最終更新: 2024年1月10日

2023年のBELONG Media(ビロングメディア)は、下記の3つのコンセプトをもとに、国内外問わず多くのバンドやアーティストへのインタビューとレビュー、

そして“スタッフおすすめの新曲プレイリスト”の更新を中心に情報を発信してきた。

・自分たちが興味のあるアーティストのみ掲載すること

・国内外を問わずにアーティストを取り上げること

・アーティストのルーツを知ること

こういった活動を通して、国内のみならず海外からのリアクションも多く非常に実りの多い1年だった。

今後も光のあたってないものには光をあて、光のあたっているものはその概要を紐解いていく、そうすることで音楽の多様性や豊かさを伝えていきたいと思っている。

音楽シーンにおいてはコーチェラのBad BunnyとBLACKPINKといったヘッドライナー、NewJeansやYOASOBIらのグローバルチャート席巻、米津玄師の「KICK BACK」がアメリカレコード協会(RIAA)によりゴールド認定など、

非英語圏、特にアジアの音楽の活躍が目立ったことも嬉しい動きだったのではないだろうか。

ゆえに2023年の年間シングルベストに関しても、アジア圏や欧米圏問わず世界的なトレンドとは関係なく曲を選出している。

地域を問わずに世界の音楽とのアクセスすることが簡易になり、老若男女問わずストリーミングサービスで音楽を聴くことがスタンダードになった昨今では相対的な批評よりもパーソナルな批評やランキングに価値がうまれるのではないかと考える。

今回もBELONG Mediaならではの年間シングルベストを楽しんで、読者のみなさんの音楽ライフに彩りと刺激を与えられたのならば本望だ。(滝田優樹)

年間ベストソング2023 プレイリスト

Melenas – Bang

アーティスト名 Melenas(メレナス)
曲名 Bang
出身地 スペイン・パンプローナ

スペインのインディー・ポップ・バンド、Melenas(メレナス)の「Bang」は、シンセサイザーを駆使した爽快なポップ・チューンである。

イントロから始まるシンセの高揚感は、まるで花火のように爆発し、リスナーの心を鷲掴みにしてしまう。

ボーカルのオイハナ・メレナスは、自分たちのアイデンティティや時間の重要性について歌っているが、その歌声は明るくてキュートで、どこか懐かしさすら感じる。

Melenasは、シンセサイザーで新しい音のパレットを作り出せるバンドだ。「Bang」は彼らの“今”を楽しむことができる痛快さがある。(Tomohiro Yabe)

Blondshell – Sober Together

アーティスト名 Blondshell(ブロンドシェル)
曲名 Sober Together
出身地 アメリカ・ロサンゼルス

サブリナ・タイテルバウムは、ロサンゼルスを拠点に活動するシンガー・ソングライターである。

彼女はBlondshell(ブロンドシェル)という名前で、自分のセクシュアリティや葛藤を率直に歌い上げる。

彼女のデビューアルバム『Blondshell』の中で最も印象的な曲が「Sober Together」だ。この曲は、薬物中毒に陥った友人との複雑な関係を描いたもの。

イントロから物語に引き込まれるような展開からスタートし、ガラスのようなファルセットで、友人に対する愛情と苛立ちとを表現する。

「Sober Together」は救いようのない日常について歌われているが、傷ついていながらも、希望に向かうような美しさがある。(Tomohiro Yabe)

The Japanese House – Sunshine Baby

アーティスト名 The Japanese House(ザ・ジャパニーズ・ハウス)
曲名 Sunshine Baby
出身地 イギリス・ロンドン

「Sunshine Baby」は、The Japanese House(ザ・ジャパニーズ・ハウス)のセカンド・アルバム『In The End It Always Does』の中でも特に印象的な曲の一つだ。

彼女は、自分の音楽のルーツである宅録のスタイルを捨てずに、より豊かで多彩な音楽表現に挑戦している。

ストリングスのアレンジやThe 1975のマシュー・ヒーリーとのデュエットが、彼女の持つドリーム・ポップとエレクトロニカの要素を引き立てる。

歌詞は、アルバムタイトルにもなっている“In The End It Always Does(結局はいつもそうなる)”というフレーズが使用されており、人生観や恋愛観を表現している。

自分の感じる幸せや不幸はすべて一時的であり、結局は同じ結果になるということを知りながらも、それでもなお、愛する人とのひとときを大切にしたいと願っているのではないか。

「Sunshine Baby」は、The Japanese Houseの音楽の魅力を凝縮した、感動的な作品だ。(Tomohiro Yabe)

Big Thief – Born For Loving You

アーティスト名 Big Thief(ビッグ・シーフ)
曲名 Born For Loving You
出身地 アメリカ・ニューヨーク

グラミー賞にノミネートされた傑作『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』をリリースしたBig Thief(ビッグ・シーフ)は、アメリカのインディ・シーンの実力派バンドだ。

だが、彼女たちの新曲「Born For Loving You」は、その名声にとらわれることなく、生まれたての音楽のようなフレッシュさすら感じさせる。

歌詞は、エイドリアン・レンカーが”I’m falling in love with you”と”I was born in love with you”と聞き間違えたフレーズと、フロリダのビーチで聴いたカントリー・ミュージックからインスピレーションを得たという。

Big Thiefは、常に自分たちの感情を率直に表現するバンドで、彼女たちのそういうスタンスがたまらなく好きだ。(Tomohiro Yabe)

MGMT – Mother Nature

アーティスト名 MGMT(エム・ジー・エム・ティー)
曲名 Mother Nature
出身地 アメリカ・ニューヨーク

MGMT(エム・ジー・エム・ティー)が3年ぶりに新曲「Mother Nature」を発表した。5枚目のアルバム『Loss of Life』の先行シングルとなる。

この曲は、彼らの音楽性の変化を示すもので、これまでのサイケデリックなサウンドとは一線を画すクリーンなフォークソング。

今まで全てのアルバムを聞いてきたが、言われなければMGMTの音楽だと気づかなかったほど、大胆な変化を遂げているのだ。

一方で郊外での生活や承認欲求に疑問を投げかけ、変化を受け入れることの大切さや友人との絆の意味を歌う歌詞には、本来のシュールさを感じられる。

MGMTは自分たちの音楽に対する探求を続けていることを教えてくれる。

自分たちの音楽とかけ離れたものを作ることに恐れを感じないどころか、むしろ、それを楽しんでいるのだ。(Tomohiro Yabe)

yahyel – Highway

アーティスト名 yahyel(ヤイエル)
曲名 Highway
出身地 日本・東京

yahyel(ヤイエル)の新作アルバム『Loves & Cults』は、“他者との対話”という彼らの音楽の本質を表現した作品だ。

その中でも「Highway」は、プロジェクトからバンドへと変化した姿を象徴する曲だと言える。

池貝峻のボーカルは、小さくとも力強く、祈りのように響く。自分の視点や感情を押し付けるのではなく、聴く者に問いかけるように歌う。

それは、彼が自分の存在を相対的なものとして捉え、他者との関係性に重きを置いたことを示しているのだろう。

一方、バンドの音楽は、池貝のボーカルを引き立てつつも、曲中盤では誰も追いつけないほどに加速し、バンドとしての調和や美学を追求している。

「Highway」は、yahyelが自分たちのアイデンティティを探求し、バンドとしての理想を強固なものとして具現化することに果敢に挑んだ結果である。(Tomohiro Yabe)

yahyel(ヤイエル)2023
yahyel(ヤイエル)『Loves & Cults』インタビュー

Rnzx – huiha heiha

アーティスト名 Rnzx
曲名 huiha heiha
出身地 インド・アイザウル

「huiha heiha」は、インド・アイザウルのバンドRnzxの新曲であり、Rina KhawlhringとZeli Khawlhringという2人が手がけている。

彼らはRnzxのメンバーであると推測されるが、正式なメンバー構成は不明で、Instagramでは4人で演奏する姿が見られるが、それ以上の情報はほとんどない。

それでも、彼らの音楽は透き通るようなインディー・ポップで、聴く者の心を掴んで離さない。

特にこの「huiha heiha」は、ボサノバのリズムに乗って、アイザウルの爽やかな風景を描いていたかのようである。(Tomohiro Yabe)

tenbin O – Orphans

アーティスト名 tenbin O(テンビン・オー)
曲名 Orphans
出身地 日本・東京

tenbin O(テンビン・オー)の「Orphans」は、シューゲイザーとドリームポップの要素を取り入れながらも、歌謡曲を思わせるノスタルジックなサウンドを作り出している。

日本語と英語を混ぜた歌詞は、戦争の犠牲者や孤独な人々の気持ちを表現しており、ささやくようなボーカルがその感情をより強調している。

インタビューで彼女たちは、“声を張るような音楽はやりたくない”と言っていたが、それは音楽に繊細さと奥行きをもたらした。

tenbin Oの「Orphans」は、ジャンルの境界を越えた特別な一曲となった。(Tomohiro Yabe)

tenbin O『Lack Of Heroism』インタビュー

South Penguin – empty

アーティスト名 South Penguin(サウス・ペンギン)
曲名 empty
出身地 日本・東京

トロピカルなサウンドに乗せて、愛と悲しみの狭間で揺れる心情を歌うSouth Penguin(サウス・ペンギン)「empty」。

アカツカを中心に結成されたバンドは、アカツカ以外全員脱退などの憂き目にあいながらも、ニューウェイヴに影響を受けた音楽を作り上げてきた。

インタビューでは、コナン・モカシンやTalking Headsのようなアーティストに憧れていると語っていたが、彼らの音楽はそれらのアーティストとは似て非なる得体の知れない孤独や不安が隠されている。

“ふざけたいけど”、“ふざけられない”という葛藤をリアルに表現した作品ではないだろうか。(Tomohiro Yabe)

Nozomi Nobody – Sweet Dreams (Side-A)

アーティスト名 Nozomi Nobody(ノゾミ・ノーバディ)
曲名 Sweet Dreams (Side-A)
出身地 日本・東京

Nozomi Nobody(ノゾミ・ノーバディ)は、自ら作詞作曲し、ギターとボーカルを担当するシンガーソングライターである。

EP『Dawn (Side-A)』からの先行シングル「Sweet Dreams (Side​-​A)」で、Nozomi Nobodyのボーカルは透明感と力強さを併せ持ち、美しいメロディーを奏でる。

過去の大切な人への思いを、夢と夜明けのイメージで描いた歌詞からは、彼女の悲しみと愛情、そして決別の意志が伝わってくる。

THE NOVEMBERSの吉木諒祐がドラムを担当し、レコーディングやミックスは、ツバメスタジオの君島結が手掛けたことで、曲にリズムと緊張感が与えられた。

Nozomi Nobody自身もコメントで、本当に作りたいものができたと言っていたが、「Sweet Dreams (Side​-​A)」は彼女の芯の強さを最も感じられる楽曲となった。(Tomohiro Yabe)

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Lesssugär – trynafindyou

アーティスト名 Lesssugär(レスシュガー)
曲名 trynafindyou
出身地 タイ

個人的に2023年アジア圏のバンドで一番興奮して熱心に聴いていたのがLesssugär(レスシュガー) 。

彼女たちはタイのインディー・ポップ・バンドで、デビューアルバム『internet teenage lover』をリリースしたばかりの若手だ。

『Futurama』以降のスーパーカーを彷彿とさせるような上質なエレクトロサウンドとネオンのように優しく語りかけるヴォーカルは正真正銘世界水準のインディー・ポップ。

タイにはKIKIやThe Kopycatといったバンドも活躍していて、今後意外とインディーシーンを盛り上げるのは欧米圏ではなく、タイなのでは・・・? といった期待もこみあげてくる1曲だ。(滝田 優樹)

Death Of Heather – Endless Emotions

アーティスト名 Death Of Heather(デス・オブ・ヘザー)
曲名 Endless Emotions
出身地 タイ・バンコク

Death Of Heather(デス・オブ・ヘザー)の「Endless Emotions」は、バンドが満を持してリリースした2ndアルバム『FOREVER』に収録されている1曲である。

彼らはバンコクで結成された4人組のドリームポップ / シューゲイザーバンドで、すでに2020年リリースのデビューアルバム『Death of Heather』はすでに国内外で注目を浴びていた。

前作ではドリームポップとシューゲイザー愛に満ち溢れた楽曲が並んでいたが、「Endless Emotions」はそれよりも攻撃的でプログレ的なアプローチで、バンドとしての円熟味を感じさせる。

テクニカルな部分もあるけれど、耳をひかれるのは音の厚み。この曲に関しては音量を最大にして聴く、爆音推奨である。(滝田 優樹)

Schoolgirl Byebye – 雨中一只傻傻鸟

アーティスト名 Schoolgirl Byebye(スクールガール・バイバイ)
曲名 雨中一只傻傻鸟
出身地 中国・江蘇省南京市

アジア圏でも特に中国のインディーシーンにはなかなかアクセスできていなかったのだけど、2023年はSchoolgirl Byebye(スクールガール・バイバイ)と出会えたことは大きな収穫のひとつだ。

中国でも江蘇省南京市で活動する彼らは、すでにバンド名からピンときている方もいるかもしれないがNumber girlのフォロワーでもある。

そんな彼らのシグネイチャーはチャイニーズ・ポップ由来のムーディなヴォーカルとインディー・ポップとの邂逅。

安らぎのあるメロディーと小気味の良いテンポ、ドリームポップとは別の仕掛けで与えられる浮遊感にうっとりとさせられた。

チャイニーズ・ポップ×インディー・ポップの完成形とも言えるのが「雨中一只傻傻鸟」だ。(滝田 優樹)

cero – Nemesis ネメシス(e o)

アーティスト名 cero(セロ)
曲名 Nemesis ネメシス(e o)
出身地 日本・東京

cero(セロ)が5年ぶりにオリジナルアルバム『e o』をリリースしたのは2023年におけるビックニュースのひとつで、2020年代以降の日本のインディーシーンが本格的に動き出した感じがする。

実は「Nemesis ネメシス(e o)」は2021年に「Nemesis」としてシングルリリースされている楽曲だが、アレンジを変えてアルバムに収録された1曲だ。

アルバムを通して聴いてみるとこの「Nemesis」こそが『e o』が創作される足がかりであったに違いないと思って選曲した。

どこを切り取っても絶妙なハーモニーを奏でているが、ビートや音響、そしてヴォーカルなど曲を構成するすべての要素に特異なものが孕んでいる異常さ。

それでいて、着地点はポップスなんだから、もうお手上げです。(滝田 優樹)

Manic Sheep – Morning Fragment

アーティスト名 Manic Sheep(マニック・シープ)
曲名 Morning Fragment
出身地 台湾・台北市

FUJI ROCK にも2年連続出演をし、何度か来日公演もしているため、日本のインディー・ロックリスナーたちにもすでに認知されていると思うが、Manic Sheep(マニック・シープ)は台湾のシューゲイズ・バンドだ。

2019年のシングル以来の新曲となる「Morning Fragment」は、これまで流麗なバンドサウンドに優しさのあるヴォーカルを乗せながら楽曲の調和を図ってきたManic Sheepにとっては新機軸であり、進化を感じさせる楽曲だ。

構成としてはヴォーカルのChrisの艶やかな歌声を中心にバンドサウンドが紡がれていて、これまでのManic Sheep像を打ち壊して再構築したと言えるだろう。

すでにその心意気だけでも賞賛に値するが、ヴォーカルを合わせて、ブラックミュージックを参照しつつバンドサウンドを舵切りして、見事なまでに成功を果たしたManic Sheepの実力に心から拍手を。(滝田 優樹)

Leave Yourself Alone – Leave Yourself Alone

アーティスト名 Leave Yourself Alone(リーヴ・ユアセルフ・アローン)
曲名 Leave Yourself Alone
出身地 カナダ・バンクーバー

「Leave Yourself Alone」をはじめて聴いた時の印象は、ART-SCHOOLとCloud Nothingsだった。

メランコリックで抒情的なアルペジオとコード進行は「汚されたい」や「Sonnet」のそれだし、扇情的に轟音を鳴らしつつ爽やかなメロディーを際立たせる様はCloud Nothingsそのもの。

2023年にデビューアルバムをリリースしたばかりのバンクーバーを拠点するLeave Yourself Alone(リーヴ・ユアセルフ・アローン)は、「Leave Yourself Alone」という楽曲で、年代や国籍をこえてマイフェイバリットである二つのバンドを共演させてくれた。それだけで個人的には胸にくるものがある。

このふたつのバンドの共通点は音楽的なルーツはもちろんだが、スティーヴ・アルビニだ。まだまだ情報の少ないバンドで彼らのルーツや素性は不明だけれど、いかにして「Leave Yourself Alone」がうまれたのか、知りたくてたまらない。(滝田 優樹)

Wednesday – Bull Believer

アーティスト名 Wednesday(ウェンズデイ)
曲名 Bull Believer
出身地 アメリカ・ノースカロライナ州アッシュビル

昨年リリースされた5thアルバム『Rat Saw God』がリリースされたタイミングでインタビューを行った、アメリカ・ノースカロライナ州はアッシュビルを拠点とするインディーロックバンド。

日本ではカントリーとシューゲイザーの要素を融合した”カントリーゲイズ”のバンドという触れ込みで紹介されているけども、そんなキャッチコピーはなくとも2023年のインディーロックの顔は文句なしでWednesday(ウェンズデイ)だっただろう。

滅びの美学にも似た刹那の美しさをもって切々と訴えかける「Bull Believer」。

思わずインタビューでも直接彼女らにも伝えたけれど、自分の音楽遍歴の中で最も衝撃を受けた作品の一つだ。(滝田 優樹)

L’Rain – Pet Rock

アーティスト名 L’Rain(ロレイン)
曲名 Pet Rock
出身地 アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン

「Pet Rock」の特にギターにはTame Impalaの「It Is Not Meant to Be」以来の衝撃を受けて、昨年の下旬はとにかくこればっかり聴いてた。

すでにギターサウンドはこれ以上の発明も進歩もないと、たかをくくっておごっていた自分にとっては目の覚めるような1曲だった。

L’Rain(ロレイン)はマルチインストゥルメンタリストとしての顔ももつのだけど、複数の楽器の演奏が出来るがゆえ辿りついた境地なのではないかと推測する。

ギター以外でもTame Impalaが『The Slow Rush』でサイケデリック・ロックの可能性を再定義してくれたが、その延長線上でひときわ輝く「Pet Rock」はヴォーカルワークやベース、ドラムなどその他バンドサウンドにおいてもニュースタンダードとなる快曲だ。(滝田 優樹)

Tirzah – today

アーティスト名 Tirzah(テルザ)
曲名 today
出身地 イギリス・エセックス州ブレインツリー

エクスペリメンタル・ポップ・アーティスト、Tirzah(テルザ)の「today」。

9月にアルバム『trip9love…???』がリリースされて聴いた瞬間に今回の年間ベストに選出することは決めていた。

だけど、インディ・ロックのニュアンスを土台にトリップホップやインダストリアルやら他要素をコラージュして、暴力的なまでに多角的で前衛的な楽曲が多くて、そのなかから1曲選ぶのがとにかく大変だった。

「today」を選曲した理由は、美と醜の共存、そしてコントラストとグラデーションが見事だったところ。既発の楽曲を更新するどころか別の高みに到達してしまった・・・。

これまで自分が聴いてきたポップミュージックとは何だったのだろうかと不安さえも与える奇作。(滝田 優樹)

Daughter – Be On Your Way

アーティスト名 Daughter(ドーター)
曲名 Be On Your Way
出身地 イギリス・ロンドン

自分にとってDaughter(ドーター)はハズレがないと同じで、Daughterが曲を出したら必然と年間ベストになる。ましてや7年ぶりのアルバムリリースとなればここで語らずにいられない。

7年の間ヴォーカルのエレナ・トンラはソロ・プロジェクトEx:Reとしての活動もあったのだが、今はメンバーそれぞれ別々の都市で暮らしており、アルバムの制作もロンドンを離れて様々な場所で制作を行ったのだという。

こと「Be On Your Way」においては、4AD直系の耽美なサウンドはいうまでもなく健在だが、退廃的な雰囲気は後退して、今回はストリングスを活かした幽玄なサウンドエスケープとダイナニズムでクラシカルな様式美を提示する。

決して短くはない歳月を経て、Daughter がDaughterであることに安心したとともにより洗練された音を聴かせてくれたこと、そして常に美しくあるためにさらなる表現力を獲得した彼女らに敬意を込めて――。(滝田 優樹)

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これまでの年間ベストソング

年間ベストソング2022の30曲

年間ベストソング2021の30曲

年間ベストソング2020の30曲

年間ベストソング2019の30曲

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ライター:Tomohiro Yabe(yabori)
Tomohiro Yabe
BELONG Media/A-indieの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

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Twitter:@boriboriyabori

ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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Twitter:@takita_funky