最終更新: 2020年4月17日

THE NOVEMBERS(ザ・ノーベンバーズ)が、L’Arc〜en〜Ciel(ラルク アン シエル)のyukihiro率いるacid androidとバンド結成11周年企画で対バンを行う。

このイベントは両者が共演するだけではなく、共通のルーツに当たるデペッシュ・モードをカバーする。

しかもこのカバーには主催の両バンドだけでなく、土屋昌巳やLillies and Remains、PLASTICZOOMSのメンバーも参加する一夜だけのスペシャルセッションを行う。

それを記念し、THE NOVEMBERSの小林祐介とacid androidのyukihiroに二人の出会いから、両者のルーツについて語ってもらった。

THE NOVEMBERS・小林とacid androidのyukihiro

また2020年5月に発売されるTHE NOVEMBERSの最新アルバム『At The Beginning』では、サウンドデザインにyukihiroが参加。

この両者のコラボレーションはこれからも続いていく。(2020年4月4日追記)

L’Arc〜en〜Cielの大ファンだった小林祐介

L'Arc〜en〜Ciel

アーティスト:yukihiro(acid android)、小林祐介(THE NOVEMBERS) インタビューアー:yabori

-そもそもお二人はどこで知り合ったのでしょうか。
小林祐介:もともと僕がL’Arc〜en〜Cielの大ファンだったので、yukihiroさんの事は当然知っていて。実際にお会いしたのはacid androidのギターのサポートの話を頂いた時がきっかけでしたね。

-どうして小林さんにギターのサポートをお願いしようと思ったのでしょうか。
yukihiro:acid androidはサポートメンバーでずっとやっているんですけど、ある時に編成を替えたいなと思って。そこでスタッフからギタリストを何名か紹介してもらって、音楽やライヴ映像を見て決めました。

-そうなんですね。どうして小林さんにしようと思ったのでしょうか。
yukihiro:THE NOVEMBERSの曲が良かったからです。ライヴのパフォーマンスを映像で見て、アルバムを改めて聴いてかっこいいなと思いました。

-それでは小林さんはacid androidでギターを弾いてみていかがでしたか?
小林:お話を頂いた時は光栄としか言いようがなかったですね。それまではTHE NOVEMBERS以外のバンドで演奏した経験がほとんどなかったんですよ。実際に曲を聴いて覚えてacidのステージに立った時は新しい扉が開いたというか、全く味わった事のない感覚や感動があって。それを鮮明に覚えていますね。

-acid androidとTHE NOVEMBERSで演奏してみて違いはありましたか?
小林:acid androidはシーケンスがアンサンブルの基盤にあるんです。People In The Boxの大吾君(山口大吾)がドラムで、Voのyukihiroさんと僕の3人でシーケンスと一緒に演奏したんですけど、どうしてこんなに躍動感が出るんだろうって驚きました。THE NOVEMBERSでもシーケンスと一緒に演奏するっていう経験は勿論あったんですけど、トラックや演奏技術含め、楽曲の仕組み自体がまるで違うので、全く新しい感覚だったんです。これは大きな出来事でした。自分がシーケンスに対する新しい可能性や感動の仕方を覚えたりしたのはacid androidで演奏したのがきっかけだったので。何よりもニュー・ウェーヴやインダストリアルミュージックの空気感のある音楽が元々大好きだったので、自分もそんな音楽を鳴らす一員になれた事が本当に楽しかったですね。

-yukihiroさんから見て小林さんが他のギタリストと違うと思う所はどこでしょうか。
yukihiro:小林君と演奏する時はギターロックの感じが入ると思います。今年の4月と6月にサポートしてもらったLillies and RemainsのKAZUYA君が演奏するともうちょっとタイトになるんですけど、小林君は空間を広げる感じというか隙間が埋まりますね。
小林:音に性格や人間性が出ているというのはあるんじゃないかと思います。KAZUYA君はすごく丁寧で几帳面で、仕事も職人的な素晴らしさがあるし。彼の方がタイトな演奏ができると思うんですけど、僕は風景が見えるような音像を出すのが好きなので、そういう意識や機材の違いが出ているのかもしれないですね。

acid androidとの共演

acid android
-それではどうして今回acid androidとTHE NOVEMBERSでイベントを行おうと思ったのでしょうか。
yukihiro:acid androidは8月に主催イベントを行うことが多いんですけど、今年はどうしようかと考えていた時に、THE NOVEMBERSの自主企画“首”も8月にやる予定という事を知って、一緒にやってみたら面白いと思って声をかけさせてもらいました。

-このイベントに電気グルーヴの石野卓球さんが出ているのが意外なんですが、これはどういうきっかけがあったのでしょうか。
yukihiro:以前、サウンド&レコーディングマガジンで卓球さんと対談をした事があって。その対談内容がデペッシュ・モードだったんですよね。僕も大好きなので卓球さんと対等に話せたらいいなと思っていたんですけど、全然敵わなかったです(笑)。その時に卓球さんがドイツでのデペッシュ・モード熱を教えてくれて。“デペッシュ・モードナイト”というのがあって、彼らの曲しかかけないっていうイベントがあるらしいんです。DJが曲をつなぐとお客から怒られるっていう(笑)。
一同:(笑)。
yukihiro:テンポを変えるとブーイングらしいんですよ(笑)。卓球さんとそれはすごいですねって話をしていて“デペッシュ・モードナイト”を日本でもやったら面白いんじゃないかと思って。そういうつながりもあって声をかけさせてもらいました。今回はもちろんデペッシュ・モード縛りのDJではなく、卓球さんが自由にプレイしてくれます(笑)。

-ということは今回のイベントの共演者の方とは全てデペッシュ・モードで繋がっているんですね。小林さんは再度共演が決まってどう思いましたか?
小林:楽しみなイベントだと思いましたし、自分がacid androidでギターを弾くのも久々なのでそちらも楽しみですね。

-小林さんは今までRomeo’s BloodやDECAYSにギタリストとして参加されましたが、acid androidでギターを弾く時の違いがあれば教えてください。
小林:音楽自体も違うし、主宰している方も違うので、それぞれの良さがあるんですけど、acid androidの音楽に関わる事で構築的な美しさっていうものを体感することができたのが一番印象的な事でした。例えばRomeo’s Bloodで浅井健一さんと一緒に演奏する時は構築や洗練という話よりも、何がどうロックなのかっていう心持ちについて考えることが多くて。浅井さんからは“祐介がかっこいいと思った瞬間が正解だがや”と教えてくれたり(笑)。だからここに価値を置くというのはそれぞれ違うので、それぞれが考える美しさが違うっていう事に尽きますね。

-そうなんですね。ではyukihiroさんがやっているgeek sleep sheep のライヴでは洋楽のカバーを行っていると聞きました。また今回のイベントでもデペッシュ・モードのカバーをすると聞きましたが、どうして洋楽のカバーをやるのか教えてください。
yukihiro:geek sleep sheepではバンドを始めた当初、持ち曲が少なくてカバーをやる事にしていたんですけど、いざやってみると改めて楽曲のかっこ良さを知ったり、発見が多いなと思ってカバーをやるようになりました。デペッシュ・モードのカバーは卓球さんとの対談がきっかけなんですが、現役で活動していて色んな世代に彼らを好きなミュージシャンがいるので、一緒にやろうと声をかけさせてもらう人も広がりそうだと思ったんです。

インダストリアル・ロックの衝撃

THE DOWNWARD SPIRAL [2LP] (180 GRAM, 2016 REMASTER) [12 inch Analog]
-それではそんなお二人のルーツに当たるアーティストがいれば教えてください。
yukihiro:以前その話をしていた時に二人とも共通しているのはNINE INCH NAILS(ナイン・インチ・ネイルズ)でしたね。
小林:ナイン・インチ・ネイルズは鬱屈した10代の終わりによく聴いていたんで(笑)。

-(笑)。確かにacid androidとTHE NOVEMBERSの音楽にはインダストリアルという要素が共通しているように思います。インダストリアルというジャンルに目覚めたきっかけは何だったのでしょうか。
yukihiro:僕はミニストリーを聴いたのがきっかけです。その時の衝撃は常に僕につきまとっていますね。この音楽は何だろうって探して、インダストリアルにたどり着きました。

-当時はネットが普及していないと思うので、そういうアンダーグラウンドな音楽の情報を知ること自体が難しかったと思うんですけど、どうやって知ったのでしょうか。
yukihiro:レコード屋に行くのが一番情報が早かったです。新宿にUK EDISONというレコード屋があって、その店が日本でインダストリアルというジャンルを根付かせた場所だったと思います。1階はアヴァンギャルドな日本のインディーズのCDが並んでいて、2階は洋楽でシーンの最先端をいっているものが並んでいて。そこに行くと日本と海外のアンダーグラウンドなシーンの最先端が分かるっていうお店でした。ミニストリーはツアー中に北海道のUK EDISONで買ったんですけど、店内にでかでかとインダストリアルって紹介されていて、そういうジャンルで呼ばれているんだって知りましたね。

-小林さんもインダストリアル、特にナイン・インチ・ネイルズをよく聴いていたと言っていましたけど、どういう部分が魅力的だと思いましたか?
小林:最初は『The Downward Spiral』を聴いたんですけど、一聴して“怒っている”と感じました(笑)。HIDEさんがやっていたzilchっていうプロジェクトのアルバムを聴いた時も同じようなものを感じて。当時はポップなHIDEさんが好きだったので、zilchは少し聴いてそのままだったんですけど、『The Downward Spiral』を聴いて改めてHIDEさんはナイン・インチ・ネイルズが好きだったんだなと確信しましたね。ナイン・インチ・ネイルズって歌だけが感情的なのではなくて、楽器全てが怒っていると思ったんですよ(笑)。そこから彼らの音楽をどんどん聴くようになって『With Teeth』がリアルタイムで出た新作で、ちょっと怒ってないなと思ったんですけど、それでもやっぱり好きだなと思いました(笑)。

-(笑)。小林さんの中ではインダストリアル=怒っている音楽という認識だったんですか?
小林:インダストリアルを聴いた最初の認識はそうでしたね。ただ同じインダストリアルでもノイバウテンを聴いた時は怒っている・怒っていないっていう分かりやすい感情ではなくて、オン・オフしかないんじゃないかと思って。分かりやすい感情を飛び越えた所で鳴っている音楽というかエネルギーがあるかないかっていう次元なんですよ。まずノイバウテンって正式なアーティスト名があるんですけど、長すぎて覚えられないじゃないですか。
yukihiro:アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン(笑)。
小林:未だにノイバウンテンとしか言えないんですけど(笑)。楽器ではなくて廃材なんかを使って感情を超えた所で音楽を鳴らしているという事がとにかく衝撃的でしたね。

-バンド名から既に尖っていますよね(笑)。それではそういった音楽から感じた衝撃を作品に反映することもありますか?
小林:怒りが音に表現されていて、言葉も分からないのに感じる感動というのは自分たちの作品にも通じる部分かもしれないですね。人って破壊衝動をそもそも持っている生き物だと思っていて、芸術だとそれを合法的に表現できる訳じゃないですか。ミュージシャンって人からお金をもらって演奏しているから、自分が怒りの感情を音楽にぶつけて良いのだろうかっていう葛藤がある人もいると思うんですけど、そういうものが僕にはなかったのはインダストリアルという音楽を聴いていたからだと思うんですよね。そのまま世の中に出したら良くないってものでも、芸術にしてしまうと、人を感動させるものとして世の中に残すことができる訳じゃないですか。それが素晴らしいなと思って。

土屋昌巳との出会い

-小林さんはこれまでyukihiroさんを始め、浅井健一さんやCharaさんと憧れていた方と共演してきましたが、それらの夢はどうして叶えることができたのでしょうか。
小林:共演することが夢とも思ってなかったからだと思います。例えば共演する事が目標や夢だったらそれを自分たちで勝ち取らないといけなくなるじゃないですか。そうではなくて共演できた事はご褒美をもらった気持ちなんですよ。だから夢を叶えてこられたのではなくて、運が良かったとしか言いようがなくて。話は少し変わるんですけど、21歳の頃に自分がCDデビューしてプロになった事を振り返って、最近分かったことがあるんです。当時は僕も高松君も自分たちがCDデビューする事を疑う事すらしなかったんですよね。単純にぼーっとしていたとも言えるんですが、デビューできなかったらどうしようかって事を考えてすらいなかったんですよね。自分たちはきっとデビューするっていう風に活動していると根拠のない自信だけはできるじゃないですか。きっとデビューするものだと思っていたので、デビューするために頑張るとすら思っていなくて。逆に今になって、色んな人と話す中で、僕自身が目標や野心の少ない人間だと発覚してきたので、今初めて夢や目標を信じ直さなくちゃいけない時期にきたっていう。

-そうなんですか。当時はデビューする事を疑ってなかったんですね。
小林:子供ながらの無邪気さとも言えるんですけど、デビューできなかったらどうしようって気持ちは演奏に出てくると思うんですよね。僕たちは未熟だったけど、そういった自信だけはあったんですよ。それがきっと僕らをデビューさせようと働きかけてくれたレーベルの方には通じたんじゃないかなと思ってます。

-それを経て改めて自分たちの夢や目標を信じ直さないといけない所にきたと。
小林:そうですね。かっこいいと思える音楽を表現する事は今までもやってきたし、これからもやっていくと思うんですよ。でもそれを世の中に発表するのか、発表する事によって自分が世の中に対して何がしたいのかっていう、作品を出した後の物事について深く考えてこなかったんで。そこに関して高松君はハッキリしていてL’Arc〜en〜Cielになりたいっていう願望が誰よりも強い(笑)。それを本気で信じていて彼の中には自分の中にあるL’Arc〜en〜Ciel像というものが明確にあって。彼にとっては輝かしいものや人に感動させる何かというのは一言でまとめるとL’Arc〜en〜Cielなんですよ(笑)。

-やはりTHE NOVEMBERSにはL’Arc〜en〜Cielの存在が大きいんですね。そこからどうやって音楽性が広がっていったのでしょうか。
小林:高松君と仲良くなったきっかけはL’Arc〜en〜CielとDIR EN GREYなんですけど、L’Arc〜en〜Cielのkenさんがインタビューでザ・キュアーやダイナソーJr.の名前を挙げていてそこから広がっていきましたね。hydeさんの好きなアーティストがインタビューでJAPAN(ジャパン)のデヴィッド・シルヴィアンだという事も知って。

-そしてそのジャパンには土屋昌巳さんもいたっていう(笑)。すごい偶然ですよね。
yukihiro:土屋さんがTHE NOVEMBERSをプロデュースするっていう話を聞いた時はなんか嬉しかったですね。
小林:土屋さんも僕たちが出会うのは運命なんだよって言ってました(笑)。小林君がベンジー(浅井健一)とバンドをやる事も僕と出会う事も何百年前から決まっている事だからって言ってて。土屋さんが言うんだったらきっとそうなんだろうなって(笑)。

-そこまで言って頂いたんですね(笑)。昔の土屋さんの映像を見たんですけど、話し方や歩き方まで小林さんにそっくりで驚きました(笑)。
小林:確かに以前から、土屋さんに仕草や言葉遣いが似ているってよく言わるんですけど、影響を受けた人達から僕も影響を受けているんで隔世遺伝みたいな所はあるかもしれないですね。

リリース

『At The Beginning』
発売日:2020年5月 ※詳細は後日発表
シーケンスサウンドデザイン/プログラミング:yukihiro(L’Arc~en~Ciel、ACID ANDROID)

THE NOVEMBERS 2020TOUR – 消失点

ANGELS
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【Live】
8/11(Thu/holiday) 川崎CLUB CITTA‘
acid android in an alcove vol.8×THE NOVEMBERS PRESENTS 首
act: acid android / THE NOVEMBERS / 石野卓球 / special session(Depeche mode Cover) Vo:KENT(Lillies and Remains),Gt:土屋昌巳,Ba:高松浩史(THE NOVEMBERS),Key:TOM(PLASTICZOOMS),Dr:yukihiro(acid android)
info:https://www.creativeman.co.jp/event/acidandroid_novembers/