最終更新: 2020年12月6日

ロバート・グラスパーとは

ジャズだけでなく、ヒップホップやR&Bなど様々な音楽を巧みに紡ぎ合わせ、新世代のジャズを創り出すテキサス出身のジャズ・ピアニスト、ロバート・グラスパー(Robert Glasper)。

今年のサマーソニック2019にも出演が決まっているということで彼について少し掘り下げてみたい。

新世代ジャズの第一人者

Robert Glasper
ロバート・グラスパーは幼少期より、ブルース、ジャズ、ゴスペル歌手である母親からの影響を受けピアノを始めた。

そして教会などでも演奏するようになり、ゴスペルからインスパイアされ、ゴスペルとジャズを融合させるというアイディアに辿り着いた。

そして高校卒業後にテキサスからニューヨークのマンハッタンにあるニュースクール大学という音楽学校へジャズ・コンテンポラリーミュージックを学ぶために移住する。

そしてその学校で出会ったネオソウル・シンガーのビラル・オリバーと出会い、共にライブやレコーディングを始めるようになった。

そこでヒップホップやR&Bアーティストとの関わりが増え、ロバートのジャズに新しい色が加わることとなった。

これまでの作品

そして2004年、デビューアルバム『Mood』がスペインのバルセロナにあるジャズ系列のインディーズレーベルであるFresh Sound New Talentよりリリースされる。

その翌年2005年にはアメリカの名門ジャズレーベルであるBlue Note Reocrdsとの契約を果たした。

同年、ヴィセンテ・アーチャー(ベース)、ダミオン・リード(ドラム)とのトリオで『Canvas』というアルバムをリリース。

2007年には『In My Element』、2009年には『Double-Booked』をリリースする。

この『Double-Booked』というアルバムの後半はロバート・グラスパー・エクスペリメント名義の楽曲で構成されている。

この“ロバート・グラスパー・エクスペリメント”については後ほど説明させてもらう。

2012年、ロバート・グラスパー・エクスペリメント名義でリリースしたアルバム『Black Radio』エリカ・バドゥ(Erykah Badu)やビラル(Bilal)といったボーカリストたちが参加。

このアルバムに収録されているニルヴァーナ(Nirvana)の「Smells Like Teen Spirit」のカバーも有名で、前情報無しに聴くとまさかニルヴァーナのカバーだとは気付かないジャジーなアレンジが冴えているカバーとなっている。

2013年には『Black Radio 2』を引き続きロバート・グラスパー・エクスペリメント名義でリリース。

参加メンバーはケイシー・ベンジャミン (サックス / ボコーダー)、デリック・ホッジ (ベース)、マーク・コレンバーグ (ドラムス)。

そして2015年には『Covered』というアルバムを再びロバート・グラスパー名義でリリース。

2016『Everything’s Beautiful』では、生誕90年のマイルス・デイヴィスに捧げるトリビュートアルバムということでマイルス・デイヴィスとロバート・グラスパーのダブル名義での発売となった。

このアルバムには他に、ハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)やスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)も参加している。

同年2016年のアルバム『ArtScience』では再びロバート・グラスパー・エクスペリメントとして、『Black Radio 2』と同じメンバーでの発表となる。

ロバート・グラスパー・エクスペリメントとは

ロバート・グラスパー名義ではピアノ、ベース、ドラムのトリオ編成で活動している。

『Black Radio』と『Black Radio 2』、そして『ArtScience』ではロバート・グラスパー・エクスペリメント名義でリリースしている。

そもそもエクスペリメントとは日本語で“実験”という意味だが、このロバート・グラスパー・エクスペリメントの形態ではさまざまなアーティストが参加し、ヒップホップやR&B、ネオソウルなど多彩なジャンルをジャズと組み合わせる、いわゆる“実験的”な形態を取っている。

このエクスペリメント名義ではボーカルも加入しているので、普段インスト曲を聴かない人や本格的なジャズはまだ早いかなと感じる人にもスッと馴染むだろう。

ライブではその場の観客の好みに合わせて、しっとりとジャズをするのか、ダンス感のあるビートで盛り上げるべきなのか等、臨機応変にその場の空気に対応しながらエンターテインメントとして観客を喜ばせることに重きを置いていると語っている。

さらにエクスペリメントのライブでは参加メンバーが違っていたりするので常に新鮮で新たな一面を垣間見る事ができる。

エクスペリメントの実験として『Black Radio 2』ではノラ・ジョーンズ(Norah Jones)やスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)など豪華メンバーともフィーチャリングしているのがこれまた面白い。

さらに彼の実績は世界的にも認められており、『Black Radio』ではベストR&Bアルバムでグラミー賞を受賞している実績を持つ。

サマソニでのライブはどうなる?

過去の日本でのライブというと、FUJI ROCK FESTIVAL ’16やサマーソニック、ビルボードライブなどにも出演経験がある。

今回のサマーソニックでは彼の盟友クリス・デイヴ(ドラムス)、ロバートの新グループ、R+R=NOWにも参加しているデリック・ホッジ(ベース)と『Black Radio』にも参加したヤシーン・ベイ(ラッパー)と共演する予定だ。

現在にツアーで決定しているライブはサマーソニックと、アメリカでのライブを3本(R+R=NOWを1本含む)のみなので、今回観ておく価値は十分にあると思う。

夏フェスで火照った空気に、メロウで心地よいエクスペリメンタルなジャズが気持ちいいはずなので、サマーソニックに遊びに行く人は彼のライブを是非とも観て欲しい!(Rio Miyamoto)

リリース情報

ARTSCIENCE

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GLASPER EXPERIMENT
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収録曲:
01.This Is Not Fear
02.Thinkin Bout You
03.Day To Day
04.No One Like You
05.You And Me
06.Tell Me A Bedtime Story
07.Find You
08.In My Mind
09.Hurry Slowly
10.Written In Stone
11.Let’s Fall In Love
12.Human

ブラック・レディオ

ブラック・レディオ

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ロバート・グラスパー・エクスペリメント
EMIミュージックジャパン (2012-02-22)
売り上げランキング: 51,132

収録曲:
01.Lift Off (Feat. Shafiq Husayn / Mic Check)
02.Afro Blue (Feat. Erykah Badu)
03.Cherish The Day (Feat. Lalah Hathaway)
04.Always Shine (Feat. Lupe Fiasco And Bilal)
05.Gonna Be Alright (F.T.B.) [Feat. Ledisi] 06.Move Love (Feat. King)
07.Ah Yeah (Feat. Musiq Soulchild And Chrisette Michele)
08.The Consequences Of Jealousy (Feat. Meshell Ndegeocello)
09.Why Do We Try (Feat. Stokley)
10.Black Radio (Feat. Yasiin Bey)
11.Letter To Hermione (Feat. Bilal)
12.Smells Like Teen Spirit

ライブ情報

SUMMER SONIC 2019
8/16(金)、17(土)東京会場:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)

プロフィール

Robert Glasper
1978年4月6日、テキサス州ヒューストン生まれ。ピアニスト、作編曲家。母親の影響で、一家が住む教会でピアノを弾き、ゴスペルやジャズ、ブルースといった音楽に触れる。青年期に入り、ヒューストンの有名なハイスクール・フォー・ザ・パフォーミング・アーツへ入学。卒業後、マンハッタンのニュー・スクール・ユニヴァーシティに入学。在学中にクリスチャン・マクブライド、ラッセル・マローン、ケニー・ギャレットなどとギグを行う。その後、ニコラス・ペイトン、ロイ・ハーグローヴ、テレンス・ブランチャード、カーメン・ランディ、カーリー・サイモン、ビラル、Qティップ、モス・デフなど、ジャズ~ヒップ・ホップまで幅広い分野の面々と共演する。 2003年、デビュー・アルバム『モード』(フレッシュ・サウンド・ニュー・タレント)をリリース。 2005年、ブルーノートと契約。同年、移籍第1弾『キャンバス』をリリースし、ジャズやゴスペル、ヒップホップ、R&B、オルタナティブなロックなどのエッセンスを取り入れた革新的なスタイルで、各方面から高い評価を得る。 2007年、ジャズとヒップホップを結びつける究極のピアノ・トリオ作『イン・マイ・エレメント』を発表し、ブルーノートの新世代ピアニストとしてさらに注目を浴びる。2009年、よりアコースティック志向の“トリオ”とよりヒップホップ志向の“エクスペリメント”の自身が推進する2つのバンドを1枚に集約した、グラスパー本来の姿を投影した話題作『ダブル・ブックド』を発表し、グラミー賞にもノミネートされた。

おすすめ曲

「Afro Blue」

「Day to Day」

ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
Rio Miyamoto
BELONG Mediaのライター/翻訳。18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、インターナショナルビジネスを専攻。兵庫県出身のサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。2017年には全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をインディーズレーベル、Dead Funny Recordsよりリリース。サイケデリック、ドリームポップ、ソウル、ロカビリーやカントリーなどを愛聴。好きなバンドはTemplesとTame Impala。趣味は写真撮影と映画鑑賞。
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