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イギリス・ドーセット生まれのシンガーソングライター、フェン・リリー(Fenne Lily)の最新アルバム『Win Win』のサウンドを第一印象で表すなら、「温かい」。
とても温かい。
冬に暖を取るような温かさではなく、穏やかな日差しの下、まるで自分が太陽とでも言わんばかりに鮮やかな色をしたオレンジに手を伸ばすときのような、眩しい温かさだ。

Fenne Lily「Uh Huh」(Official Video)
4thアルバム『Win Win』収録

それは、フェンの少し低く、囁くような歌声がもたらすものかもしれない。
アルバムを通してずっと傍にいてくれるようなアコースティックギターやバンジョーの音色、あるいは、テープに刻まれたライブ録音ならではの和やかな空気から生まれるものなのかもしれない。

けれど、曲の中にそこはかとなく漂う哀愁を感じ取ったり、痛みや戸惑い、喪失感を描いた歌詞に意識を向けたりすると、その温かさの奥に、切なさや痛みが息づいていることに気づく。

それは、鮮やかなオレンジをもぎ取ったとき、あるいは、髪を撫でてくれる優しい手に、ふと傷を見つけたときのような感覚だ。
愛おしいものの中に、思いがけず痛みを見つけてしまう。
その瞬間、それまで温かく感じていたものまで切なくなり、少しだけ泣きたくなる。

フェンは『Win Win』で、抱えた痛みや孤独を温かなサウンドで包み込んだ。
対照的なサウンドとテーマが、痛みを抱えながら微笑む人の心に、静かに寄り添っているように感じた。

今回のインタビューで、丁寧に語ってくれたフェンの言葉からは、彼女の豊かな内面世界が垣間見えたような気がする。
フェンはどのような想いでこのアルバムを作ったのか。
彼女の誠実な言葉から、その背景をゆっくりと紐解いていこう。

Fenne Lilyインタビュー

Fenne-orange

アーティスト:フェン・リリー(Fenne Lily)
インタビュアー:わきき(Wakiki)
翻訳・編集・校正:BELONG Media / A-indie

音楽のルーツと影響を受けた作品

初めて好きになった曲と、音楽を作るきっかけ

-わきき:まず、フェンさんの音楽のルーツについて伺いたいです。幼少期にはどのような音楽に触れて育ち、そこからどのようなきっかけでご自身でも音楽を始めるようになったのでしょうか。
フェン:私が初めて好きになったと記憶している曲は、Enigmaの「Return to Innocence」なの。
実は最近、Whole Foods(アメリカのスーパーマーケット)でこの曲を耳にするまで、自分の記憶の中で勝手に作り上げたものだと思っていたくらい。
聴いた瞬間、両親の車の後部座席に乗っていた子どもの頃に、一気に引き戻された。

Enigma「Return To Innocence」(Official Video)

でもそれが、音楽を作る大きなきっかけになったわけではないと思う。
私に音楽を作りたいと思わせたのはイングランドのフォークミュージックで、それがLaura Marlingへとつながっていった。
そして、実際に音楽を作る後押しをしてくれたのはThe Velvet Undergroundで、特に『Loaded』だった。

Laura Marling「Rambling Man」(Official Video)

The Velvet Underground「Rock & Roll」
アルバム『Loaded』収録

私は、歌声を信頼できる音楽が好きだったの。感情的に確かな場所から生まれていると感じられる音楽がね。
10代前半の頃には、ピアノの先生が自分の楽器を見事に弾きこなす姿を見て、私もあんなふうに何かを自在に扱えるようになりたいと思った。
結局、練習しなかったからピアノではそうなれなかったけれど、今はソングライティングという楽器を通して、少しずつそこに近づいている気がするよ。

創作意欲をかき立てる作詞家・詩人たち

-わきき:フェンさんの現在の音楽性や、音楽との向き合い方に影響を与えたアーティストや作品があれば教えてください。また、具体的にどのようなところから影響を受けたのでしょうか。
フェン:本当にたくさんいるよ。心に響く音楽に出会うたびに、私もその音楽のようなものを作りたいと思う。
でも、生まれ持った自分の作曲や歌い方には限界があるから、その中で自分のやり方に取り入れられるものを取り入れているの。
長い間、私にとって絶対的な存在だったのはDamien Jurado。彼以上に私の創作意欲をかき立ててくれる作詞家はいないと思う。
彼のアルバムは、プロダクションの面でも本当に多彩なの。作品ごとにサウンドはまったく違うのに、私にはいつも同じ感覚が伝わってくる。

Damien Jurado「Silver Timothy」(Official Video)

作曲したりレコーディングしたりし始めた頃には、Feistも大きな存在だった。彼女の歌い方や、プロダクションへのアプローチが大好きなの。

Feist「My Moon My Man」(Official Video)

今回のアルバムを作っていたときは、音楽を聴くよりも本を読んでいる時間の方が長かった。録音された音楽にあまり惹かれなくなる時期が私にはあるんだよね。
ニューヨークではライブにもたくさん足を運んでいて、いろいろな要素が詰まった、音に厚みのあるバンドにワクワクしていた。
それから、詩を本格的に読むようにもなったな。以前は自分から詩を読みたいと思ったことがなかったんだけど、Franz Wright、Tony Hoagland、Diane Seussにすっかり夢中になったの。
彼らの詩が作り出す情景は、悲しくて、滑稽で、美しい。

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