最終更新: 2019年8月13日

Charaインタビュー

アーティスト:Chara インタビュアー:ohamu

Secret Gardenとは

-アルバムタイトルでもあり、楽曲タイトルにもなっている『Secret Garden』の名前の由来を教えていただけますか?
Chara:その楽曲自体は、アルバムに入れたいなとは思っていたんですけど、レコーディングしてる時点では、どの曲もタイトルは曖昧なままで。スタジオワークが終わった時点でタイトルってつけるんですけど。だからレコーディングが始まった時点では曲のタイトルもないし『Secret Garden』っていうのをアルバムタイトルにしようと思っていなくて。毎回そうなんですけど私がコンセプトなので、私自身の内側にあるものをいかに解り易く表現するかっていう事なので。その純粋さっていう意味ではホームレコーディングも多かったし、バンドと違って孤独になりやすい状況を作りやすいというか。「Charaいいでしょ!」っていう確認も自分でやらなきゃいけないし、それはソロの楽しみでもあるのでね。バンドではプレイヤーが入れ替わり立ち代わりっていうことにはならないから。そういう意味では周りの本当に信頼している、愛のあるミュージシャンたちに参加してもらったと思います。なんとなく制作の後半くらいですね、タイトル曲の「Secret Garden」を仕上げたのは。その時にこのタイトルいいなと思いました。歌詞に関しては、子どもがもう1人ほしいなってずっと思ってるから。子どもは2人いるけど3人育てるのが夢というか、お母さんはクリエイターとして最高に楽しい仕事だから。今の年齢で女性としては、いろいろなことが身体に起こってくると言われる世代なんです。ガーリーって人は言うけど、結構おばちゃんやで、みたいな。その足音が聴こえてる中で、夢としてはもう一人子どもをってずっと考えていたから。ただ、夢と言ってもパートナーがいないと子どもはできないけど、新しいパートナーはとても優しい穏やかな人で。Charaというアーティストじゃなく、ひとりの女性として見つけ出してくれたし、一歩踏み込んで来てくれたし、私も一歩踏み込んだっていう恋愛で。女性は子宮でものを考えるっていう話があるけど、子どもが欲しいっていうのは意識してたかもね。そんな中で歌詞を考えていたから、ちょっとエロい歌詞なんだけどそれを可愛く歌ってる。子宮をガーデンというイメージで妄想していたのはあると思います。

-そういう意識が「Secret Garden」という楽曲になり、アルバムをひとまとめにするタイトルになっていったということでしょうか。
秘密って言うタイトルはとても興味深いし、心の中の感情や思っていることを私たちは楽器の力を借りて曝け出して歌にしているけれど、誰でも本来は秘密のものじゃないですか。でもそれができるから私達にも役割が存在するというか、マジックのような仕事だなって思う。音楽にも人の心を癒す魔法のような力があるよって昔から言われていたのは分かるような気がするし、神秘的と言われると確かにそうだなと思う。それこそ子どもも神秘的だけど、楽曲とかセッションとかもまさに。それだけセッションパートナーたちと曝け出し合って、引き出し合いができれば神秘的なセッションになるの。その辺りについて3時間くらいは喋れる(笑)。

-『Secret Garden』はブラックミュージックのような仕上がりになっていましたが、これは原点回帰なのか、それとも最近聴いている音楽の影響なのでしょうか?
昔からああいうBPMが好きで、もともと鍵盤で作曲をしていたんです。ギターは20歳過ぎて、グランジが流行った90年代頃から使い始めたくらいで。ギターも出来た方が曲作りに幅を持たせられるかも、って(笑)。あとは付き合った男性の影響とかもあって、それでパンクロックや、グランジとかも聴いてた。私はそういう影響を受けたい人でもあって。元々の自分はソウルミュージック大好きで、Princeは凄く好き。彼はマルチプレイヤーだしステージングも表現も超個性的で、中学生・高校生くらいの時から憧れてた。ファンクも好きだったけど、埼玉出身で東京の高校に通っているような女の子にファンクが根付いているかっていったらそうでもないし。レコードを聴いたり、ディスコとかに行けば体感出来るのはあったけど、特別な所に行かないと味わえなかったから。もともとグルーヴっていうのは好きで。あまり速いBPMは…通ってはいるんだけど、ローラースケーティングのようなBPM遅めの方が好き。毎回アルバムに1曲くらいは(ブラックミュージック要素のある曲が)入ってるかもしれないけど、アルバム全体がそういう雰囲気のものはやったことがない。それはそれでやっても面白いかもしれないけどね。私もいろんな世代を通ってきているから曲作りに幅があって、今のところそこはまだ未熟なんでしょう。自分にとって根強く歌いやすいテンポで声なのかっていうと、実はソウルミュージックのような気はする。でも、Carole King辺りのポップスもやっぱり素晴らしいと思う。

―「Secret Garden」の次に「hug」という曲が来ていますね。その2曲は、曲調は違うんですけど、「Secret Garden」からの流れとストーリー性もあって。そこは意識したところがありますか?
曲の構成的にそこはかとなく積み上げていくような感じで。ハーモニーがだんだん入って行って切ないものがいっぱいになっていく、最初からキラキラしてる感じではなくだんだんと構築してくような。最終的に聴いてみるとソウルっぽいグルーヴっていうのはあるかも。最初はミニマムな音の響きで。

-小さい所からドラマチックになっていくような。
ドラマチックにしようと思ってないんだけど、だんだん集まってくるようになっちゃって。ハーモニーワークも好きだけどね。書き下ろしの曲はアルバムの中にいくつかあって、「hug」は私も子育て経験中ですけど、書きおろしたドラマの中に子供が出てきて、言葉で言わなくても君を信じてるよっていう親子の愛の表現があるんですよね。言葉で守ってあげることも大事だけど、ハグすることも大事だと思うし。ハグする感じがハーモニーの包み込むサウンドになったんですけど。メロトロンみたいな音を陰ながら使っていたりして奥行きを出してます。

-5曲目だけど、クライマックスの様な盛り上がりもあるのが印象的でした。
この曲は、アルバムの中では古い方と言うか、レコーディングも最初の方でした。他の曲と比べても、プロダクションというか、エンジニアさんの仕事やミュージシャンの音がすごくうまくいってるなって思いましたね。低音もしっかり出ていて、だから「Secret Garden」の次にくるのが、聴いててすごくいい感じですね。

-そうですね、とても流れを感じました。Charaの楽曲には“ママ”というキーワードがよく使われていて、今作でもこのキーワードが使われていますが、今作の中ではどのようなイメージでこの言葉を使われているのでしょうか?
確かに(笑)。私のママっていう意味もあるし、聴く人にもママがいるだろうし、みんなママから生まれてきて、子宮が故郷というか。私のことをお母さんと呼んでくれる2人の子どもたちは無意識にすごい存在だし。ママっていう言葉を使っていない曲もそうだけど、使っている曲は「私たちの事を歌っているのかしら」と思ってもおかしくないし、実際そういう想いがあるからダブルミーニングのようなものが出てくるわけで。言葉って出しちゃったら引っ込められないから、どっかで見たり聞いたりしても責任があるので、それを言ってるってことは伝えたいことがそこにあるということで。私は音楽で伝えることが得意なので、もし子育ての中で上手く子どもたちに伝えられていないものがあったら補う様な部分も…(笑)。そのためにやってるわけではないけど、もしかしたら潜在意識のなかにそういうのもあるのかもしれない。やっぱりコンセプトは自分なので、自分という人間・・・。40歳半ばの女性で幼い頃から日本に住んでて、両親も日本人で、アメリカのドラマのような解り易い表現もないなかで「愛って何だろう?大人の女の人に早くなりたい」っていうすごい憧れがあって。思春期があって「音楽ってかっこいい!」っていうのがあって、「私才能あるみたい」って自分を信じる力があって。19歳の時の失恋をきっかけに思い切って歌うことにして、失恋して恋をして、夢だった「無償の愛」って何だろうっていう部分で「お母さんになってみたい」って思って。お母さんになって子育てして、思っても見ない離婚をして、恋をして失恋して(笑)。いつでも踏み込んで進んできたなって。これまでのものが全部、今回すごく優しい感じで出てると思う。

-意図的に使った言葉と言うよりは湧き出てきた言葉っていうイメージなんですね。今回のアルバムの作詞・作曲は全てご自身がされているとのことですが、サウンドの原型を作ってからどのように楽曲を肉付けしていったのでしょうか?
曲によって違うんですけど、ほぼ自分の家のコンピューターで鍵盤とリズムとフレーズのイメージをクリエイトして。「後はイメージできてるから、とりあえず夕飯作ろ!」みたいな。

-途中で家事を挟んじゃっても大丈夫なんですか?
うん、全然。別に関係ないっていうか。家の事も他の事も、自分のためにやるクリエイティブな事も、両立させるのにしなきゃいけないこととして決めてやってて。じゃないと家の中のことが適当になり過ぎるから。だけど、適度にはちゃんとやりたいから。独身の頃はいつでも好きな時にやってたけど、赤ちゃんがいるとそうはいかなくて、決められた時間でやるようにしてたから大丈夫。曲はある程度自分の頭の中でこういうアレンジをしたいっていうイメージがあるので、それに忠実に再現したり、その日参加してくれたセッションミュージシャンによって引き出されて影響を受けたりすることもあったり。「Secret Garden」はもともとベースレスの曲だったんだけど、セッションからベースが入ったし。韻シストのSHYOU(Ba.)ちゃんは、めっちゃグル―ヴィーでスタジオでもよく踊ってた(笑)。彼は普段大阪にいるんだけど、ライブもサポートしてもらったり、東京に来た時にレコーディングもしてもらったり。今回はエレキギターの歪んだものは少なくて、THE NOVEMBERSの(小林)祐介のギターくらいなんですけど。

『Secret Garden』