シェアする:

ジャケットとMVが映す恐怖との向き合い方

-わきき:今作『Win Win』のジャケットでは、生き物(犬でしょうか?モンスターでしょうか?)の口の中からフェンさんを見ているような構図が印象的です。「Thank You Sorry」のMVにも登場するビジュアルだと思いますが、こちらをアルバムジャケットに選んだ理由を教えてください。MVでは、その生き物から逃げるでもなく、冷静に観察しているようなフェンさんの姿も印象に残りました。

Fenne Lily「Thank You Sorry」(Official Video)
4thアルバム『Win Win』収録

フェン:犬だよ!
フォトグラファーのSage Szkabarnicki-Stuartは、作品の中で動物をモチーフにすることが多くて、犬の口の中から私のポートレートを撮るというアイデアも彼女が考えてくれたの。
本物の犬を使うわけにはいかなかったから、彼女が頭蓋骨を作って、舌や頬、唾液を付け加えた。まさに傑作だったよ。
あのアルバムジャケットは、何かに追い詰められている感覚をよく表していると思う。失恋したり、誰かやどこかを恋しく思ったりすると、何かに追いかけられているように感じることがあるでしょう。
でも、恐怖と向き合うことで、その力を弱めることもできる。
恐怖が何を象徴しているのか、過去に自分に何をしたのか、これから何をするかもしれないのかではなく、それが実際に何であるかを見つめること。
痛みは怖い。でも、痛みを恐れることは、それ以上に怖い。
年齢を重ねるにつれて、何かを愛する過程の一部として、痛みを捉えられるようになりたいと思っている。

喪失について、父が素晴らしいアドバイスをくれたことがあるの。何かを手放す方法は2つある、と。
1つは、去っていくものを必死に引き留めようとして、抵抗すること。
もう1つは、それが去っていくのを見届け、その瞬間を受け止め、自分がそれを持っていたことに感謝すること。
恐怖や痛みを見つめるのは心地よいことではないけれど、必要なことなの。次に備えるためにね。
だって、次は必ずやってくるから。

最もむき出しの1曲「in Life and on Planes」

-わきき:『Win Win』の中で、特にリスナーに聴いてほしい曲、あるいはアルバムを象徴する曲を1曲挙げるとしたら、どの曲でしょうか? その理由も併せて教えてください。
フェン:アルバムの最後の曲(「in Life and on Planes」)。
パズルの最後のピースであり、最もむき出しの状態の作品だと思う。
最もプロダクションが施されていない曲で、私とSamだけで演奏してる。2人で同時に演奏し、テープに録音したの。あの録音を聴くと、いろいろな感情が込み上げてくるな。
フィルターを通していない、実際に起きたことと、そのときの感情がそのまま記録されている。
自分がどれほど愚かで、途方に暮れていたか。
そして、最後にはようやく状況がはっきり見えるようになったことも。
何も知らされず、暗闇に置き去りにされるのは、本当に苦しいこと。その後の人生にも大きな傷を残す。
誰かに信頼を壊されると、人を信じることが難しくなるから。
この曲を聴くと、あの痛みがもう一度よみがえってくる。それって、いい兆候なのかな?
ほかの曲のサウンドがとても豊かなアルバムの中で、最もプロダクションが控えめな曲を選ぶということは、音楽的な意味ではアルバムを最もよく代表する曲ではないのかもしれない。
でも、この曲には完全に真実が宿っていると感じる。

次のページこちら ⏩️
シェアする: