最終更新: 2019年3月17日


10年って言いますけど、世界にはまだ出会ったことのない人とか見たことがない場所とか聴いたことのない音楽ばかりじゃないですか。そう考えると、何年やっていようが世の中には可能性しかないっていう希望がある気がしますよね。

アーティスト:小林祐介(Vo.) インタビュアー:yabori 撮影:MASAHIRO ARITA

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-確かに『GIFT』は広がりがありましたね。今回、Charaの新作も一緒に作られていましたがいかがでした?
すごく素敵な経験でした。今回改めて思ったのは、彼女が自分たちの良さを引き出してくれてるんだなって。サポートミュージシャンって力を貸すっていうイメージがあるかもしれないんですけど、自分達だけだと出せなかった力やセンスを、Charaっていう世界や女性に引き出してもらってるんだなってすごく思ったんですよね。

-それはCharaの人間力っていうことですか?
人間力なのか何なのか・・・。取り立てて「もっとこうしろ、ああしろ」って言うことじゃなく、空気感というか。Charaのことを想像しながら演奏するだけで普段できないことができたり、Charaが作ってきた曲を会話するような気持ちで演奏したり。だから、すごく素敵な経験でした。

-10年も経験を積んだTHE NOVEMBERSですら、気付かなかった新しい面を引き出してくれるってすごいことですよね。
本当にそうですね。Charaは間違いなくそういう人だと思います。個人的に、浅井健一さんとも一緒にやってますけど、浅井さんもまさにそうで。彼と一緒にやってると、色々と引き出されたり、それがまたTHE NOVEMBERSに影響が出たり。人と関わる事や新しい世界に出会って、その価値観に触れるって素晴らしいなと思ますね。10年って言いますけど、世界にはまだ出会ったことのない人とか見たことがない場所とか聴いたことのない音楽ばかりじゃないですか。そう考えると、何年やっていようが世の中には可能性しかないっていう希望がある気がしますよね。

-今回のCharaのアルバムを聴くと、それ自体はCharaの曲でもあるけど、サポートしているミュージシャンの曲でもあるなと思って。彼女はアーティストの色を出すのがうまいのかなと思いました。
人の魅力を引き出したり自分の世界に巻き込んだりすることも含めて、自己プロデュース能力が高いんだと思います。しかも彼女は芸術家だから、経験値もあるだろうけど、感覚でやってるような感じとか。だから僕らも好き勝手できたのもあるし。

-Charaの音楽には言葉で説明できない感じがありますよね。話を戻しますが、『To (melt into)』の前後では音楽性や歌詞が変わっていったと思うのですが、この辺りに何か変化のきっかけがあったのでしょうか。
変えていこうというよりは、身短な人の死だったり震災だったりを含めて、それまで培ってきたことが一旦全部保留になったというか。自分がそれまで正しいと思ってきたことや憎んできたこととか、素敵だなと思ってきたこと、そういういろんなことに自分の中で然るべき理由が、実はなかったことに気付いた。自分がなぜこういうものに加担するのかっていうちゃんとした理由がなく、なんとなく生きてきたんだなって気付いて。じゃあ自分はどんなものに価値を置くんだろう、どんなことを信じるんだろう、信じるってことは一回疑わないとできないよなって考えるようになって。疑ってない状態で今までボーッとしてたけど、“疑ってない状態”と“信じるっていう行為”は似てるけど全然違うじゃないですか。そういうことを意識し始めた時期だったから。変えようと思って変えたというよりは、変わらざるを得ないようなきっかけがあって。もっと豊かに生きていくためには自分はどういう風に生きていこうかなって考える、ということはそういう自分が作る歌詞だから必然的に変わるというか。でもまぁ両方ですね、変えようと思ったのかもしれないし。

-その頃のことが今のベースになってるような気がします。歌詞は変わってきてますけど、サウンドを変えようとは思いましたか?
昔からそんなに音楽の趣味って変わってないので、サウンドもそんなに意識してなくて。何枚か作ってきた中でこうしたらもっとかっこいいとか、もっと気分がいいなとか、そういうのは経験則的に成長してきたんで、必然的に変化したように聴こえるかもしれないけど。でも音楽性がどうこうっていうのはなかったかな。ただ、もっとこうしたら綺麗だなという事や素敵だなっていうことへの執着は強くなっていった時期でしたね。

-ここから歌詞が抽象的になって聴き手に考えさせるものになっていくんですけど。そういう歌詞にしようと思ったのも、その信じるとかを能動的に考えていった結果ってことでしょうか?
他人にどう思わせるかっていうよりは、自分が戸惑ってることや、自分の足元がグラグラでしっかり立って歩かなくちゃいけないけど、それってしんどいなとか、そういう気持ちが比喩として出たんじゃないかな。ただそれが、一人称じゃなくなったのがあの時期なんだと思う。自分のことを歌うのに、自分は自分をきっかけに歌詞を書くけど、歌の中の登場人物まで自分である必要はないと考えていて。何かすごく途方に暮れているとして、途方にくれてますって歌うんじゃなくて、彼は途方にくれているって歌う。それって意味が変わってくるじゃないですか。

-『zeitgeist』はそういう感じで歌詞を書かれたんですか?
『zeitgeist』からは一人称がほとんど出てこなくなりましたね。わざわざ言葉にするとこういう感じだけど、歌詞もその都度なんですよね。わざわざ言葉にして歌うっていうことに、自分の中で意味はあるんだけど、なんでかっていうと僕にしかわからないことが多いから、他人に説明するのは難しいかもしれないですね。

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-そういう流れがあって、10年経った今はどんな音楽聴いていますか?
BOOM BOOM SATERALLITESの『SHINE LIKE A BILLION SUNS』を良くて、すごく聴いてます。洋楽は今年に入ってからそんなにチェックできてないですね、ゆっくり時間がなくて。少し前だけどFKA twigsの『LP1』を聴きました。

-FKA twigsはどうでした?
アーティスティックで無機質な感じなんですけど、最初はその冷たさがいいなと思ったんですよね。でもライブ動画を観てるうちに、なんてエモーショナルなんだろうと思って、ものすごくのめり込んじゃうというか。アイコンぽさがありますよね。あとはBjorkの『Vulnicura』とICEAGEの『Plowing Into the Field of Love』も聴いたな。ICEAGEはもともともっと暑苦しくエモーショナルでそんなに好きじゃなかったんだけど、新譜からすごくハマりました。

-今上がったアーティストはどれも、エモーショナルって言っても感情の出し方が、歌って伝えるというよりはパフォーマンスで魅せるって感じじゃないですか?
ICEAGEはむしろ逆で、クールに洗練されてたから好きになったかな。確かにFKA twigsには執念めいたものがありますよね。

-行くところまで行ってる感じがありますよね。それも、前のインタビューで言っていた、思ったことのない感情に触れてみたくて聴いてる部分もありますか?
聴いてないから興味があるっていうので聴いてて。昔みたいに、知れば知るほど毎回面白いっていうのは歳を重ねるごとにちょっとずつ減ってきますね。僕の知らないところで素晴らしい音楽が数え切れないほどあるんだろうけど、なかなか出会えなかったり、出会ってもなんとなく知ってる音だなと思うとあまり感動できなかったり。常にハードルが高くなっていってるっていう辛さがありますよね。自分の昔から好きなものって引き続き聴けるんだけど、慣れていくことが退屈に繋がると途端に興味がなくなっちゃうというか。

-話を戻しますが、これからどのような活動をしていきたいかプランがあれば教えてください。
プランと言うと目標ってことだと思うんだけど、目標と夢って別の言葉じゃないですか。僕はどちらかというと夢を持ってそれにときめいていたり、ワクワクした自分を保ちたいなっていう目標があります。もっと大きなところでライブをやりたいっていう変わらない気持ちもあるんですけど、それはあくまでひとつの目標で。夢を持ち続ける自分でいたいっていうのが強くなってますね。

-MERZでの目標ってありますか?
いつか、新人のリリースやイベントをしたり、音楽に限らず自分たちの得意なことが増えたり仲間が増えたりしたらいろいろやってみたいですね。

-それはメンバーを自分たちで集めてという事でしょうか?
集めるというか、縁があったらという言い方が正しいですね。自分はこれが得意だっていう友達が現れたら、「一緒にやってみようよ」ってフットワーク軽く楽しめる場所にできたらいいですね。

-これから音楽性を変えようとかは考えてないんですかね?
まぁでも生きていれば、昨日の自分と今日の自分は、本人が気付かないだけで若干違うことがあるように、変えようとしなくても必然的に変わってきちゃうと思うから。素直にやっていけて、それで出た変化なのであればいいかなと思います。退屈しないために変わらざるを得ないこととか、挑戦しなくちゃいけないことってその都度あると思うから、そういうきっかけがくれば変わると思うし変えると思います。

-では最後に今回の映像作品はどんな人に届いて欲しいですか?
ライブに来たことがない人ってたくさんいると思うから、そういう人たちにとってTHE NOVEMBERSのヒントになるというか、入り口になったらいいなと思います。CDだけだと表現しきれない部分や届けられない部分まで楽しんでもらえるものになったらいいなと思いますね。

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