最終更新: 2026年7月14日

Whitney(ホイットニー)のデビューアルバム『Light Upon The Lake』を初めて聴いた時の感覚を、今でも覚えている。

一言で言うならば、“あまりにもノスタルジック”。

そもそもノスタルジーとは何だろう。

それは単なる記憶ではなく、過ぎ去ってしまった時間への愛しさや憧れ、そして、その時間がもう二度と戻らないことを知っているという静かな寂しさが同居した感情なのだろう。

思い出す度に胸が温かくなるやさしい記憶。人はそれをセピア色の思い出と表現することがあるが、本当に忘れがたい記憶は色褪せることなどない。

その瞬間の温度、感情まで思い出せるほど鮮明に、この胸の中へ蘇る。そこにはやはり、一抹の切なさを纏いながら。

Whitneyの音楽は、まるで記憶を指でなぞるように、そんな相反する感情を鳴らしてきた。そのサウンドが引き連れてくる郷愁にさらわれて、こちらが戸惑うほどに。

そんなWhitneyのデビュー作『Light Upon The Lake』10周年記念版リリースに伴い、ジュリアン(Julien Ehrlich/Vo・Dr)にこの10年間について語ってもらった。

制作当時の記憶から現在の心境、そして昨年リリースされた『Small Talk』への想いまで。

10年という時間を経た今だからこそ語れる率直な言葉に、ぜひ耳を傾けてほしい。

Whitneyインタビュー

Whitneyモノクロ
撮影 : Natalie Hewitt

アーティスト:ジュリアン・アーリック(Vo./Dr.)
インタビュアー:わきき(Wakiki)
翻訳・編集・校正:BELONG Media / A-indie

Light Upon The Lake 10th Anniversary Editionについて

LightUponTheLake10thAnniversaryEdition

Whitney-「No Woman」(Official Video)
1st Studio Album 『Light Upon The Lake』収録

-わきき:『Light Upon The Lake』のリリースから10年が経ちました。今回10th Anniversary Editionがリリースされたことで、このアルバムがファンにとってだけでなく、お二人にとっても特別な作品であり続けているのだと感じました。今振り返って、このアルバムはお二人にとってどのような存在ですか? また、10th Anniversary Editionをリリースしようと思った理由についても教えてください。

ジュリアン:『Light Upon The Lake』は僕たちのデビューアルバムだから、バンドとして歩んできた最初の10年間を振り返る初めての機会になった。そもそも、ひとつかふたつアルバムを出しただけでプロジェクトが終わってしまうことだって珍しくないからね。だから今回のアニバーサリー・エディションは、この10年間を祝うこと、そして何より、僕たちがWhitneyというサウンドに出会えたことへの感謝を形にしたいという思いからリリースしたんだ。

-わきき:『Light Upon The Lake』を制作していた頃のことを振り返ると、最初に思い浮かぶ風景や記憶は何ですか? また、その頃のお二人はどんな気持ちで音楽と向き合っていましたか?

ジュリアン:思い浮かぶ場面は本当にたくさんあるよ。でもアルバム制作の中でも特に大きな転機だったのは、2015年1月、祖父が亡くなった後のことかな。Maxと僕は住んでいたアパートを次の住まいも決めないまま引き払い、イリノイ州北部にあるMaxの家族の小さなキャビンへ向かったんだ。そこで「Follow」の歌詞を書いた。あの時間を境に、この作品は単なる「楽しいアート・プロジェクト」ではなく、僕たち自身の人生と深く結びついた、とても個人的で欠かせない作品へと変わっていったように思うよ。

-わきき:『Light Upon The Lake』では、”melancholic but also happy” という感情が作品のテーマにあったと聞いています。憂鬱と幸せ、懐かしさと切なさが同時に存在する感覚は、今もなおWhitneyの音楽を特徴づけるもののように感じます。お二人はなぜ昔からそうした感情に惹かれるのでしょうか?

ジュリアン:正直、自分でも理由はよく分からない。でも、悲しい歌詞と耳に残るキャッチーなメロディの組み合わせが好きなんだよね。軽やかで弾むようなサウンドでありながら、ちゃんと心に響く曲を書くことに、僕たちはためらいを持たないんだ。

-わきき:『Light Upon The Lake』の制作当時、お二人はWhitneyをどんなバンドにしたいと考えていましたか? また、当時思い描いていた未来と現在のWhitneyを比べた時、予想していたことや意外だったことはありますか?

ジュリアン:いい質問だね。2015年当時の僕とMaxが、今の僕たちの曲を聴いたらどう思うんだろうって、今でもよく考えるんだ。でも、おそらくすごくワクワクしてくれるんじゃないかな。それに、もし今作っている音楽に心から創作意欲を感じられなくなっていたら、このプロジェクトを続けてはいなかったと思う。10年経った今でも、音楽を作ることに創造的な充実感を持ち続けられていることを、本当にありがたく、幸運なことだと感じているよ。

-わきき:10th Anniversary Editionに収録されたデモ音源を聴いていると、完成版とはまた違った親密さやぬくもりを感じました。これらを収録しようと思った理由や、ファンにどのような形で受け取ってほしいと考えたのか教えてください。

ジュリアン:「Dave’s Song (4 Track Demo)」は、僕たちが一緒に作った最初の録音なんだ。だから、僕たちにとって本当に特別な意味を持ってる。Whitneyというプロジェクトが実際に生まれた瞬間を聴けるというのは、改めて考えても不思議な気持ちになるね。それから「Golden Days (Finger Picking Version)」には、アルバムの他のどの曲とも違う、温かさとどこか幽玄な雰囲気がある。だから、このバージョンを収録するのはごく自然な選択だったんだ。

Whitney – Dave’s Song (4-Track Demo) [Official Audio] New Album 『Light Upon The Lake 10th Anniversary Edition』収録

-わきき:今回の『Light Upon The Lake 10th Anniversary Edition』を通じて初めてWhitneyに触れるリスナーもいるかと思います。今のお二人がこのアルバムを一言で紹介するとしたら、どんな作品だと伝えますか?

ジュリアン:このアルバムは自分にとって、人生が本当に苦しい時に、信頼できる誰かが「大丈夫だよ」って本気で言ってくれる、その感覚そのものなんだ。だから一言で言うなら、「Everything’s going to be ok(きっと大丈夫)」かな。

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