最終更新: 2019年1月2日



2017年の若手ロックシーンを最も騒がせたのは、LAからやってきた新人バンド・スタークローラーに違いない。結成2年目にして、この話題性。新人バンドと言いながら、その域を逸脱している。ユニクロの海外CMにタイアップされ、シングル『Ants』のみのリリースにも関わらず、大型新人だと話題をかっさらっていったのは記憶に新しい。そして大物アーティストたちからも大絶賛されているというのも話題の一つ。フー・ファイターズのデイヴ・グロールは自身がブッキングを務めたロックフェス『Cal Jam』で、どのアーティストよりも先にスタークローラーに声をかける程のお気に入り具合である。なぜ彼らは、ここまでロックに生きる人間たちに絶賛されているのか?1月19日についにリリースされる待望のデビューアルバム『Starcrawler』を通して、彼らが今後のロックシーンを引率する存在となる可能性を追求してみたい。

まずこのアルバムを聴いて、“10代なのに、こんなにもすごい作品を作った”と考えるのはとても野暮なことだと思った。そんなことに触れる余裕もないくらい、刺激的で、ソウルフルで、魅惑的。例えるとするならば、不良が鳴らすド直球なロック愛。しかし、若さを活かした粗さや、鋭く硬い様も携えている。イギーポップを彷彿とさせるロックンロール精神。そしてウルフ・アリスに通ずる音楽への絶対的エネルギーに、貪欲さとインパクト。印象的なギターリフが胸を掻き立てる「Train」、歪みをぶちまけたギターロックが響く「Love’s Gone Again」の流れは我々が「Ants」で見たスタークローラーがそのままに力を発揮している。とても期待通りだ。しかし、今作では彼らの表現の幅の広さを知ることとなる。彼らの地元をタイトルにした「I Love LA」はMVも公開されたリードトラックだが、この時点でいつものゴリゴリに押すスタイルとは一風変わった伸び伸びとした音像を見せている。まるで昼間のドライブに最適なくらい聴き心地も軽くて、爽快。安定感といい、キャッチーさといい、この曲の大物感に驚いた。

このバンドがこれ程注目を浴びた要因として欠かせないのが、ボーカルのアロウ・デ・ワイルド。今作では、彼女のボーカリストとしての魅力を堪能することができる。「Different Angles」や先述の曲たちのような、彼らの持ち味でもあるクールなリズムセクションとハードでアタックの強いギターサウンドを鳴らす曲では、目をかっぴらき、線の細い身体を奇妙に揺らす彼女のクレイジーな姿を思い浮かべることが出来る芯の強いボーカルだ。一方、「Tears」では吐息と憂いを交えた彼女の愛らしい歌声を聴くことができる。こんな歌声を出せるのかと驚いた。喧騒の中ボーカルもギターも叫びあげるようなハングリーな音楽とただならぬ色香を残すところはヤー・ヤー・ヤーズの『Is Is』を彷彿とさせた。

「スタークローラーはロックの未来。」と語ったのはアメリカのシンガーソングライターの筆頭的存在であったライアン・アダムス。彼が今作のプロデューサーを務め、ライアンの所有するPax-Amスタジオにて収録。その際、アナログテープでレコーディングをしたという。だからこそ、各曲ともに60年代70年代のようなアナログ感、ライブをそのまま焼き映したような臨場感や温かみを持っている。また、「Full Of Pride」をはじめとして、歌としても非常に聴きやすいナンバーも多く、これもライアンの匠の技が施された結果だろう。それゆえに、このアルバムはワルガキががむしゃらに作ったアルバムで終わらず、色の異なる各曲でスタークローラーの持ち味と表現の幅を提示し、色んな人の耳や心に届く音楽として形を整えて作られたアルバムとなっている。

『Starcrawler』はロックシーンを脅かす存在となる。しかし、それは“10代が作った音楽”が脅かすのではなく、“いちアーティストがとんでもない音楽”がシーンを揺るがすのだ。徹底的なキャラクター作りや、やんちゃに音で遊ぶ様、そして絶対的なフロントマンとしてのアロウの魅力。これらにおいて、“これはきっと大物になる”と思わざるを得ないポイントを見事押さえていたスタークローラー。加えて、60年代から70年代ロックへの愛と復興。それらを体現し、現在進行形でこのスタイルを貫く彼らだからこそ、各メディアや大御所たちから支持されるのだ。これらはまるごと今作にも反映されており、その上これからの可能性の拡大を見せている。彼らのスタートを飾るには最高の作品となっただろう。(pikumin)

【Magazine】
Vol.22
■スタークローラーインタビュー後半・メンバーが語るルーツやファッション
■PLASTICZOOMSインタビュー後半・SHOが語る“音楽やファッション、自身の人柄がどう変わっていったかについて”
■『Taboo』対談後編・ケンゴマツモトが語る“即興演奏について”、他

【Live】
2018/3/7(WED) 渋谷O-nest
2018/3/8(THU) 名古屋 HUCK FINN
2018/3/9(FRI) 大阪 CONPASS
2018/3/10(SAT) 京都 METRO

TICKET:前売¥5,400(税込/1ドリンク代別途)

[一般発売]:1月13日(土)より
東京:e+ (http://eplus.jp/)、ぴあ、LAWSON (Lコード:72968)、BEATINK.COM
名古屋:e+ (http://eplus.jp/)、ぴあ、LAWSON (Lコード:43722)、BEATINK.COM
大阪:e+ (http://eplus.jp/)、ぴあ、LAWSON、BEATINK.COM
京都:LAWSON (Lコード:53369)、ぴあ (Pコード:102-787)、e+ (http://eplus.jp/)、BEATINK.COM

【Release】

『Starcrawler』
レーベル:ROUGH TRADE / BEAT RECORDS
発売日:2018年1月19日(金)
品番:RTRADCDJP890
価格:2,000円(+税)
国内盤特典:ボーナストラック3曲追加収録/解説・歌詞対訳封入