最終更新: 2019年1月2日



昨年、SXSWのパフォーマンスで高い注目を得たロンドン発のガールズロックバンド、ドリーム・ワイフ。ありのままにポップであること、ロックであることを貫いたデビューアルバム『Dream Wife』にこめた思いとは?メンバー3人の総意をメールで聞いた。

アーティスト:ラケル・ミョル(Vo.)、アリス・ゴー(Gt.)、ベラ・ポドパデック(Ba.) インタビュアー:桃井 かおる子

−まずは日本のリスナーにメンバー紹介をお願いします。加えて、皆さんがどのようにしてバンドを結成したのかについて詳しく教えて下さい。
ドリーム・ワイフは私達3人でやってるの。アリスがギターを弾いて、ベラがベース、ラケルがボーカリストよ。それから今はドラマーのアレックス・ペイブリーと一緒に演奏してるわ。バンドは、私達みんながブライトン大学のそれぞれ別のアート系の学科で学んでいたときに始めたの。ブライトン大学は、クリエイティブなこととか共同制作とかをやっていくのにとても適したところで、バンドとしてスタートするにはすごく面白い場所だった。ドリーム・ワイフは初めからカナダに行く構想があって結成して、大学のギャラリーでやった初めてのライヴはひとつのアート作品みたいになったわ。

−ドリーム・ワイフというバンド名には、どのような意味が込められているのでしょうか?
ドリーム・ワイフって名前はすぐに思い浮かんで、一緒に演奏を始める前から決まっていたの。まず直感でその名前がぴったりだと思ったし、感覚的におもしろいと思ったの。でも実は何層にも意味があって、言葉の機微とか微妙な意味合いとかをいまだに学んでるところよ。 例えば、「理想の奥さん」なんていう、女性が何かの賞みたいに手に入れられて所有される目標であるみたいな、不条理なコンセプトにされていることをばかにして茶化してる。それに「wife」という言葉の語源を調べてみると、それが単に女性を意味する言葉として使われていることもわかるわ。だからドリーム・ワイフは女性という意味での「wife」って言葉を、生まれ変わらせることができるんじゃないかと思うの。私たちは理解を深めながら、お互いの「wife」になっていくの。お互いに支え合って、お互いの面倒をみて、一緒に成長していく。夢を追いながら、ね。

− 皆さんはバンドを結成して間もなく、オリジナル曲がたったの4曲しかない中でカナダとヨーロッパでツアーを敢行されたそうですね。作品を発表したのでもないのに、なぜそのような行動に打って出たのでしょうか?また、当時はレーベルにも所属していなかったということで、誰の力を借りるでもなく皆さんだけでツアーを回られていたとのことですが、ライブハウスの予約や日程調整諸々のことはどのようにして進めていかれたのでしょうか?加えて、そうした中で特に大変だった出来事はありますか?
ドリーム・ワイフとして、私達はどんなものにも邪魔されずに、いつでも大きな夢を持ってやってきた。当時は、音楽業界の仕組みとかそこでどう動いていいかもよく分からなくて、ただカナダの友達のところに行きたくて、カナダで演奏したくて、カナダを旅してみたかったの。友達の好意で(ラケルはアイスランド・エアウェイブス・フェスティバルでたくさんのカナダのミュージシャンと出会っていた)、家の床に寝かせてもらったり、公共の交通機関で眠ったり、そして、刺激的な最高のライヴをいくつもしたわ。素敵な友達もできた。ちょうどその頃に、このバンドには何か特別なものがあるって感じて、それをもっと追求していきたいと思って。じゃあ次は自分達の地元のブライトンでライヴをしようか?首都のロンドンまで足を伸ばしてみようか?って風に、ストーリーが続いて行ったのよ。

-こうした経験を経てリリースされるデビューアルバム『Dream Wife』ですが、なぜタイトルにバンド名をそのまま付けたのでしょうか?
別のアイデアもたくさん考えたんだけど、あんまりはまってる感じがしなくて。シンプルだし、ダイレクトで、いい自己紹介になると思ったのよ。

−今作はどの曲もキャッチーでポップで、ボーカル・ラケルさんの可愛らしい歌声とギター・アリスさん、ベース・ベラさんのバキッとした演奏のギャップがとても印象的でした。今作の内容に関して特にこだわった点について教えて下さい。
何よりもまずドリーム・ワイフはライブバンドだから。今回のレコードを作ることに関しては、ライブサウンドのエネルギーを形あるものにして記録することがとても大事だと思ったの。レコーディングは、テープを使って、マルチトラック・レコーディングをしたのよ。ラケルは小さなブースで歌って、ペイブリーはそれより少し大きいブースでドラムを叩いて、アリスとベラは一番大きなブースで演奏して。(でも、ベラのアンプなんてブースのすっごく小さな棚にあったのよ。)テープの長さが20分しかなかったから、私達4人は、ぎりぎりまで練習してからレコーディングに挑んだわ。おかげでお互いの気持ちがうまく伝わって、グルーヴに入り込んだ、本当に良いレコーディングになったわ。レコーディングスタジオはイーストコートと言って、60年代風の宇宙船型ツリーハウスのような雰囲気がある素晴らしいところだった。残念ながら、私たちがレコーディングをした1週間後にそこは閉鎖されてしまったのだけど。このレコーディングのやり方だと、ギターのパートとバックボーカルを増やすことができたのも良かった。ライヴではそれは難しいから。こういうエネルギーを感じて、いけるところまで出し切った本当にワクワクしたレコーディングだった。

−4曲目の「Hey Heartbreaker」のMVを拝見しました!この曲のMVはシュールな内容のアニメーションになっています。なぜ、アニメにしようと思ったのですか?また、アニメの中でバンドがロボットになって登場していますが、なぜそうした内容にされたのですか?
私達はいろんな人たちとコラボレーションして、新たなアイデアや影響を取り込んで、ドリーム・ワイフの世界を一緒に育てて形造っていくことをいつも楽しんでいるの。「Hey! Heartbreaker」のビデオは、私たちにとって新たなコラボレーターのメイソン・ロンドンに「Hey! Heartbreaker」の世界観に命を吹き込んでほしいってお願いしたの。マシーンになった自分達が登場して、ガンガン演奏しまくるのを見るのは不思議な感じ。別の現実社会で、ロボットバージョンの私達がこんな風に冒険を続けていって欲しいなと思う。森の中でロボットの革命を企んでたりとか、他のロボットたちのために秘密の素敵なショーをやってたりとか。

−最後に収録されている「F.U.U.」は、アルバムの中でも特にハードなロックナンバーになっていると思います。歌詞も挑発的な内容になっていますが、この曲はどのような意図で作られたのでしょうか?
この曲の最大の秘密は、実は髪を切ることについて歌ってるってことなんだけど。同時に、なんであれ人を怒らせておきながら、謝る気のないふざけたやつらについて歌っているの。人の太ももを叩き続ける気持ち悪い教習所の教官とか、「君はギターの腕をもっと磨いた方がいい、いつまでも可愛いままじゃないんだから。」って言って来る野郎とか、性的暴行を受けた被害者に対して、挑発的な格好をしていた方が悪いんでしょっていう見方をして、見下すような友達とか。それと、私たちがいつも一緒にいる最高の仲間、フィーバー・ドリームがラップしてくれていて、中毒性のあるトラックになったわ!

−アルバムの内容からも伺えるように、皆さんはポップであるということに強いこだわりを持っているそうですが、なぜそのような考えを持っているのでしょうか?また、バンドにとってポップとはどういうことでしょうか?
ポップミュージックはとても面白いわ。“ポップ”との関係性というのは、私達が楽しむっていう姿勢(音楽性とその他のことに関しても)すべてについて言えるかもしれない。“クール”と思われているものを期待通りに描くのではなく、どう感じて、何が面白くて、何が好きなのかってことを表現したい。『Polyester』って雑誌を作ってる友達が言ってたんだけど、「自分の悪趣味なところを信じろ。」ってことだと思うの。

−(上記に関して)皆さんは「思い立ったら即行動!」的な、DIYな活動を展開されていると思います。バンドにとってDIYであることは何か特別な意味を持っているのでしょうか?また、皆さんがDIYでいるということは、ポップであることへのこだわりと何か関係しているのでしょうか?
私達は長い間、DIYな方法でバンドをやってきた。レーベルやマネジメントのサポートもなく、ブッキングも自分達でやって、ほとんどお金にならなかったわ。こういう時間があったからこそ、私達は自由に、自然で正しいと感じたあらゆる方法で成長することができた。私達は変わった場所でたくさんライブをして、それはすごく大変で、素晴らしくて、怖くて、自由だった。今では、私達は大好きなラッキー・ナンバーっていうレーベルとマネージャーとすごくいい関係を築いていて、厳密な意味ではもうDIYバンドじゃなくなった。でもいまだに、その精神とエネルギーを持ち続けているわ。私達はビデオを友だちと一緒につくっているし、可能な限りすべてのことに自分達が直接関わることにしていて、制作については全面的にコントロールしてる。色々な意味で、私たちはDIYな面の裏返しにポップな面を持っていると思われるのかもしれないけど、実際はその二つの力が押し合ったり、引き合ったりしているところが面白いと思ってるの。

−バンドの在り方や音楽性について特にインスパイアされたアーティストを3組教えて下さい。また、そのアーティストからどのような影響を受けていると思いますか?
デヴィッド・ボウイからはロックやジェンダーにおける演奏やパフォーマンスのやり方を学んだわ。マドンナにはダンスやポップさに影響を受けたし、主導権を持って、自分達がやりたいことを理解して、それを追い求める強さを持つ女性としてのあり方のお手本としても影響を受けた。ビキニ・キルからは、女性の攻撃性とか正当な怒りとかを女性が全面に出すという部分に影響を受けたわ。

−それでは最後に、日本のリスナーにメッセージをお願いします!
死ぬまでに絶対やりたいことのリストの中で、日本で皆の前で演奏するってこと以上に大事なことはないの。待ちきれないわ!楽しみにしてて!

【Magazine】
・Vol.25
表紙はサマーソニックで来日したガールズ・パンクバンド、ドリームワイフと前号でも登場したUCARY & THE VALENTINEの独占対談が実現!DIYで活動すること、ポップであること、女性でありながらアーティストであることのリアルについて聞いた。

・【デジタル版】Magazine Vol.25.5
本誌(Vol.25)の内容だけでなく、未公開記事・写真もご用意。Vol.25.5ではGLIM SPANKYが主催したMAGICAL WEEKEND PARTYの大阪・東京公演、HAPPYワンマンライブのレポートも!本誌に20ページ追加したスペシャルなボリューム(全57ページ)で掲載。

【Release】
『Dream Wife』
レーベル:Lucky Number / Hostess
発売日:2018年2月7日(水)
品番:HSE-6630
価格:2,200円(+税)
国内盤特典:ボーナス・トラック1曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付

収録曲:
01. Let’s Make Out
02. Somebody
03. Fire
04. Hey Heartbreaker
05. Love Without Reason
06. Kids
07. Taste
08. Act My Age
09. Right Now
10. Spend The Night
11. F.U.U.
12. Take It Back*
*日本盤ボーナストラック