最終更新: 2014年10月12日

ルミナス・オレンジが22年の長いキャリアで行ってきた自分探しは、ここにきてひと段落を迎えた。絵画や漫画から音楽へと至った竹内里恵の自己表現方法から始まり、ルミナス=竹内里恵という一人ユニット形態、宣伝・流通・販売をWEB主体の自主制作へ、そして音楽性も――「シューゲイザー」という一般定着したイメージが狭すぎるほどに―—変化していた。

例えば本作では「Das Experiment」のリムショットからなるボサノヴァ・アプローチや、まるでDE DE MOUSEのようなヴォコーダー・ボイスと縦横無尽なガット・ギターが特徴な「Tigerlily Mixolydian」も変化のひとつだが、一番の変化は吉田ヨウヘイgroup(以下YYG)の協力を得た点にある。フルート、サックス、ファゴットから生み出されるクラシカルで透明な響きは、ルミナスのルーツとして見え隠れしていたクラシックやジャズの要素たちを肉体/精神共に呼び起こした。

さらに、女声による美しいコーラス・ワークが共通項の2バンドだけあって、コーラスの魅力はぐっと加速している。特に先述の楽器たちの掛け合いで始まり、3つの音×4小節のコーラスをメイン・フレーズとして展開していく「Sore, Soar, Soir」をはじめとして、本作ではコーデッツやロネッツのようなビートルズ以前を思わせるコーラスへの注力を感じることができる。これもまた見え隠れしていた魅力であり、キャリアの上で次第に結実させた結果の財産だろう。

つまるところ本作は、自らの活動のしやすさ及び他人の力に頼りきらない”自分力”をもって活動を続けてきたルミナスが、音楽面において他者を大きく歓迎した作品ということではないだろうか。YYGと音楽性をすり合わせ、ノイジーなレイヤーをくぐり抜けた新感覚の作品。しかし本作こそが自分探しの果ての、本当のルミナス・オレンジのような気がしてならない。

【Writer】ŠŠŒ梶原綾乃(@tokyo_ballerina)