も印象的です。こうした表現を意識した理由や、歌声で特に伝えたかったことは何でしょうか。
イアン:自分の声との関係は、ずっと変わり続けていると思う。2020年以降、ツアーもレコーディングもたくさんこなしてきて、感情的に最も効果的な声の使い方をいつも探し続けてるんだ。それはアルバムごと、曲ごとに変わってくる。『Dance Called Memory』は感情的に激動の時期に書いてレコーディングしたから、その生々しさや感情の爆発をボーカルでも表現したかったんだよね。
歌詞について

─わきき:イアンの歌詞は丁寧で、自己内省や喪失感、孤独をテーマにしながらリスナーの共感を呼びます。言葉を大切にしているメディアとしてぜひ伺いたいのですが、今作で歌詞を書く際に特に意識したことや大切にしたことは何でしょうか?
イアン:音楽を作って歌詞を書く理由の多くは、世界の中で少しでも自分を理解してもらいたいという気持ちからなんだと思う。だから、たとえ歌詞がほぼフィクションの物語を語っていたとしても、言葉のどこかに自分自身が反映されていることが大切なんだ。自分の嫌いな部分であっても、リスナーに向けて自分の何かを照らし出そうとしているよ。











