最終更新: 2021年5月2日

アーティスト:太田(Vo,Gt) インタビュアー:桃井かおる子

-Daisy Looの名前の由来について教えてください。
太田:結成当時にメンバーが好きだったF・スコット・フィッツジェラルドの『華麗なるギャツビー』っていう小説があって、そのヒロインの名前がDaiyで。Looは響きだけで決めて。

-バンド結成のきっかけについて詳しく教えてください。
もともと神戸のライブハウスでよく顔を合わせていたメンバーなんですよ。ちょうどその頃、それぞれの組んでたバンドが解散したばっかりだったから、そこから新しくバンドを組んで。ギターとベースは同じバンドやったんですけど。一番最後に入ったのは、ドラムの谷ですね。

-全国流通版『8songs EP』について伺いたいのですが、このタイトルはどうやって決まったんでしょうか。
すごいたくさん候補があったけど、メンバーの意見がまとまらなくて、全然決まらなかったんですよ。最終候補まで絞ってもやっぱり違うなって。どうしても期日もあるし決めなあかんっていう状況で、俺が「8曲入りやし、今回はこれでいこう」って事で決めました。

-ちなみにお蔵入りの案はどんなのがあったんですか?
The Strokesの曲のタイトルで「hard to explain」っていうのをもじったり、自分達の歌詞から取ったり曲名から取ったり、そういうラフなのがいいなって思ってたんですけど、結局なんか違うってなって。しっくりこないというか。で、J・D・サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』みたいなタイトルも好きなんで、もうタイトル付けれないからこれでいこうって。

-みなさん、けっこう小説を読まれるんですか?
そうですね、ライブ前の楽屋でも読んでますね。

-どんなものが好きですか?共通して好きなものとかありますか?
オスカー・ワイルドや町田康が好きな奴がいたり、村上春樹が好きな人がいたり。みんなバラバラですけど、全員本が好きですね。

-それぞれに好きな作家さんはあるけれど、どこか共通項があったりするのかなと思うんですけどその辺りはどうでしょうか?楽曲に影響してる部分もありますか?
好きな音楽も本もみんな結構バラバラで。ただ時代を超えて残るとか普遍的なものっていう部分で繋がっていて、それは曲作りに反映してると思うんですけどね。

-普遍的な音楽というと、例えばThe Beatlesのような、ソングライティングが素晴らしい楽曲っていう感じですか?
そうですね、そういう音楽が好きで。時代をこえれるようなメロディーの曲が作れたらいいなと思ってますね。流行に流されないような。

-Daisy Looの曲って、すっと耳に入ってくるような、キャッチーなメロディーが多いなと思うんですけど、曲を作る上で目標というか意識しているアーティストはいますか?
The BeatlesやJohn Lennonが好きですね。最近だと、The Strokesも好きです。

-邦楽だと何かありますか?
JUDY AND MARYや、最近だと奇妙礼太郎さんとか。Mr.Children、サザンオールスターズ、DREAMS COME TRUEとか。

-メジャーなものも聴かれるんですね。TwitterでMark Ronsonの新譜を買ったと言われてましたよね。
そうですね。Mark RonsonもBruno Marsから入ったんですけど、Taylor SwiftやOne Directionも好きです。

-あまり時代も洋楽・邦楽も関係なく聴かれていて、ソングライティングにも影響が出ているんですね。どの曲も歌詞の内容が赤裸々だと思うのですが、これらは太田さんの経験がベースにあるのでしょうか。
そうですね、大体は。でも創作も加えてます。

-その創作の部分は、例えば、先ほど話された好きな本の影響もありますか?
文章の一部を引用していることもありますし、そこから想像を膨らませることもありますね。

-経験からではなく、本や映画から想像がふくらんでできていくパターンもありますか?
そういうのも半分くらいはあるかもしれないですね。

-例えば、そういう風にできた一節とかはありますか?
「彼女は後ろ側の席で泣いていた」っていうのは、トルーマン・カポーティ(の作品)だったかな?車中で泣いてる描写があって、その短編がすごく印象的だったからそこから作りましたね。

-正直、ご自身の経験がほとんどかなと思っていたのでちょっと意外でした。文学の話をされるアーティストさんにお会いしたのが初めてです。まだお若いですよね?
今27歳です。

-え!そうなんですか?同い年です(笑)!もっと若いと思ってました。
そうなんです、音楽始めたのが22、23歳くらいだったんで、遅かったんです。

プププランド愛はズボーンと仲良しって聞いてたんで、彼らと同じ24歳くらいかと思ってました。
ギターだけは若いんですけど、他のメンバーは2,3歳年上なんです。

-そうなんですね。『華麗なるギャツビー』って私達の世代にとって決してメジャーな作家という訳ではないと思うんです。古い英米文学にはどのように出会ったんですか?
小学校の時にシドニィ・シェルダンっていう文豪の本をたまたま図書館で読んで、その時にサリンジャーもたまたま読んで。小6か中1くらいだったと思うんですけど。その本の中にいろんな小説家の名前が出てくるじゃないですか、それで広がっていって。日本の文学はもっと後になってからでしたね。

-小6や中1で図書館に通う男の子って少なくないですか?
その頃バスケットボールをやっていて、その本を読むために図書館に行ってたんですけど、その時に他の本も借りていた感じでしたね。

-洋楽もよく聴かれるということですけど、洋楽の歌詞って和訳すると聴いてる方が恥ずかしくなるようなストレートな事を歌っていることが多いと思うんです。太田さんの歌詞にはそれに似たようなストレートさを感じることがあるんですけど、歌詞を書いている時、いつもどのようなことを考えていますか?
洋楽の歌詞を和訳で聴くことはなくて、そういう部分を意識したことはなかったですね。歌詞に関しては、清竜人のストレートさ。聴く人の胸にグッと入り込む力が強くて、その分聴くときに「よし聴こう」っていう気になると思うんですけど。僕は個人的にはそういうのよりも、さらっと聴けるものを作りたいので。けど何回も聴いていったら歌詞の内容も面白い、っていうようなものを作るように意識してます。

-恋愛をテーマにしている歌が多いと思うんですけど、恋愛以外で歌ってみたいテーマってありますか?
街のことや自分が属してるコミュニティについてですね。街を歩いてて思うことや、あまり規模の大きくないこと。その方が結果的に広いことを歌える気がするので。

-歌っている内容が、第三者に向けられているものというより、「対ひとり」っていう雰囲気を感じます。その対峙するものを広げていきたいとは思いますか?
いや、対象者は自分で会ったりあなたであったり、狭くしておきたいと思いますね。

-どうしてそこにこだわるんでしょうか。
そういう歌が好きだっていうのが、たぶん1番の理由だと思うんですけど。多くの人に向けられた歌よりも、ひそひそ話のような私小説のようなものだったり、身近な事を歌っているような歌だったり、身近な事を歌う中から世の中の未来を引き出すような歌が好きなんですよね。最初から大きな視点で歌っている歌が僕自身あまり好きじゃないので。まだまだ足りないですけど、もっとちゃんと自分の事や傍にいる人の事を見て歌にしたいなって思うんです。

-なるほど。だからなのか、歌詞がすごくストレートに入ってくる感じがあります。尾崎豊のような雰囲気も感じるんですよね。
あぁ、尾崎豊好きですね。それは嬉しいです。

-太田さんの世代のバンドだと、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかBLANKEY JET CITYに影響を受けてるバンドが多いと思うんですけど、Daisy LooはそうじゃなくThe StrokesやThe Kooksを通ってるんでもう少し若いのかなと思って。
確かに、そうですよね。あとから聴いてかっこいいなと思うんですけど、その時はそんなには惹かれなかった。もしかしたら聴く時期っていうのがあるんじゃないんですかね。The Libertinesを40歳で聴いて心奪われる人もそれはそれで問題だと思うんですけど(笑)。要は聴くタイミングっていうか。音楽的には凄く好きなので今でも聴いてますけど。

-尾崎豊はご両親の影響ですか?
うーん、どうですかね…

-例えばテレビで流れる懐メロで聴いたとか?
そうだと思います、両親の影響というよりは。はっぴいえんどもそういう感じで掘り下げていって。

-私たちが中高生の頃にブレイクしてたアーティストって聴いてました?例えばASIAN KUNG-FU GENERATION、BUMP OF CHICKENとか。
レミオロメンやケツメイシ、RIP SLYMEとかですかね。その辺も影響受けてますね、普通に聴いてました。

-そうなんですね。太田さんの歌声はインパクトのあるものだと思うのですが、歌い方などボーカリストとしてお手本にしているアーティストはいますか?
中高生の頃カラオケには、ほんまによく行ってたので。当時流行ってた歌から古いものまで歌ってて、そこで学んだんですかね。

-最近の若い世代のバンドマンって、いろんな音楽をフラットに聴ける人が多い印象があるんですけど、太田さんにも同じものを感じてました。
うん、同時代的に聴けるというか。

-洋楽、邦楽、時代を問わずいろいろな音楽を聴かれている中で、Daisy Looのバンドスタイルや音楽のルーツになってるアーティストはどなたですか?
メンバー全員バラバラなんですけど、The Rolling Stones、The Beatles、The La’sとかがみんな大好きで。あとは90年代以降の音楽、2000年以降の音楽を手本にしてますね。

-太田さん自身が、Daisy Looに影響を与えていると感じるアーティストはどなたですか?
僕はThe Beatlesだと思うんですけどね。4人が立ってるバンドが好きなので、そういうバンドになりたいと思ってます。

-4人の個性が立ってるバンドになりたいっていうことですけど、今後他のメンバーが曲を書かれることってありますか?
あり得ると思いますね。メンバー全員作詞作曲できるんで。まだそれは(ライブで)使ってないんですけど、使いたいと思ってますね。みんな曲書いてちょくちょく聴かせてくれてるんで、今後の作品ではごちゃまぜにできたらいいなって思ってます。

-全員が曲を書けるって凄いですね!4人の趣味は少しずつ違うっておっしゃっていたので、その4人のアイデアがひとつになったら今とはまた違った音になるかもしれないですよね。では、今後Daisy Looはどんなバンドになっていくと思いますか?
大勢の前でやれるバンドになりたいんですよね、大きな場所でやりたいです。

-ゆくゆくは武道館も?
はい。一番のバンドになりたいです。

-拠点を東京に置きたいっていう想いはありますか?
いや、東京に憧れもないし、そっちの方が都合が良いのであればそっちに住むけど、っていう感じです。

-関西のコミュニティの中から何かを発信していけるから東京に行く必要はない、という感じですか?
そうですね。こっちでやれることはまだあるし、その都度、いい場所やいい人を選んでやっていけたらいいなと思います。

-今、盛り上がってる関西シーンのなかで、Daisy Looはどんなことをしたいと思ってますか?
俺らの音楽って多分、ストレートなロックを鳴らしてる方だと思うんです。ロックの王道という意味で、一曲一曲優れた歌をちゃんとしたバンドサウンドでやって、一曲終わる毎に凄い量の拍手をもらえる。そういう位置に行きたいですね。

-Daisy Looの音楽は、音源で聴くのももちろん良いんですけど、ライブ向きだなって思います。より説得力が増すというか。みなさん演奏も上手なので、ストレートなロックだからこそ演奏力も際立つように思います。
ありがとうございます、嬉しいです。

-このアルバムはどのような人に聴いてほしいと思いますか?
若い人に聴いてもらいたいですね。何歳でも良いんですけど、心が若い人。そういう人達の生活の一部になれたらいいなと思います。

-歌詞の視点がコミュニティの小ささにこだわるものになっているのもそういうことなんですかね。その中でも、特にこういう人に聴いて欲しいっていうのはありますか?
「新しい心」のサビで“僕はあの子が好き 自分の道を行くから”っていうフレーズがあって。そういう人が好きなんですよね、流行とか周りの事とかを気にせず、自分のちゃんとした道を進む元気いっぱいの女の子。そういう人に向けて書いてる部分もありますね、だからそういう人に聴いて欲しいです。

『8 Songs EP』